夏と青
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地獄の合宿が終わり、夏に近づいていく一方で中間テストも近づいていた。
授業中、リュックのポケットに入れていたスマホのバイブ音が鳴った。
授業が終わってから見ればいいだろう、と無視しようとするが、そのままバイブ音はなり続ける。
(誰だ、授業中にスタンプ連打してくるバカは…!)
先生にばれないよう、そっとスマホを取り出し、机の下で内容を確認する。
送り主は想像通りの倉持だった。
”今日の練習終わり、勉強会な”
(今回の開催は早いな。みんな、夏前だから赤点回避頑張ってんのかな)
”了解。授業中にスマホ触んな”
”お前もだろ”
”あれだけスタンプ送られてきたら嫌でも見るわ”
そう返信するとすぐにスマホをリュックにしまった。
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練習終わり、はるはボール磨きを終えるとリュックを背負い、食堂に向かった。
『おつかれーす』
「「おつかれー」」
食堂には何人か集まっていて少し離れたところには3年生も集まって勉強していた。
「お、なんだ!恒例の片桐塾か」
3年生の輪にいた伊佐敷が声を掛けてきた。
『そっすよー。レギュラーでも赤点とったら試合出られないですから。ね、倉持~』
「いつもそんなに低くねーよ!」
集まっていたのは倉持、渡辺、白洲、川上だった。
『今日はゾノ達は?』
「他の課題があるからやめとくってよ」
『そっか、とりあえずなんかわかんないとこあった?』
はるは渡辺の隣に座った。
「おれは今から始める」
『1からは教えないからね』
「はる、俺はここが分からなくて。解説見ても計算合わないんだ」
『ちょっと問題見せてー』
渡辺から問題集を借りて問題を見ていると、誰かが食堂に入ってきた。
「よ、」
『あ、御幸』
「あれ、御幸。さっきまで沢村に絡まれてただろ」
「まいてきたんだよ。おれもそろそろ勉強しようかなーと」
そういうと御幸ははるの前に座った。
『なんか、珍しい。御幸がこういうのに参加するの』
「ひゃはっ、努力してるとこ見られたくねーからなー!」
『え、なんで?誰に?』
にやにやと倉持が笑うと、御幸は問題集を開きながら薄く笑った。
「倉持―、うるさい」
はるは2人の中で交わされる会話に疑問を持ちながら、再び渡辺の問題集に目を落とした。
『あ、わかった。ここで間違えてんじゃない?ここが…』
「…あ、そっか!わかったよ。さすがはるだね」
『なんかナベちゃんに褒められるとうれしいな~』
「はるの教え方が上手なんだよ」
渡辺とはるが話していると、御幸が声を掛けてきた。
「はる~。おれここ分かんねえ」
『…ほんとにわかんないの?』
「なんで疑うんだよ」
『なんか白々しいから』
はるは御幸を疑うように見ると問題集を見た。
『ここはこの公式使うの』
「フーン、なんでこっちじゃねえの?」
『この公式は…』
本当に問題が分からなかった様子で真剣に聞き始める御幸を見て、はるは少し頬を緩ませた。
「純さーん。ここに生徒と不順異性交遊してる先生がいまーす」
「それは大変だな!」
『違います。どっちかというと生徒が完全に舐めてます』
(せっかく真面目にしてたのにー!)
と、内心怒りつつ、絡んできた伊佐敷と倉持の相手をする。
御幸は「先生がー」と悪乗りし、ほかの3年生も加勢してきた。
その時、また誰かが食堂に入ってきた。
「ちわっす!先輩方!」
「栄純君、うるさい」
入ってきたのは1年生の沢村と小湊弟だった。
「沢村!うっせーよ!」
「く、倉持先輩…!まさか勉強を!」
「しちゃわりーのかよ!お前も中間テスト赤点とったらレギュラーなしだぞ!」
「お、おれにはカネマールがついてますから!ははは!」
今度は沢村に倉持や3年生が絡みに行った。
一方で小湊弟はその中から抜けてはるのそばにやってきた。
「すごく見やすいノートですね」
はるが開いていたノートを見てそういった。
『そうかな?ありがとう。そんなこと言ってもらえると嬉しい』
「はるは俺らの先生だからね」
白洲が得意げに言った。
「先生?片桐先輩、教えるの上手なんですね」
「なんてたって野球部で唯一の特進クラスだからね。しかも特進の中でも5位以内にはいるよ。いつも順位張られるから今度みたらいいよ」
「そうなんですか!?特進クラスだとは知ってましたけど、改めて聞くとやっぱすごいなあ」
『よせやい、よせやい~。この優等生たちめ。あめちゃんあげようか?』
白洲たちがはるをここぞとばかりに褒めるためはるも気をよくしていると、それを聞きつけた御幸たちが再び絡んできた。
「そうだぞ。はるは女子にして150キロの球を投げる剛腕なんだぞ」
「握力は50キロで女子を捨てた女子ならざる女子なんだぞ」
『はーい。今の全部嘘ー。あなたたちは片桐塾、退学です』
「ほめたのに―」とブーイングが起こったが、『もう、真面目にやらないと赤点回避できないですよ!』という声掛けでみなそれぞれ散っていった。
1時間ほど勉強をして勉強会はお開きになった。