四話 微笑む郷愁





秋が終わる頃。蝶屋敷の庭は色鮮やかな山茶花や水仙、篝火花たちで埋められていた。
夕日に照らされて、花はどこか寂しくも思えた。





『俺は先に向かう!!』

『数名の隊士を遣ることになっている。詳しくは鎹鴉から聞いてくれ!』

『では明日、列車内で待っている!!』





この言葉がずっと反芻されている。昨日、炭治郎とは顔を合わせた。他にも隊士がいるということなのだろう。


……本当は。
昨日から煉獄と共に列車を視察しに行きたかったのだが。どうやら、他の隊士を連れていったらしい。
気にすることでもない。継子とは言え、四六時中柱の任務に付きっきりというわけではない。
それに、決定権は紛れもない柱にある。


(師範のおかげで鍛錬もしっかりできた。感謝しないと)









駅は人でいっぱいだった。アオイから聞いていた通りの賑わいだ。
その勢いに負けじと、弁当売りの少女が元気に声掛けをしている。心陽はその少女に声を掛けられたが、例のごとく断った。



『無限列車』の切符を買ったあと、視界に黒くて巨大なものが映った。


(これが蒸気機関。大きなカラスみたいだな)


漆で塗装されたような純粋な黒。反射するたびに鈍く光る。心陽には何だか1つの奇怪な生物のようにも思えてきて、少しだけ恐ろしく思えた。


……ドォン



ドォン!ドォン!!!



「は……?」


猪人間が黒の躰に体当りしているではないか!!……しかも上裸だ。同行者のような黄色い髪の少年が大声で注意している。よく見れば少年の方は日輪刀を差し、鬼殺隊の隊服を身に纏っていた。


「あっ、心陽!なんだぁ、先に着いてたんだな」

「カマドくん。……この方々は。」


自分を呼び捨てにしていることに気を留める余裕なんて無かった。


「黄色い羽織を着たのが善逸、猪頭を被っているのが伊之助だよ」


はぁ……と溜め息混じりの返事をしたのち、心陽は言った。


「では、私は先に師範の元へ行きます。師範は後ろから二号車目にいらっしゃいますので。」


警笛が鳴った。どうやら伊之助の体当たりを目撃した警官がやってきたらしいが、知らないフリをして列車に乗り込んだ。



櫛と指環は部屋に置いてきた。任務の最中に落としたり、傷つけたりしてしまっては残念だからだ。そして、それに気が散ってしまっては本末転倒であると心陽は知っていた。

まもなく、列車はゆっくりと動き出した。少しその揺れに身を任せながらも、煉獄の号車に辿り着くことができた。


「うまい!」





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