夏と青
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次の日の朝、はるは大きなあくびをしながら教室へと向かった。御幸と両思いであったことをいまだ信じることができず寝付くことができなかったからだ。
「うわ、今日のお前一段とぶすだな」
声のする方を向くと倉持が立っていた。
『そんなこと言うからモテないんだよ』
「うっせー。喜べ、お前限定だ」
『え、まじで。全然うれしくなーい』
倉持のいつものダルがらみさえ少しうっとおしく感じるほど眠気が強く、もう一度大きくあくびをした。
そんなはるの様子をみて倉持はにやりと笑うと、おもむろに肩を組んできた。
「舞い上がって眠れなかったんですかー?」
耳もとで倉持がそうつぶやくと、はるは思い出したかのように顔を赤くした。
寮に帰った後舞い上がったはるはすぐに倉持に電話し、御幸とのことを報告していたのだ。
『……そうだけど、いいじゃん別にぃ』
倉持から目線をそらしながら小さくつぶやいた。
いつものはるであれば『うっさい!』と言いながら倉持をにらみつけるが、予想していなかったはるの反応に倉持はうろたえた。
「どした…めっちゃ女やん…」
『なんでいきなり関西弁やねん。そうです。いまさらながら生物学上は女なので。以後おみしりを置きを。って、うわ』
肩を組んで歩いていたはずの倉持から急に距離ができた。空いていた側の腕を誰かにつかまれ、引き寄せられたからだ。
「はーい。朝から公然浮気禁止ー。」
その相手は御幸であった。
はるは昨夜のことを思い出し口元が緩むのが分かった。
「うぜー。彼氏面かよ」
倉持が黒い笑みを浮かべながら御幸を見た。
はるのときと同様、それをごまかした返事が返ってくると思っていたがまたも予想が外れた。
「そうですけど。おれのはるちゃんなんで」
と、御幸は涼しい顔で言った。
その言葉を聞いてはるはさらに顔を赤くした。
「うっぜぇ!」
もう一度次は大きな声でそういうと御幸に蹴りを入れた。
一方ではるは御幸につかまれた腕が話されていないことに気づいた。
そっ、と腕をつかむ御幸の手につかまれていない側の手で触れ、御幸の手を離そうとする。しかし、御幸は離そうとせず、するするとつかむ手の位置をかえ、ついにははるの手を握った。
驚いて御幸を見上げるが、御幸は気にするそぶりもせず倉持と話している。
恥ずかしさにこらえつつ、はるは歩いていた廊下の前方に視線を向けた。
そして前から柳が歩いてきていたことに気づいた。
柳ははるに目を向け、次に御幸と繋がれた手を見た。
そして眉を少し下げ、小さくはるに向けて微笑むと何も言わずそのまま横を通り過ぎた。
昨夜、はるは電話で柳に付き合えないこと、御幸と両想いになったことを伝えた。
そのため、お互い気まずい状態であったのだ。
「お前ってすっげー怖がりなのな」
倉持はあきれながら御幸を横目で見た。
「なんのことかな」
御幸は、「ははは」と笑いながら目線を倉持からそらした。
つながれていた手は離れていた。
はるはぽかんと二人を見上げる。
それに気づいた倉持が言った。
「お前は気づいてなかったみてーだけど、こいつ、俺とはるだけで話してる時から前から柳が来てたの知ってたんだよ。そんで俺たちのとこに絡んできてこのけん制。」
「いやー、柳君が来てたなんて知らなかったな。見られちゃって恥ずかしいなあ~」
目線を外し、ごまかす御幸にはるは小さく笑った。
『何それ。そんなことしなくてもちゃんと好きだよ』
そういうと次ははるから御幸の手をぎゅっと握り、人目を気にしてすぐに話した。
御幸はその発言とはるの行動に少し頬を緩ませた。
その2人の行動に倉持は恨めしそうに眉を寄せた。
「勝手に二人でやってろ。俺は先行くわ」
早々と歩いていく倉持のあとを御幸が追いかける。
そしてはるの方に軽く振り向くと小さく手を振った。
その行動が可愛く思え、はるは再び微笑み、手を振り返し、自分の教室に向かった。
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「付き合った途端これかよ。お前ら切り替わり早すぎ」
「付き合ってない」
「どうでもいいわそんなこと」
B組教室で倉持と御幸はかばんを机に置きながら話す。
「つーかお前の嫉妬深さにあきれるわ」
「昨日まで付き合う、付き合わない、の話をしてたやつだぜ?気にするだろ」
「あー、まあ、そうかぁ?」
「あと、柳だけじゃねえから」
倉持は眉間にしわを寄せ御幸を見た。
御幸は笑っているが目が笑っていない。
察した倉持はさらに眉間にしわを寄せた。
「…結構お前らの相談役に回ってたんだけど?」
「それはそれ、これはこれ、だから」
そう言う御幸に倉持はあきれながら小さくため息をついた。
(はるも苦労するな、これは)