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漫画

「こんにちは~、黒子っちくださ~い!」

…またアイツが来た…。
それが、誠凛男子バスケットボール部の総意だった。

「黄瀬君…」
「久しぶりっス、黒子っち!会いたかったっス!」
「たった二日前に会ったばかりじゃないですか」
「たった二日前じゃなく二日も前っス!中学では毎日会ってたから、一日でも黒子っちに会わないと落ち着かないんスよー」
「それは他の人達にも当て嵌まるので是非そちらへ行ってくださいさようなら」
「ツレな過ぎるっス!」

そんなこと言わないでよ~、と半泣きで黒子に抱き着く黄瀬。
それを見て、日向はため息をついた。

「相変わらず黒子大好きだな、黄瀬は」
「そうだな…ハッ!黄瀬のきせ
「ダマレ伊月」

ダジャレを言おうとした伊月の言葉を途中で遮る日向。
それはいつものことなので誰も気にしていない。
水戸部ですら、もう気にすることをやめた。
その時、遠巻きに黄瀬と黒子を見比べていた小金井が、ふと思い付いたことを口にする。

「黄瀬ってキセキの世代でしかもモデルじゃん?」
「ああ。それがどうした?」
「黒子はいいヤツだけど影薄くて無表情じゃん?」
「(コクコク)」
「黄瀬って黒子とバスケ以外に接点なさそうなのに、なんであんなに大好きなのか不思議じゃね?」
「確かにそうだな」

不思議そうに二人を眺める小金井達。
そんな彼等に気付いた黄瀬が、これまた不思議そうに問いかけた。

「あの、オレ等がどうしたんスか?」
「え!あ、まあ、うん…ちょっと気になっただけなんだけどさ、黄瀬はなんでそんなに黒子が大好きなのかなーって
「そんなの決まってるじゃないスか!黒子っちは可愛い外見に反して超男らしい性格で負けず嫌いで誰よりも紳士で正義感が強くて敬語ででもたまに敬語がミスディレるとまたカッコイイ台詞を叫んだりする黒子っちマジカッコイイ!でもバニラシェイク大好きな黒子っち可愛い黒子っちマジ天使!!それからそれから
「黄瀬君、五月蝿いです(ズドッ)」
「痛い!」

ちょっと暴走した黄瀬をひじ鉄で黙らせる黒子。
ちなみに先輩達…というか体育館にいた者全員が黄瀬の黒子語りにドン引いていた。
きっと黄瀬ファンの子が今の黄瀬を見たら、引くかドン引くか目を逸らすか卒倒するかあんないい笑顔どこの雑誌でも見たことないギリィっと嫉妬するだろう。

「黄瀬が黒子を大好きなのは分かったというか知ってた」
「は?なに言ってるんスか…アンタに、オレがどれだけ黒子っちが大好きかなんて分かるわけがないだろ!!」
「なんなのコイツ本当にめんどくさい!」

日向の言葉で黄瀬に何かのスイッチが入ってしまったらしい。

「オレが黒子っちと出会ったのは中二の春。オレの教育係として紹介されたんスよ」
「そうでしたね。キミは最初、ボクの事を蔑むような目で見ていました」
「ちょっ、そんなことないっスよ!?」
「いいんです。キミのような顔よし運動神経よしな勝ち組からしたらボクなんていいとこモブでしょうから」
「うわぁ…黄瀬のヤツ、黒子になんてことを言わせるんだ」
「ああ。あんなに卑下する黒子、見たことねえ」

