四話 微笑む郷愁





ひたすら薙いで、薙いで薙ぎ続けるうちに一般の乗客全員が後方号車に散らばった。後方号車は煉獄が守ってくれている。乗客も歴戦の柱に守られたほうが安心だろう。

だが、鬼に取り込まれてしまった列車の内部に放って置くと、乗客の命が一斉に奪われるのは目に見えていた。そして、柱の手を煩わせるわけにもいかない。


号車を継ぎ接ぎしている扉を開き、繋ぎ目を凝視する。しゃがんでじっくり品定めをしているうちに正解が視えてきた。
斬れる、そう意気込み壁を踏み込んで跳ねた。



──炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり



助走をつけなかったせいか思ったよりも刃が食い込まない。全身の体重を握力に移し、より強く日輪刀を握りしめる。刃毀れは大変なことになるだろうが、今は乗客の命が最優先だ。



ぎち、ぎちぎちぎちぎちぎち!!



横にこじ開けるように床を開くと、背骨が見えた。一瞬それを不思議に思い、ブーツの踵で踏んづける。
地響きのようなものが鳴り響き、車体が大きく上下に振動した。



──炎の呼吸 壱ノ型 不知火



刃毀れのせいか、いつもより通りにくかったが力はそこまで込めなくとも斬れた。

心陽は前方の車両が遠ざかる前に飛び移り、一般の乗客を乗せた列車が減速していくことを確認するなり前に歩き出す。だが、


(横転する!!)


数秒も経たないうちに前の比にならないほど、がたがた大きな揺れが起きた。足元が不安定になり、歩けない。それでも前に歩こうと抵抗したせいで転げてしまった。
まもなく横転するだろうというのは目に見えていた。しかも、減速途中の後方車両が線路の揺れのせいでぐらぐらと揺らめいているのが見えた。こちらが脱線すれば、きっと後方車両も同じように脱線する。


「っ!!」


左手で席の端を掴むも、傾く角度が大きすぎて耐えられない。ずるずると身体が重力に従う。


(このまま傾くと外に放り出される!!)


完全に列車が横転し、車線から外れ乗り物としての機能を果たさなくなった。勿論、後方五車両も歪んだ線路に耐えきれず脱線した。
かくいう心陽は、鬼の肉塊が緩衝材となってなんとか一命をとりとめた。恐る恐るゆっくり立ち上がると鬼の肉が消えかかっていた。


(カマドくん、勝ったんだね)


ああ、無事に戦いが終わったのだと肩を撫で下ろす。

煉獄の元に行き乗客の安否を確認しに行くと、既に彼はいなかった。煉獄は乗客の安否を確認せず、隊士の安否を確認するような薄情者ではないと知っていた。


(私に確認は任せたということか。師範は前方の様子を見に行ったんだろうな)


全員の生存を確認するなり、心陽は炭治郎と煉獄の元に急いだ。





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