デザート・キングダム
キングダム・ストリートにて
「おや?イシュマール先生ではありませんか。先日はありがとうございました」
「宰相殿か。その後セラ君は捕まったかな?」
「それが、やはり私の顔を見た途端に脱兎の如く逃亡しまして…」
「まさかあんなに分かりやすい語尾を付けているというのに見つからなかったというのかね?」
「いえ、捜索途中で執務が溜まっていたのを思い出したのでロイヤルガードに後を任せて私は先にパレスに戻ったのです」
「なるほど」
「セラ殿を確保したら、パレスの牢…ではなく、一室に簀巻きで転がしてさらに監視を一人付けた状態にしたら私を呼びにくる手筈になっています」
「いやに厳重だな。簀巻きか監視のどちらかで充分じゃないのかね?」
「それでは足りません。前回は監視の目を欺き逃げたので、仕方なく簀巻きを追加したのです」
「なるほど。前回の失敗を踏まえての追加要素だったわけだ。賢明な判断だね」
「これで今回は納得がいくまで話し合えるでしょう」
「宰相殿がセラ君の言葉を理解したいというのはよ~く分かった。だがセラ君にも人権というものが一応存在するのだから、監禁もほどほどにしたまえよ」
「ご忠告ありがとうございます。それでは一週間以内に理解出来るよう努力したいと思います」
「…まあ、人権侵害にならない域で頑張りたまえ」
「それは勿論です。宰相たる私が人権侵害など、あってはならない事ですから」
「分かっていればいいのだよ」
「そういえば、昨日イシュマール先生の診察室に姫がまた訪れたそうですね」
「ああ。悩みが出来たら来ると言って帰った次の日つまり昨日だね、何の悩みも用も無いにも拘わらず来たあげく、直ぐに帰ったとも」
「パレスに帰ってきた姫が、『いい暇つぶし場所ができて嬉しい』と言っていましたよ」
「暇つぶしに来られても迷惑なんだがね、まったく。あの姫君には常識というものが一切通じないから困ったものだよ」
「なら私が後で姫に注意しておきましょう。あまりイシュマール先生の邪魔をしてはいけないから、今後は用が無いのなら診察室には行かないように、と」
「いや宰相殿の手を煩わせる気はないよ私が直接姫に忠告をすればいいだけだから気にしないでくれたまえ」
「遠慮などしないで下さい、イシュマール先生。姫には必ず注意しておきます」
「しなくていいと言っているだろう!というかさっきの言い方は些か問題がある。あれじゃあまるで私が姫を邪魔者扱いしているみたいじゃないか」
「違うのですか?」
「…別に邪魔だと思った事は一度もないよ」
「そうでしたか」
「そうだとも」
「「………」」
「あ。シャロンとイシュマールだ。なんでこんな往来真っ只中で睨み合ってんの?」
「姫」
「姫君」
「周り見てみなよ。皆遠巻きに見物してるわよ。これなら明日の朝刊の一面を飾れるわね。『キングダム宰相、ストリートで睨み合い!相手はあのイシュマール先生!?』ってね」
「姫、私の名前の前の『あの』って何なんだい?」
「なんか含みを持たせた方が面白いと思ったから付けただけよ!」
「なるほど、購買意欲を促進させるための一要素だったわけだ。しかしだ、その言い方には私に何かしらの噂やら浮き名やらがあると勘違いされる可能性大なので止めてもらいたいものだね」
「はいはいわかったわかった。で、なんで睨み合ってたの?」
「何故いつも私の話をスルーするんだい姫君!?」
「姫、私達は睨み合いをしていたわけではないよ。少々立ち話をしていただけだ」
「そうなんだ。何話してたの?」
「姫の事だ」
「私?」
「そうだ。姫、イシュマール先生の診察室に用も無いのに行くのは
「待ちたまえ宰相殿!それは私が自分で忠告すると言ったはずだが?不用意な発言は止めてもらいたいものだね」
「ああ、そういえばそう言ってましたね。申し訳ありませんイシュマール先生」
「心がこもってないよ宰相殿」
「ねえ、言いかけて止めないでよ。気になるじゃん」
「姫、宰相殿の発言は気にしなくていい。いや、積極的に気にしないでくれ!」
「えー。仕方ないなあ。じゃあ貸し1にしとくわね」
「それより姫はこの後何か用事はあるのか?ないなら、一緒にパレスに戻ろう」
「それより暇なら私の部屋に来ないか?昨日ラクロア理事が茶葉をくれてね。一緒に飲もうじゃないか」
「「………」」
「ちょっ、私挟んで睨み合いすんな鬱陶しい!」
「姫、私と行こう」
「姫君、私と来たまえ」
「や、私このあとヴィとメモプレ行く約束してるから。じゃあねー」
スタスタスタ
「ヴィ、か…」
「またか今度はヴィ君か!」
ガックリ
「…パレスに帰ります。ではまた、イシュマール先生」
「…ああ。いつでも診察室に来たまえ宰相殿」
「「はあ~っ」」
MEMORIAL PLACE(略してメモプレ)にて
「いつ来ても高いわね」
「当然さ……MEMORIAL PLACEの高さ……それはHUHENなのさ……」
「まあ高さがころころ変わる塔なんてあったら気持ち悪いっつーかなんかヤダ。そんなの人類に造れるわけないけどね。で、今日は何の用なの?」
「……特にないのさ……」
「え!?用もないのにメモプレに連れて来たんか!なら今すぐ降ろせー!!ここマジで怖いんだからなー!?」
「……それはMURIさ……」
「なんでよ!?」
「……まだ……お前と二人でいたい……お前は嫌か……?」
「っ!や、別にイヤじゃないけど…」
「……そうか……なら……もう少しここで景色を眺めよう……」