伊月と日向が黒子を痛ましい目で見た後、黄瀬に『ウチの可愛い後輩になんてこと言わせるんじゃワレいてこますぞコラ』とガンを飛ばした。

「いやいやいや、確かに最初はちょっとナメてたっスけどすぐに認識改めたっスよ!今は本気で黒子っちのこと尊敬してるから、そんなこと言わないで!」

半泣きで言い募る黄瀬。
その情けない顔を見て、黒子は微笑みを浮かべる。

「ありがとうございます。黄瀬君にそう言ってもらえて嬉しいです」
「!黒子っち~!!」

黒子に微笑まれ、ぱあぁっという効果音がつきそうなほどの良い笑顔になった黄瀬。
喜怒哀楽の移り変わりが早いヤツだと思わなくもない。

「黄瀬君が黒子君と出会った当初、蔑んでたのは分かったわ。それから何があったの?」
「だから蔑んでないっス!ある日、黒子っちと二軍の練習試合に同伴したんスけど、その時に黒子っちのすごさを知ったんスよ。あの時の黒子っちマジカッコよかった…『点差が点差なんで本気でいきます』ってオレ超しびれたっス!!」
「黄瀬君、恥ずかしいのでやめてください」

ほんのり顔をしかめ、黄瀬の語りを止めにかかる黒子。
だが。

「黒子超カッコイイじゃん!」
「何点差だったんだ?」
「61対75で負けてたっス。でも黒子っちのおかげで83対81で勝てたんス!」
「マジ!?」
「さすが黒子君ね!」
「頼もしい後輩だなー」
「黒子がウチに来てほんとよかったな」
「(コクコク)」

とチームメイトに全力で褒められ、照れて口をつぐんでしまった。
そのため話は続いてしまうのでした。

「それでそれで?」
「続き、聞かせてよ」
「え」
「了解っス!その後は黒子っちを青峰っち達と同じくらい尊敬するようになったんス。黒子っち呼びもその時からなんスよ」
「…そっか」

ちょっと黒子に憐れみの念を抱いた誠凛バスケ部一同。
みんな、~っち呼びは嫌らしい。

「あれ?でも青峰とかには黒子に対する時と違ってスゲー落ち着いてるよな」
「確かに」
「…まさか本気で黒子君が好きとか…」
「え。黄瀬君ちょっと離れてくださいお願いします」
「ちょっ、そんな目で見ないで黒子っちオレ泣いちゃう!ってか普通にノーマルだからねオレ、だから勘違いやめて!?」

首と手をブンブン振り、必死で否定する黄瀬。

「オレが黒子っちを特別に大好きなのは、黒子っちが他のみんなと違って純粋に人として尊敬してるからなんス」
「他って、キセキの世代のことか?」
「そうっス。青峰っちのことはバスケが超うまくて尊敬してるけど、人としては最低っス」
「「「「「確かに」」」」」

青峰は先輩に暴力振るうわ試合に遅れて来るわチームメイトの飯を横取りするわ幼なじみにセクハラするわエトセトラエトセトラ…うん、ほぼいいとこ無しだもの仕方ない。

「緑間っちも3Pシューターとして尊敬してるけど、変人だから人としては微妙に尊敬できねえっス」
「「「「「確かに」」」」」

緑間はおは朝信者過ぎて変人だから仕方ないのだよ。

「紫原っちもディフェンスすごくて尊敬してるけど、普段はお菓子食ってばっかのゆるふわ妖精で人じゃないから尊敬とはなんか別なんス」
「「「「「へー」」」」」

紫原はお菓子の国の妖精さんなので仕方ない。

「赤司っちは……その……バスケはもちろん、人としてもスッゲー尊敬してるんスけど……なんかちょっと違うんス……畏敬っていうか崇拝っていうかあの人めっちゃくちゃ扱いが難しいんスよ」
「「「「「?」」」」」

赤司様だから仕方ない。

「まあそんな感じで、みんなはバスケに関しては尊敬してるんスけど、人としては微妙なんス。けど、黒子っちは人としても尊敬できる唯一の人なんスよ!」
「桃井さんは?」
「桃っちは料理で兵器を生み出すんでちょっとムリっス!」

