緋色の欠片
「あれ?大蛇先輩、何か落としましたよ」
そう言い、大蛇の落とし物を拾い上げる狐邑。
それは一枚の写真だった。
振り返り礼を言おうと開いた大蛇の口から出たのは、叫び声だった。
「うわああぁ!みみみ見るな!!」
見るなと言われると見たくなるのが人の性。
「え~、そう言われると見たくなるじゃないですか~」
意地の悪そうな笑みを浮かべ、その写真に視線を落とす狐邑。
写真に写っていたのは藤森沙弥だった。
ただし普通の写真ではない。
おそらく本人が見たら即刻、取り上げられるレベルのキワどい写真だった。
「……」
「…狐邑。その写真、返してくれないか?」
「…没収ー」
若干動揺しながらも、そそくさと拾った沙弥のマル秘写真を懐にしまう狐邑。
大慌てで写真を取り返そうとする大蛇。
「返せ!」
「ヤ・で・すー」
「いいから返せー!!」
そんな二人を傍観している残りの守護者たち。
「一体、何が写ってるんでしょうか?」
首を傾げ、大蛇と狐邑に視線を寄越す鴉取。
「ふん、くだらん」
と言いつつ、二人の会話をしっかり聞いている犬戒。
「俺も気になる!」
今にも二人の方に駆けていきそうな狗谷。
現在、昼休みのランチタイム。
用事があるから先に行っててと言われ、屋上で藤森沙弥を待つ最中の出来事だ。
「返せ!」
「ヤです」
「返せ!」
「ヤです」
延々と繰り返される大蛇と狐邑のやり取り。
苦笑いの鴉取、おろおろと二人に視線を交互に送る狗谷。
そして。
いい加減、煩わしくなった犬戒。
「『静止』!」
犬戒の言霊で動きを止められた大蛇と狐邑。
その隙に、狐邑から大蛇の落とした写真を取り上げる。
「写真ごときで騒ぐな」
ため息を一つ吐き、何気なく写真を見る犬戒。
その瞬間。
ピキッと音が聴こえそうな程、見事に硬直した。
そんな珍し過ぎる犬戒の反応に興味を覚え鴉取と狗谷が犬戒に近寄る。
「響ー、その写真、何が写ってるんだ?」
「大蛇くんの落とし物ですから、藤森さんが写っていると思うのですが」
「えぇっ!姫が!?」
「十中八九、そうだと思います」
「姫の写真、俺も見たい~!!響、見せてくれよー!」
「僕にも見せていただけますか?」
固まって動かない犬戒の後ろに回り、ひょいっと手元の写真を覗きこむ二人。
そこに写っていたのは、鴉取の予想通り藤森沙弥だ。
だがしかし。
写真の沙弥は予想外の格好をしていて。
犬戒と同じように鴉取と狗谷も固まった。
犬戒の言霊の効果が解け、大蛇と狐邑は慌てて犬戒に駆け寄る。
正確に言えば犬戒のもつ沙弥の写真に、だが。
「返してくれ!」
「見ちゃダメです!」
二人同時に叫びながら写真に手を伸ばす。
だが、その手が写真を掴むことはなかった。
何故なら。
「この写真、何ですか…?」
我らが玉依姫、藤森沙弥がグシャッと握り潰したからだ。
羞恥に頬を朱に染め額には青筋を浮かべた沙弥の目は、冷えきっていた。
「凌さん…?」
「ハ、ハイッ!!?」
沙弥に冷えきった目で見られあまりのショックに大蛇は今にも逃げ出しそうだ。
他の四人も今まで見たことのない沙弥の様子に冷や汗をかいている。
「この写真、捨てて下さいと、私、お願いしましたよね?」
「はい…」
「もしかして、他にもまだ、持ってるんですか…?」
「は、はぃ…(小声)」
「すぐ、捨てて下さい」
「そ、それは、できな(超小声)」
「スグ、捨テテ下サイ」
「はい」
黒いオーラを背景に、踵を返す沙弥。
「昼食は、鬼崎くんと二人で食べることにします」
