二話 穢れの大地













ぎしぎし












ぎしぎし











(相当前に退廃した集落だ。木の柱は傷んでいるし、蟻がたむろっている。ただ―――)


違和感を感じた。
徐々に荒廃したと言うよりも突然誰かの手によって意図的に荒廃させられた、の方が正しいと心陽は感じた。











──まさに、心陽の家のように。


(ここには鬼はいなそうだ。別の場所に...)


「ッ!!!」


黒ずんだ床、棚、障子。
やはり、これは何者かによって破壊された集落だった。
生々しく剥ぎ取られた身ぐるみだけ、血のりがべっとりとついたまま放置されている。
異臭の原因は無論これだろう。だが、遺体が何処にもない。身ぐるみだけであんなに鼻を突き刺すような臭いはしない。遺体を探す気は一切ないが、鬼の居場所を突き止める手がかりにはなる。


(…どちらにせよ、骸を探す他無い。合流して見つけ出そう。)

















(確かこの辺りで別れたはず…)


森の方も草が茂っていて、相当前からこの村が荒れ果てたことを示しているようだった。
隊服が長いため、茂みに潜っても痒くはならないが、短い丈の隊服ならば大変なことになるのは言うまでもない。



















なかなか開けない森の中を歩んでいくと、倒木のような重たいものが爪先に触れる感覚がした。
心陽はそれを乗り越えようとして踏みつけると、違和感に気が付いた。


(妙に表面が滑らかな木だな…)


俯いてみると、そこには人骨があった。ギョッとして屈んで見渡す。
一つだけでなく、二つ、三つ、…百いやそれ以上に。
思わず目を背けたくなるような光景に息を飲んだ。
肉片は跡形もないが、骨だけは明確に残っている。頭蓋骨、脊髄、胸骨、…。
人間の内側にあるはずのソレが外界に晒されていた。



















がさがさ。














がさ、。










「いな」














──炎の呼吸






「何しやがる因幡!!おれだよ、鬼じゃねェよ!!」

「あ、ごめんなさい。」

「ったく。このくらいで怖気付いてんじゃねェ。」


景は全く驚きもせずただただ静かに「行くぞ。」と呟いて骨の野原を突き進んで行く。


「なにして…っ!迂回する道を探した方がいいと思います」

「なんだよ、骨を渡ることすらできないのかよ。」

「少しは人間だったっていう気持ちは無いんですか。」

「あるけど」

「だったら、だったらそんな酷いことできません。ここのものは皆私たちと同じ人だったんです。対等に扱うべきです!」

「いちいちンなこと言ってらんねぇ。じゃあオマエは別の道探せば?まぁ、おれが先に鬼の頸を取ることは既に決まっているようなモンだし。勝手にしやがれ。」


折角合流したのにも関わらず、結局別の方向へ向かうことになってしまった。


(私は悪くなんかない。あっちに全面的な非はある。だって、元は皆同じ人間だったのに…)


多少は怒りに似たような感情を抱いた心陽はいつもより速く歩く。


(あっちこそ、勝手にすればいい。私は知らない。)







ざくざくざくざくざくざくざく












ざくざくざくざくざくざぐざく













ざく、ざ


「…?」


物音が聞こえる。葉が揺れる音でも風が吹く音でもない。ただ、なんと呼べばいいのか分からない音が聞こえてくる。





ざく、ざく、ざ





その音に近づくと次第に鮮明になっていく。
何か硬いものが壊れる音と、


誰かの声。






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