桃井は料理さえ上手ければ女子として最強だと思う。

「黒子っちはマジ天使で本当に尊敬してるっス。中学の時、オレの周りってモデルの肩書きにばっか目が行くヤツしか居なかったから余計際立って見えたのかも」

ちょっぴり切ない顔で目を伏せる黄瀬。
ただし黒子に抱き着いたままである。

「そう…モデルも大変ね」

リコはツッコミを放棄した。

「まあ、覚悟の上なんで平気っス。それに黒子っちが居たんで荒んだりしなくて済んだし」
「ボク、別に黄瀬君に何もしてませんでしたけど」
「それが一番嬉しいんスよ!あと黒子っちが変わらずにオレの側に居てくれただけでスッゲー癒されたっス!」
「そうですか」

意味はきっと分かっていないながらも頷く黒子。
その様がまさに天使で無自覚な癒し系黒子マジ天使とみんなに愛でられていることに一切気付かないのもまた天使たる所以である黒子マジ天使。

「さて、と。オレがどれだけ黒子っち大好きか分かってもらえたところでモノは相談なんスけど」
「…なんだ?」

ぶっちゃけイヤな予感しかしないby日向。

「黒子っちください!」
「「「「「やらん!!」」」」」

こうして今日も黄瀬の黒子勧誘は失敗に終わるのだった。
でも大丈夫(?)、きっと明日か明後日も笑顔で来るから。

「こんにちは~、黒子っちくださ~い!」
「…黄瀬君」

ほらね。


おまけ(中二頃の話)

いい天気だ。
今日の外周は20周…いや30周?
赤司っち、たまには外周少なくしてくんないかなー。
そんな事をぼんやり考えながら黒子っちの教室を目指して歩く。
黒子っち、居るかな?
てかまず見つかるといいんだけど…オレ、見つけられるかな?
あ、黒子っちの教室に到着ー。
ってか、あれ?
もしかしなくても移動教室?
やっべー黒子っちもう行っちゃったかな?
目を凝らして黒子っちを探す。
と。

「黒子、ちょっといいか?」
「はい」

という会話が聞こえた。
その声がした方へ慌てて目を向けると、見慣れた水色の髪を捉えた。
黒子っち発見!
嬉々として黒子っちに近付くと、黒子っちの隣にいたヤツが「黄瀬ってさー」とオレに気付かずにオレの話をし始めた。

「モテるからって彼女を取っかえ引っかえしてるってマジ?」

は?

「…さあ」
「え、知らねえの?あ、やっぱ黄瀬とは仲良くねえとか?アイツ女にしか愛想振りまかないっていうし」

はぁ?

「まあ、仲が良いとは言い難いですね」
「やっぱなー。てかなんで黒子が黄瀬の教育係なんだよ、意味わかんねー」
「ボクもです」
「どうせ黄瀬はバスケだってテキトーなんだろ?そんなヤツが居てイヤじゃねーの?」

なんでオレの事を何も知らないヤツにあんな事を言われなきゃならないんだ。
いや、それはモデルを始めた時から覚悟をしていたからまだいい。
ただ…そんな事を黒子っちに聞かせないでよ…。

「黄瀬君はそんな人じゃありません」
「え?」

え?

「黄瀬君は確かに不真面目に見えるし女性に愛想を振りまく人です」

それ悪口じゃない!?

「ですが、バスケに関してはいつも真面目に頑張っています。そんな彼が側にいるからボクも頑張れる…だから、黄瀬君を悪く言わないでください」
「そっか…ごめんな」
「いえ」
「あ、なら桃井さんのこと聞かせろよ!彼女、美人だよなー」
「そうですね」

…黒子っちが、オレの事をかばってくれた。
それに、真面目に頑張ってるって思ってくれてたんだ。
黒子っち…っ黒子っちいぃぃぃいいい!!

「黒子っちー!!」
「っ!…黄瀬君、いきなり抱き着かないでください(ドスッ)」
「痛い!」
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