夏と青
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夏の選抜メンバーが選ばれ、地獄のゴールデンウイーク合宿がやってきた。
選手たちが普段の練習より数倍の汗を流し、疲労を蓄積していく中、マネージャーたちにも戦いが始まっていた。
「よっしゃ、いくぞー!目標1人100個!」
『そんなに作れないし、食べれないから』
選手たちのエネルギーを補うおにぎり生産である。
土日は作ったりするがこのと連日で作るのは合宿くらいだ。
「はるさん、はやいですね!」
『そう?自分の寮で余ったご飯をおにぎりにして持っていくときあるからかな』
「おにぎりだけで足りるの?」
『ちゃーんと、2限目終わり、お昼休憩、部活前とつくってまーす』
「はるって見た目のわりに食べるよね」
『部活で消費してもらってますから。帰宅部だったら恐ろしいことになってるよ』
「それ私も」
「はいはい、口も動かすけど、しっかり手も動かす」
「「はーい」」
たわいもない話をしながらマネージャー5人でおにぎりを作っていく。
『あ、そろそろ私、ジャグ見てきますね』
「たのんだはるー!」
「ありがとう」
そういうと1人練習グランドに駆け足で向かった。
グランドにつくと普段より息の切れた部員たちが時には膝に手をつきながら走り込みをしていた。
(これは、ドリンクいつもよりハイペースだな)
ジャグの中をのぞくとほとんど空になっていて、急いでドリンクを作りに走る。
ドリンクを作って戻ってくるとちょうど監督が休憩の合図をとっていた。
『お疲れ様です』
「おー、さんきゅー…」
「生き返るー」
みんな、ドリンクを飲んで口々に話す。
きょろきょろとあたりを見渡していると小湊兄が絡んできた。
「愛しの御幸はブルペンだよ」
「ひゃはっ。探してたのかよはるー」
『そうなんですね。ただ私は御幸だけじゃなくて投手陣も探してたんですけどね。あと、変な前置きいらないです。あと倉持、悪乗りするな』
「よくしゃべるね、はる。多弁は図星の表れだよ」
『亮さんこそ全然ばててませんねー。まだまだ走れそうです』
はると小湊兄が静かに火花を散らしていると伊佐敷達3年生も集まってきた。
「やめとけ、やめとけはるー。こいつに口で勝てる奴はいねーぞ」
『いいえ、私がその第一勝利者になって見せます』
「へえ、言うようになったじゃん。そこまで言うならいじめちゃおうか…」
『え、それはちょっと……。もー、倉持。亮さんに謝りなさい!』
「なんで俺だよ!」
騒いでいると投手陣たちが戻り、そのなかに御幸もいた。
「まーた勝てないのに亮さんに言い返してんのか、はる」
『またってなんだよ。もともとはあんたが…』
と、言うところで口をつぐんだ。
かわりに小湊兄が話す。
「はるが御幸に会いたいーていうもんだからさ」
『はい、それ完全に嘘ですよねー。亮さん大分疲れてますね。しっかり補給してください』
「え、そうなの。はるちゃん、俺に会いたかったの」
『うざ。ちゃん、つけんな』
「ひゃはっ、痴話げんかはよそでやれ!」
さらに悪乗りしてくる倉持に対して睨み返すと、倉持は黒い笑みを浮かべていた。
(あ、こいつ、私が御幸の話しまくるの根に持ってやがる…)
少しして休憩時間が終わり、再び練習が始まった。
はるも再びおにぎりの戦いへと戻った。
空が暗くなって来たころ、再度休憩があり、マネージャーたちは自分たちが作ったおにぎりとエネルギー補給につながるバナナや納豆と言った食べ物を持ってグランドに出た。
1年生の沢村はおにぎりに飛びつきそうなのを倉持に止められていて、はるも苦笑いした。
『急がなくてもいっぱいあるから』
「ありがとうございます!#[#dn=1#]#先輩!」
部員たちが食べ物にありつく中、御幸が話しかけてきた。
「はるー、あれある?」
『はいはい、作ってます』
「さっすが~」
御幸が言うのは、薄味の塩むすびの事だった。
部員達のほとんどはふりかけや具が入っている味のしっかりついたたおにぎりを好むが、御幸はそうではないらしく御幸からの要望で2つだけ御幸専用のおにぎりを作っているのだ。
『塩分も大事なんだから他の塩むすびも食べてよね』
「分かってるって~」
おにぎりを頬張る御幸を見てはるは困ったように笑った。
「あいつが先輩じゃなくてよかったわ~」
と御幸が言い出し、見てみると倉持が沢村におにぎりをどんどん食べさせているではないか。
(あいつ、去年の事根に持ってんな…。がんばれ沢村)
その後、練習が再開し、部員たちは今にも吐きそうな顔(特に沢村)をしながら1日が終わった。
練習終了後、はるがいつものようにボール磨きをしていると倉持が顔を出し、おにぎりの件で絡んできた。
よく見ている倉持に弱みを握られているような気がしたはるだった。