デザート・キングダム

アスパシアは考えた。
怪我人の横で寝るのは不味いのではないか?と。
だが。

「ベッド広いし、いっか」

そう自分を納得させ、問答無用でシャロンが眠る自分のベッドに潜り込むアスパシア。
怪我をした腕と逆に陣取ったのは彼女なりの気遣いだ。

「おやすみ、シャロン」

そう言い、彼の温もりを感じながら眠りにつくアスパシア。
その間5秒。

「すーすー…」

そして翌日。

「…ん、朝か…」

シャロンが目を覚ました。

「ん?」

左側に温もりを感じそちらに視線を寄越す。

「なっ、アスパシア!?」

気持ち良さそうにすーすー寝息をたてながら自分に擦り寄るアスパシアを30秒間見つめ、漸く正気に戻るシャロン。

「まったく、君は無防備過ぎる」

そう言いながらアスパシアの顔にかかっていた髪をよせ、頬を愛しそうに一撫でした。
その時アスパシアが寝言をこぼす。

「ん…シャロン…」

そう言い、ふわりと微笑むアスパシア。
それは凄い破壊力だった。
鋼のごとき理性が弾けとび、欲望のまま自分の名を紡いだ柔らかそうな唇を味わいたいと思ってしまうくらい。
だが。
自分の立場を思い出し、己の理性を総動員してなんとか普段のポーカーフェイスを保つシャロン。

が、よく見ると口の端が若干ピクピクしているのがわかる。

「……そろそろ行かなくては」

この状況に堪えきれなくなったようだ。
もう一度アスパシアの頬を撫で、彼女を起こさないようにゆっくりベッドから降りるシャロン。

「アスパシア。君は、警戒心というものを異性に対して抱くべきだ」

アスパシアに覆い被さるように身を屈めその頬に口付ける。
顔を上げ、次は首筋に唇を寄せる。
そこに赤い印を一つ残し、満足そうにシャロンは部屋を後にした。
数分後。

「んー…あ、れ…シャロン?」

目を覚まし、横に居たはずのシャロンが居なくなっている事に気付くアスパシア。

「あいつ怪我人のくせに早起きだな」

二度寝するか考えとりあえず起きることにしたアスパシアは、欠伸をしながら鏡台の前に座った。

「ん、何だコレ?虫刺され…なわけないか。なんだろ?」

首筋に赤い痕を見つけ首を捻る。
だが見当もつかないので考えることをやめた。
が、やはり気になる。

「そーだ、シャロンに聞いてみよ」

名案だと言わんばかりの表情でウンウン頷くアスパシア。

「そうと決まったらさっさと準備済ましてシャロンとこ行かなきゃ。…あー、こんなもんでいっか。よし行こう!」

数分後。
シャロンはとても説明し辛い質問をされて硬直し、アスパシアを不審がらせた。



おまけ

「ということになったらどうするんですか姫様!あのエロ宰相ならキスマークだけじゃ飽き足らず寝てるのをいいことにボディタッチの可能性も捨てきれませんよ姫様!?」
「どうって、別に首に…されたくらいで怒ったりしないけど?それにシャロンはそんなことしないと思う」
「怒って下さい!というかその前に絶対絶対ゼ~ッタイ一緒に寝ないで下さい!あと男を信用しちゃいけません!!」
「何で?」
「男はオオカミなんです~!!!」
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