三話 盈月花火
『カァァァァ!!!伝令!!伝令!!那田蜘蛛山ノ支援二向カイナサイ!!!』
「ニニギ……。」
『早ク行クノヨォ!!!被害ヲ最小限二トドメヨ!!!蟲柱継子ノ栗花落隊士ハ先二向カッテイル!!!急ギナサイ!!!』
ああ忘れてはいけない、自分が鬼殺隊の隊士であり、炎柱の継子であることを。それをずっと、肝に銘じ続けていたはずだったのに。
煉獄は告げた。
「至急、伝令に従え。任務を遂行しろ。」
「……了解いたしました。」
心陽は一礼して駆け出していった。
(……浅はか過ぎる。私は何を望んでいたんだ?)
(そんなこと、いい。早く任務に向かわないと……。)
山の奥地で栗花落カナヲと合流した際、既に彼女は隊士の救護活動の援助を行っていた。心陽を見るなり、カナヲは微笑んだ。
「……ごめん、遅くなった。」
カナヲは何も言わず微笑み続けていた。蝶屋敷でよく顔を合わす仲であるから、これが普通だと知っていた。カナヲは銅貨を取り出すと、指で弾いた。……「裏」。そう書かれている。
「それ、何?」
「え?ああ、これは師範からもらったものだよ。」
「そう。」
慌てて指環を取り外し、櫛と同じ
負傷した……否、毒に冒された隊士が多くいる。話によると、ここは蜘蛛形の鬼の巣窟らしい。毒が全身に回った者も少なくなく、既に息を引き取った隊士や八つ裂きにされた者までいる。生き残った隊士も全身を包帯で巻かれた者が大半だ。言わずもがな、とても酷い有り様である。
すると、突然カナヲが日輪刀を鞘から抜いて走り出した。
(鬼が来たのか?)
心陽も同じように走り出して木の幹を踏みしめて跳び、カナヲを追う。跳ねた先には一人の少年がいた。
──そして、視界には少女のかたちをした鬼がいる。
カナヲは少年の背中に着地し、彼の体を地に倒す。
少年は顔を上げるなり、鬼に対して言葉を放った。
「逃げろ!!!」
すかさず、カナヲは彼に踵落としを食らわせる。そのままカナヲは逃げた鬼の後を追った。
この少年は鬼殺隊士であるにも関わらず、鬼を擁護しているのか?……もし仮に、この少年が鬼を連れているのであれば一大事だ。心陽は呆気なく気絶した少年の身体を馬乗りで揺すり、無理矢理起こさせた。
目を開けるなり、少年は叫ぶ。
「俺の妹は!!禰豆子は!!」
「あれは鬼だ。あの鬼のことならカナヲが既に始末しているだろう。」
「禰豆子……!離せ、離してください!!!俺の妹なんだ、たった一人の妹なんです!!!」
妹。ふいに過去の自分が蘇って来る。……家族が殺された。そして、父は……。ともかく、この少年は、過去の自分だと思った。なので話はこれ以上したところで収まらないと判断したのであった。感情を押し殺して少年の首を手刀で打ち、再度気絶させた。
後で隠から聞いた話だが、どうやらあの鬼を連れた少年は「お館様」直々に入隊許可を受けているらしい。連れていたのは人を喰らわない鬼、だそうだ。若干不信感はあるものの、「お館様」のお言葉なら仕方が無いと受け止めた。
