夏と青
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「聞いたぜ、はる~」
「ほんと、あんなにいつもお世話してあげてるのに報告なしとはね」
『え、なに。何ですか』
お昼休憩、トイレから教室へ戻る途中のはるであったがたまたま通りかかった野球部の先輩の伊佐敷、小湊兄に絡まれていたのだった。
『完全に輩なんですけど』
「そんな大口たたいてられるのは今だけだぜ。あんなの見せられたらなあ」
そういうと伊佐敷はスマホを取り出して1枚の写真を見せてきた。
『へ?!なに、これ。私!?』
そこに写っていたのは誰かの携帯の待ち受け画面を撮ったものであった。その待ち受け画面にはるの寝顔が写っている。
『こんな写真どこで・・・。ていうか、これ誰の携帯ですか?』
はるは顔を上げて伊佐敷の方を見た。
伊佐敷は顔をにやけさせながら、小湊兄と目を合わせた。
「そりゃあ、なあ?」
「こんなバカそうな寝顔を待ち受けにしたい奴なんて一人しかいないでしょ」
『え、ひど。・・・まさか』
はるはだんだんと顔を赤くしていった。
スマホを持つ学生が多い中、使わないからとガラケーを使用し続けている男の顔が浮かんだ。
「ほんと、御幸とくっついたなら早く報告すべきでしょ。お仕置きだね」
『う、うそでしょ・・・。あいつ、いつの間に・・・』
ー------------
時はさかのぼること昨夜。
部活後、例によって今回は御幸の部屋に部員たちが集まって騒いでいた。
「あのー、そろそろ解散と行きませんか・・・」
御幸が控えめにそういういった。
「なんだよ、まだ30分くらいしかたってねえじゃねえか!」
「おい、沢村!ジュース!」
「俺はジュースじゃねえ!ったく、はい、皆さん何が欲しいんすか」
部員たちは帰る様子がなく、御幸はあきらめてため息をついた。
そしてふと思いついた。
”そーだ。家族からの電話のふりして外に出て、はるに電話かけてみよ。”
御幸は自身の机の引き出しから携帯をこっそり取り出すと外に出ようとした。それに伊佐敷が反応した。
「おい御幸!どこ行くんだよ!」
「あ~、家族から電話が・・・」
「今、携帯とったところだよね。普段触らないお前が」
鋭く小湊兄が突っ込む。
「怪しいな・・・。おい、沢村!御幸の携帯を奪え!」
「ハイっす!」
「あ!おい!」
まだ買い出しに行っていなかった沢村が、御幸の手から携帯を奪い取り、画面を開いた。そしてその場にいた全員が画面をのぞき込み、目を見開いた。
「お、お前ー!」
「はると・・・、はると付き合ってたのか!」
口々に待ち受け画面について御幸に尋ねる。そこには部員全員が二人が付き合うのをまだかまだかと心待ちにしていたはるの寝顔の画像があったのだから。
「えーと、まあ色々ありまして・・・」
助け舟を求めるように近くにいた倉持を見ると、倉持はひやりと口角をあげた。
「お前!はるとこっそり付き合ってたのかよ!あ、もしかして付き合ってないけど勝手に待ち受けにするほど拗らせてんのか?やらしいな~」
”そうだった・・・。こいつはこういう時悪乗りする奴だった・・・”
御幸は部員たちに詰め寄られ、はるに電話をできないまま遅くまで尋問を受けたのであった。
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「大事な試合前に浮かれすぎないようにね」
小湊兄にそういわれはるは勢いよく首を縦に振った。
『もちろんです!』
「ま、お前たち2人がそんな腑抜けるようには見えないけど」
そういうと伊佐敷と小湊兄は教室に戻っていった。
”真相を確かめないと・・・!”
はるは急いでB組へ向かい、御幸を呼び出した。
『ちょっと!なんで言っといてくれないのよ!さっき純さんと亮さんにめっちゃ詰められたんだけど!』
「あ~、そっちにもいったか」
へらへらとする御幸の胸倉をつかみ揺さぶる。
『は、恥ずかしくて部活いけない・・・』
顔を抑えるはるの肩を軽くたたく。
「まー、いんじゃね。いつかはばれるって」
『あんたはなんでそんななの・・・』
はるはあきれながら予鈴とともに教室へ帰った。
御幸も自身の教室に戻ると、倉持が声をかけてきた。
「や~い、怒られてやんの」
「起こってるはるちゃんもかわいいな~」
「うっぜ。つーか、お前的には良かったんじゃねえの」
「なんのことかな」
「白々しいな。くっついてから威嚇しまくってる男が」
「まあ、たまたまこうなったから、仕方ない。さあ、授業授業~」
御幸が話を変えるかのように授業の準備をし始め、さらに気に食わないと感じる倉持だった。