夏と青
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御幸達と食堂を出たはるだったが、御幸は沢村に呼び止められどこかに連れていかれ、白洲たちは各々の部屋に帰っていった。
倉持と2人きりになったはるも「お休み」と声をかけ、自分の寮に戻ろうとした。
しかし、倉持が寮まで送るというのでそれに甘えた。
『倉持ってなんやかんや優しいよね』
「こんな時間に女子一人で返さねえだろ」
『すぐそこだよ』
「そんな問題じゃねえよ。それとも御幸がよかったか?」
『それはあるよねー』
「よし柳の話、亮さんにしてやろ」
『ごめんなさい。倉持さんに送っていただき大変感謝しております』
倉持と話をしながら歩いていると、はるはずっと聞きたかったことを聞いた。
『ねえ、やっぱ、御幸の好きな子知ってるでしょ』
「知らねえ」
『即答なとこが怪しい』
「じゃあ自分で聞けばいいだろ」
『そんなことしたら速攻で3アウトチェンジだよ。交代だよ』
「意味わかんね。てか、御幸の好きな奴の選択肢に自分を入れろよ」
『なにその選択肢。逆に期待して私じゃないフラグ立ちまくりだわ』
『それに…』とはるは少し声のトーンを落として続けた。
『好きだったらこうやって送ってくれるでしょ…?』
はるがそういうと倉持は頭をガシガシとかいた。
「それは沢村につかまったからだろ」
『そうなんだけどさあ…。こう、気を付けてー、とか。はい、じゃあさよなら、て感じだったじゃん』
「あー、そうだな」
『そうなんだ…』
「なんだよ!自分で言ったんだろ!」
『改めて言われると痛感する』
「めんどくせー…。言っとくが、普段御幸は勉強会に参加なんかしねーぞ」
『あー、今回はやばかったんじゃない?』
「考えることを放棄すんな」
はるはため息をつくと立ち止まった。
それにつられ倉持も立ち止まる。
『もうさ、柳君と付き合っちゃおっか』
「…それは、柳に失礼だろ。あと今まで散々お前のなよなよした話聞いてきたおれ失礼」
『柳君のはわかる。倉持のは…まあ、ごめん。でも、1年も成立しない恋愛してるより私の事好きって言ってくれる人の方が安心する。付き合ってから好きになるってこともあるでしょ。実際、あれからいっぱい話してくれるし、楽しませようとしてくれる』
「お前がそれで後悔しないならいいんじゃね」
倉持は怒るかもしれないと、内心思っていたはるは真逆の答えに驚き、倉持の目を見た。
倉持はジッとはるを見ていた。
『私、間違ってる?』
「それを決めるのは俺じゃねえだろ。御幸が告られるたびにはるが落ちてたのも知ってるし、何とも言えねえよ。…でもまあ、柳利用して御幸忘れようとしてるのは嫌だけど」
『…』
「まあ、柳が返事くれって言うまで考えれば?」
『…た』
「あ?なんて」
『明日なの!返事が欲しいって言われてるの!』
はるが声を張って言うと、倉持は目を丸くした。
「おまっ!なんで早く言わねーんだよ!」
『だって自分の問題だし、私なりに考えてみようと思ったんだもん!そしたらずるずると…』
「はああ…」
倉持はうつむき額に手を当てた。そしておもむろに顔を上げ、もう見えている寮を指差した。
「よし、もう帰って寝ろ」
『そんなあ!倉持さん!助けてください!』
「もうどうしようもねえだろ!」
あわてて倉持の腕にすがりつこうとするはるあったが、むなしくもかわされる。
「お膳立てはしといてやる。後どうするかはあいつ次第だけどな。じゃあな」
『え、なに?どゆこと?ちょっと!』
倉持はそういうと野球部の寮へ帰っていった。
その姿を見てはるもしぶしぶ寮に足を運んだ。
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倉持は振り返り、はるが寮に入ったのを確認して再び歩き始めた。
実は御幸が沢村に連れていかれる直前、はるを送ってきてくれ、と御幸に頼まれていたのだ。
寮に戻ると御幸が外でしゃがんで待っていた。
「よう」
「遅くね?」
「そう思うなら自分で行け。いっちょ前に心配してんじゃねえよ」
「そうした方が自然だったろ?」
そういうと御幸は立ち上がった。
「率直に言うけど、お前、はるをどうしてぇの?付き合いてぇんじゃねえのかよ?」
倉持の問いかけに、御幸は困ったような顔をした。
「いきなりだな」
「長いことお前らの面倒見てきたんだ。それくらい知る権利あんだろ。はるの気持ちに気づいるくせに立ち悪ぃ」
「面倒って。…そうだなー、俺としてはお互い分かってんならそれでいいんだよ」
「んだ、それ。付き合うつもりはねぇのかよ」
「うーん、まあ、そうなるよなぁ」
御幸の微妙な答えに呆れと怒りを感じつつ、倉持は御幸を見た。
「ま、そういってられるのも今のうちだけどな」
御幸は眉をひそめる。
「どういう意味だ?」
「柳君はかまってくれて、優しいらしいぜ」
御幸は「なんだそれ」とフッと笑った。
「忠告しとくぜ。はるを我が物顔でかまってられるのも明日までだ。そんでもってそれははるが悪ぃんじゃなく、自分のもんだと勝手に思い込んでたお前が悪いんだ」
「じゃあな」と、言うと倉持は自分の部屋へ帰っていった。
御幸は倉持の言葉を思い返して、さらに眉間にしわを寄せた。
(はる、ケツは叩いといてやったぜ。あとはお前らでどうにかしろ!)
倉持は心の中で、そう叫んだ。