六話 秒針に棘
一応の日輪刀に羽織、そして櫛で髪型を軽く整え、指環と一緒に
産屋敷邸までの道のりは生憎よく覚えていないが、立ち入る瞬間にある種の結界というかそのようなものを感じた。結界自体本で知った言葉故、正しいのか心陽には見当もつかないが。
『ただいまお連れして参りました。』
目に映ったのは、仰向けで寝ている黒髪の人と、すぐ傍らにいた白髪の美しい女性。
寝ている人は病人だった。女性に支えられ起き上がりこちらを見たのですぐに分かった。ほぼ顔面全体が包帯で巻かれ、手は紫がかっていて皺だらけだ。だが、髪の色は豊かな黒。まだ年若いことは確かだ。────きっとこの人こそが「お館様」なのだろう。
男性は鎹鴉に向かってありがとうと言うと、隣の女性に心陽の外見を問うた。女性がこと細かく説明し終えると男性が心陽、と名前を呼んだ。思わず背筋を伸ばし、声を張って返事をする。
「元気……だね。杏寿郎や、蜜璃に……稽古をつけてもらって、いたのが、よく分かる……」
「あ、ありがとうございます」
「さて────……私は、第七十八代、産屋敷家当主……産屋敷耀哉、だよ」
「あまねと申します。」
やはりこの人が鬼殺隊の最高権力者「お館様」だったのだ。初めて出会ったのにも関わらず、初めてではないような心地がする。懐かしいとさえ、感じてしまう。耳によく馴染む優しい声色だからなのか?
「もっと、私の側へ、おいで。心陽を……ここに呼んだ理由を、教えてあげよう……」
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