そう言い残し、屋上の扉をくぐり静かに去っていった。
そう言い、大蛇の落とし物を拾い上げる狐邑。
それは一枚の写真だった。
振り返り礼を言おうと開いた大蛇の口から出たのは、叫び声だった。
「うわああぁ!みみみ見るな!!」
見るなと言われると見たくなるのが人の性。
「え~、そう言われると見たくなるじゃないですか~」
意地の悪そうな笑みを浮かべ、その写真に視線を落とす狐邑。
写真に写っていたのは藤森沙弥だった。
ただし普通の写真ではない。
おそらく本人が見たら即刻、取り上げられるレベルのキワどい写真だった。
「……」
「…狐邑。その写真、返してくれないか?」
「…没収ー」
若干動揺しながらも、そそくさと拾った沙弥のマル秘写真を懐にしまう狐邑。
大慌てで写真を取り返そうとする大蛇。
「返せ!」
「ヤ・で・すー」
「いいから返せー!!」
そんな二人を傍観している残りの守護者たち。
「一体、何が写ってるんでしょうか?」
首を傾げ、大蛇と狐邑に視線を寄越す鴉取。
「ふん、くだらん」
と言いつつ、二人の会話をしっかり聞いている犬戒。
「俺も気になる!」
今にも二人の方に駆けていきそうな狗谷。
現在、昼休みのランチタイム。
用事があるから先に行っててと言われ、屋上で藤森沙弥を待つ最中の出来事だ。
「返せ!」
「ヤです」
「返せ!」
「ヤです」
延々と繰り返される大蛇と狐邑のやり取り。
苦笑いの鴉取、おろおろと二人に視線を交互に送る狗谷。
そして。
いい加減、煩わしくなった犬戒。
「『静止』!」
犬戒の言霊で動きを止められた大蛇と狐邑。
その隙に、狐邑から大蛇の落とした写真を取り上げる。
「写真ごときで騒ぐな」
ため息を一つ吐き、何気なく写真を見る犬戒。
その瞬間。
ピキッと音が聴こえそうな程、見事に硬直した。
そんな珍し過ぎる犬戒の反応に興味を覚え鴉取と狗谷が犬戒に近寄る。
「響ー、その写真、何が写ってるんだ?」
「大蛇くんの落とし物ですから、藤森さんが写っていると思うのですが」
「えぇっ!姫が!?」
「十中八九、そうだと思います」
「姫の写真、俺も見たい~!!響、見せてくれよー!」
「僕にも見せていただけますか?」
固まって動かない犬戒の後ろに回り、ひょいっと手元の写真を覗きこむ二人。
そこに写っていたのは、鴉取の予想通り藤森沙弥だ。
だがしかし。
写真の沙弥は予想外の格好をしていて。
犬戒と同じように鴉取と狗谷も固まった。
犬戒の言霊の効果が解け、大蛇と狐邑は慌てて犬戒に駆け寄る。
正確に言えば犬戒のもつ沙弥の写真に、だが。
「返してくれ!」
「見ちゃダメです!」
二人同時に叫びながら写真に手を伸ばす。
だが、その手が写真を掴むことはなかった。
何故なら。
「この写真、何ですか…?」
我らが玉依姫、藤森沙弥がグシャッと握り潰したからだ。
羞恥に頬を朱に染め額には青筋を浮かべた沙弥の目は、冷えきっていた。
「凌さん…?」
「ハ、ハイッ!!?」
沙弥に冷えきった目で見られあまりのショックに大蛇は今にも逃げ出しそうだ。
他の四人も今まで見たことのない沙弥の様子に冷や汗をかいている。
「この写真、捨てて下さいと、私、お願いしましたよね?」
「はい…」
「もしかして、他にもまだ、持ってるんですか…?」
「は、はぃ…(小声)」
「すぐ、捨てて下さい」
「そ、それは、できな(超小声)」
「スグ、捨テテ下サイ」
「はい」
黒いオーラを背景に、踵を返す沙弥。
「昼食は、鬼崎くんと二人で食べることにします」
そう言い残し、屋上の扉をくぐり静かに去っていった。