ハエの王のあらすじ

その日の夜、ジャック一派がのろしの番をしていた。
その日の薪が乾いていたため、火事になってしまう。
「俺達の他に誰がいるんだ!?」
ジャックが聞くと、アリスが答えた。
「ピギーとカレン、サム、エリックが浜辺、ラルフとクレアはお花畑の方にいるわ」
「サンディは…」
「まだ浜辺に戻ってきてなかったわ」
ジャックとアリスが話している間、ロジャーが前に出た。
「…となると、道に迷ったか。俺が探してくる」
そう言うと、ロジャーは着ているシャツの袖を伸ばして、片腕を口元に押し当てて火の中へ飛び込んだ。

燃える火を見て、ハンナは飛び上がる。
「この日の前でダンスしたいから、撮って!」
「ええ!?」
モーリスは慌ててビデオカメラでハンナを撮る。だが、いつものような笑顔はなかった。
「人の命がかかってるときに、何やってるのよ!」
アリスが怒ると、ハンナは平然と言った。
「あんた達も悪ふざけでこんな動画撮ってたよね?あたしはそれと同じことをやってるの!」
ハンナの言動にジャックは何も反論できない。ハンナには自分達はこんな風に見えていたなんて…ジャックは辛そうにハンナを見る。

その時、モーリスが叫んだ。
「ジャックを悪く言うな!ジャックは無人島に流れ着いても思い出作りのために、ハメを外しながらも精いっぱい無人島で生き抜いた!今のハンナとは違う!」
「それが何よ!?無人島で生き抜いたあたしたちは有名になるのよ!?」
ハンナのその言葉に、モーリスはこう言い放った。
「よかったじゃん!この動画がテレビに流れたらハンナは有名人だよ…もちろん、悪い意味でね!」
そう言うと、モーリスはビデオカメラの録画を切った。
「ジャック、アリス、火が燃え移らないうちに浜辺まで下りるぞ!」
ジャックとアリスが頷き、3人で山頂から駆け下りた。

その頃、ラルフとクレアはお花畑で歌を歌ったり、手を取って踊ったりしていた。
キスをした時、ラルフは空の異変に気付く。頭上を小鳥が飛んでいき、消防ヘリコプターが飛んでいた。
「きっと火事があったんだ」
ラルフはそう言うと、腰に巻いていたセーターを解いて、クレアに渡す。
「これを着て、今から逃げるぞ」
「ありがとう、わたしの手を離さないでね」
クレアがラルフのセーターを着ると、ラルフの手を取ってお花畑を去った。

火はお花畑にまでは迫っていないが、消防ヘリコプターが消火している。
ラルフとクレアは走って山を下りたが、クレアが足を滑らせた。
「きゃあっ!」
「クレア!」
クレアは片足を痛そうに抱えている。それを見て、ラルフは言った。
「僕は君の手を離さない、だから捕まって」
クレアが頷くと、ラルフがクレアを抱きかかえて、お姫様抱っこのような状態にする。そして、山を駆け下りた。

「サンディ、よかった!心配したんだぞ!」
ピギーが妹を抱きかかえて泣き出す。ロジャーがこう言った。
「無事でよかった…それと今のうちに持ち出せるものは持ち出しておけ」
「うん!」
ロジャーにそう言われ、家の中からほら貝を持って来るピギー。その時には、ジャック、アリス、モーリスも下りてきていた。ジャックは全力疾走したため荒い息をしている。
「すげぇ走った…」
「これ以上は…無理」
アリスもその場にへたり込む。
「ラルフとクレア、それとハンナは?」
カレンが聞くと、ジャックが首を横に振る。ジャックはこう独り言を言った。
「あいつなら、きっと大丈夫だ…」

その時、モーリスが手を振った。
「おーい!こっちだー!」
見ると、クレアをお姫様抱っこしたラルフが走って来る。
「クレア、もう大丈夫だよ」
「ありがとう、ラルフ」
ラルフはクレアを下ろす。二人は見つめ合っていたが、ピギーが声をかけた。
「二人とも、よかった…無事なんだね。クレア…このほら貝は君に持ってて欲しいんだ」
ピギーはほら貝をクレアに渡す。クレアは頷いて、こう言った。
「ありがとう、この無人島での日々は忘れないわ」

一方その頃、ハンナは炎の中を踊っていた。だが、その表情はどこか浮かない。
「どうして?どうしてあたしを見てくれないの?」
ハンナは習い事のピアノやバレエのコンクールでも優勝できなかった。誰も見てくれないと思った時に、無人島ではデジカメのおかげで相応の地位を手に入れたのだ。
でも、みんな誰も見てくれない。
その時、森が鎮火した。ハンナはその時には崖っぷちであり、下には海があった。
「あっ…」
ハンナは転落し、岩に頭をぶつけて、そのまま海に流された。

「ラルフ!大丈夫か!?」
「パパ…?」
大きな豪華客船から降りて来た白い海軍の制服を着ているラルフの父親が息子に近付いて、肩に毛布をかける。
「クレアには会えないの…?」
ラルフは家族や執事などの大人たちに囲まれて船に入って行くクレアを見ながら言う。
ラルフの父親は、悲しそうに頷いた。
「ああ、クレアのこの船の会社のお嬢様なんだ…会うことは難しいだろうな」
ラルフは泣き出した。

その後、ラルフは船の中で自分のセーターを「学校の制服だから」と返されたようだが、その時もクレアには会わせてもらえなかったようだ。
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