「おや?イシュマール先生ではありませんか。先日はありがとうございました」
「宰相殿か。その後セラ君は捕まったかな?」
「それが、やはり私の顔を見た途端に脱兎の如く逃亡しまして…」
「まさかあんなに分かりやすい語尾を付けているというのに見つからなかったというのかね?」
「いえ、捜索途中で執務が溜まっていたのを思い出したのでロイヤルガードに後を任せて私は先にパレスに戻ったのです」
「なるほど」
「セラ殿を確保したら、パレスの牢…ではなく、一室に簀巻きで転がしてさらに監視を一人付けた状態にしたら私を呼びにくる手筈になっています」
「いやに厳重だな。簀巻きか監視のどちらかで充分じゃないのかね?」
「それでは足りません。前回は監視の目を欺き逃げたので、仕方なく簀巻きを追加したのです」
「なるほど。前回の失敗を踏まえての追加要素だったわけだ。賢明な判断だね」
「これで今回は納得がいくまで話し合えるでしょう」
「宰相殿がセラ君の言葉を理解したいというのはよ~く分かった。だがセラ君にも人権というものが一応存在するのだから、監禁もほどほどにしたまえよ」
「ご忠告ありがとうございます。それでは一週間以内に理解出来るよう努力したいと思います」
「…まあ、人権侵害にならない域で頑張りたまえ」
「それは勿論です。宰相たる私が人権侵害など、あってはならない事ですから」
「分かっていればいいのだよ」
「そういえば、昨日イシュマール先生の診察室に姫がまた訪れたそうですね」
「ああ。悩みが出来たら来ると言って帰った次の日つまり昨日だね、何の悩みも用も無いにも拘わらず来たあげく、直ぐに帰ったとも」
「パレスに帰ってきた姫が、『いい暇つぶし場所ができて嬉しい』と言っていましたよ」
「暇つぶしに来られても迷惑なんだがね、まったく。あの姫君には常識というものが一切通じないから困ったものだよ」
「なら私が後で姫に注意しておきましょう。あまりイシュマール先生の邪魔をしてはいけないから、今後は用が無いのなら診察室には行かないように、と」
「いや宰相殿の手を煩わせる気はないよ私が直接姫に忠告をすればいいだけだから気にしないでくれたまえ」
「遠慮などしないで下さい、イシュマール先生。姫には必ず注意しておきます」
「しなくていいと言っているだろう!というかさっきの言い方は些か問題がある。あれじゃあまるで私が姫を邪魔者扱いしているみたいじゃないか」
「違うのですか?」
「…別に邪魔だと思った事は一度もないよ」
「そうでしたか」
「そうだとも」
「「………」」
「あ。シャロンとイシュマールだ。なんでこんな往来真っ只中で睨み合ってんの?」
「姫」
「姫君」
「周り見てみなよ。皆遠巻きに見物してるわよ。これなら明日の朝刊の一面を飾れるわね。『キングダム宰相、ストリートで睨み合い!相手はあのイシュマール先生!?』ってね」
「姫、私の名前の前の『あの』って何なんだい?」
「なんか含みを持たせた方が面白いと思ったから付けただけよ!」
「なるほど、購買意欲を促進させるための一要素だったわけだ。しかしだ、その言い方には私に何かしらの噂やら浮き名やらがあると勘違いされる可能性大なので止めてもらいたいものだね」
「はいはいわかったわかった。で、なんで睨み合ってたの?」
「何故いつも私の話をスルーするんだい姫君!?」
「姫、私達は睨み合いをしていたわけではないよ。少々立ち話をしていただけだ」
「そうなんだ。何話してたの?」
「姫の事だ」
「私?」
「そうだ。姫、イシュマール先生の診察室に用も無いのに行くのは
「待ちたまえ宰相殿!それは私が自分で忠告すると言ったはずだが?不用意な発言は止めてもらいたいものだね」
「ああ、そういえばそう言ってましたね。申し訳ありませんイシュマール先生」
「心がこもってないよ宰相殿」
「ねえ、言いかけて止めないでよ。気になるじゃん」
「姫、宰相殿の発言は気にしなくていい。いや、積極的に気にしないでくれ!」
「えー。仕方ないなあ。じゃあ貸し1にしとくわね」
「それより姫はこの後何か用事はあるのか?ないなら、一緒にパレスに戻ろう」
「それより暇なら私の部屋に来ないか?昨日ラクロア理事が茶葉をくれてね。一緒に飲もうじゃないか」
「「………」」
「ちょっ、私挟んで睨み合いすんな鬱陶しい!」
「姫、私と行こう」
「姫君、私と来たまえ」
「や、私このあとヴィとメモプレ行く約束してるから。じゃあねー」
スタスタスタ
「ヴィ、か…」
「またか今度はヴィ君か!」
ガックリ
「…パレスに帰ります。ではまた、イシュマール先生」
「…ああ。いつでも診察室に来たまえ宰相殿」
「「はあ~っ」」
MEMORIAL PLACE(略してメモプレ)にて
「いつ来ても高いわね」
「当然さ……MEMORIAL PLACEの高さ……それはHUHENなのさ……」
「まあ高さがころころ変わる塔なんてあったら気持ち悪いっつーかなんかヤダ。そんなの人類に造れるわけないけどね。で、今日は何の用なの?」
「……特にないのさ……」
「え!?用もないのにメモプレに連れて来たんか!なら今すぐ降ろせー!!ここマジで怖いんだからなー!?」
「……それはMURIさ……」
「なんでよ!?」
「……まだ……お前と二人でいたい……お前は嫌か……?」
「っ!や、別にイヤじゃないけど…」
「……そうか……なら……もう少しここで景色を眺めよう……」