あたりは様々な木々が連なる森の中。
その中に隠れるように小さな小屋が建っている。
その小屋の傍で漆黒の黒髪を木で作られたかんざしでまとめ上げた少女が黙々と薪割をしていた。
少女の周りではきつねや鳥などの動物が昼寝をしている。
ひと段落終えると少女は袖をまくり上げた腕を額に当て汗を拭いた。

『つっかれた・・・。枝を拾えばいいんだろうけど薪のほうがやっぱ長持ちするしなあ・・・』

少女が薪割を終えると周りの動物たちも目を覚まし、少女を見上げた。

『ふふ。はいはい。おやつにしよう。用意してくるからちょっとここ、きれいにしといて。朝に干し終わった葉でお茶作ろ～』

そういうと動物たちは目を輝かせいそいそと散らばった薪を集めたりし始めた。
少女は使っていた斧を小屋の壁に立てかけ扉を開け、中に入った。
動物たちには悟られないよう、扉を閉めると深く息を吐いた。
朝から妙に胸がざわつくのだ。

”なんなのだろう。胸騒ぎがする。それに自分と同じような気配のものたちが同じ場所に集まっていく感覚がある。”

少女ははっと顔を上げた。

”もしかして”・・・。これが四龍の気配？・・・でも、彼らにあったことはないしわからない。”

ぎゅっとこぶしを握り胸に当てた。

”でも、それが何だっていうの。こんなところだれの目にも止まらない。絶対に彼らに会うことはないだろう。”

胸をなでおろすと薪に火をつけ、お湯を沸かした。