ハエの王のあらすじ

雲一つないため、満月が美しい夜だ。
ラルフはクレアを待つために浜辺に出たら、ジャックが歌を歌っている。ジャックの低い歌声に、アリスがうっとりと聞き惚れている。
その様子を、外に出ていたモーリスがこっそりビデオカメラで撮っている。
ジャックがアリスをエスコートして、アリスとのデュエットになった。

ジャックとアリスが歌い終わった後はモーリスと合流し、ラルフも見つける。ジャックがラルフを見て、さっきのことで赤面する。
「お前…聞いてたのか?」
「う、ううん!聞いてないよ!クレアと待ち合わせをしに行ったら、きれいな歌声だなー…って」
「聞いてんじゃねぇか!」
「ねぇ、このこと…誰にも言わないわよね?」
「うん、このことは誰にも言わないよ!」
アリスもさすがに動揺した様子で言ってきたので、ラルフは頷く。ラルフは嘘がつけないが、約束はきちんと守る。

ジャックとアリスは後ろを振り向き、アリスがジャックに甘える。
「ジャック、今日はいいでしょ?」
「ああ、今夜は寝かせねぇぞ!」
「キャー!」
そんなやり取りをしながらキャッスルロックの方へ歩いて行っているのを見届けた後、ラルフがモーリスに聞く。
「モーリス、どうしてジャックは歌声を他の人に聞かせたくないの?」
「ああ、あいつからは口止めされてるけど、ラルフなら大丈夫か…」

モーリスは静かに話し始めた。
「ジャックはロンドン聖歌隊のリーダーだったんだ…教会のクリスマス会でもきれいな歌声を披露していたんだ」
「ロンドン聖歌隊って、聞いたことある…でも、女の子が多かった印象があるし、今のリーダーも女の子のカレンだよね?」
ラルフの疑問に、モーリスの表情が曇る。
「ああ、ロンドン聖歌隊は女の子の方が多い。今のリーダーも女の子だ…ジャックは聖歌隊のリーダーになれて嬉しそうだったけど、しばらくするとジャックは聖歌隊をやめた。…声変わりでだ」
モーリスの話に、ラルフが言葉を失う。ジャックは歌を歌うのが好きだったが、本来なら喜ぶべき自分の体の成長で聖歌隊という居場所を失ったのだ。
言葉を失っているラルフを見て、モーリスは元気づけようと明るい口調で言う。
「俺はもう寝ようかな。お休み」
モーリスは軽く手を振って、家の方へと去って行った。

ラルフは悶々としながら浜辺へと座り、クレアを待つ。
「ラルフ、遅くなってごめんね…待った?」
「ううん!今来たところだよ!?」
ラルフは慌てるが、クレアはラルフの隣に座る。

ラルフは赤面しながらうつむく。クレアが戸惑って、ラルフに話しかける。
「ラルフ、どうしたの…?」
ラルフはクレアとさっきの距離が近かったジャックとアリスを交互に考えていた。そしてこう言った。
「クレア…僕のことが好き?」
ラルフの言葉に、赤面するクレア。
「え?ええ、好きよ…」
「そうか…君のことを考えると、僕が僕じゃなくなる気がするんだ」
ラルフの言葉をゆっくりかみ砕いて理解しようとするクレアの上に、ラルフが覆いかぶさる。

クレアはこれに恐怖を感じず、ラルフをただ見詰めている。
「ラルフ…?」
「怖い?僕は君を抱きしめたい、もっと近くに感じたいと思ってるんだ…」
「怖くないわ、あなただもの…」
クレアはラルフを抱きしめた。ラルフも頷いて、キスをした。

その頃、キャッスルロックでは、雲のベッドでジャックとアリスが寄り添って横たわっていた。
「ラルフとクレアもよろしくやってんだろうな」
アリスを抱き締めながら、ジャックは言う。アリスはジャックに甘えるようにその身を預けている。
「ジャック、今夜は寝かせないって言ったわよね?」
「ああ、まだこれからだ!」
そう言うと、ジャックとアリスはベッドの中でさらに抱き合った。

浜辺では、穏やかなさざ波が満ちたり、引いたりしている。全身にしっとりと汗をかいたラルフとクレアは、抱き合っていた。
「クレア…内なる獣の意味がわかったんだ」
ラルフは腕の中にいるクレアを見つめながら言った。クレアが聞き返す。
「内なる獣…?」
「ああ、君とこうやって愛し合ってわかったんだ…正しく獣になるというのは、こうやって生きていく上で必要なことだったんだね」
「ラルフ…」
クレアはラルフの唇に、軽くキスをする。ラルフがクレアを抱きしめる力が強くなった。
「クレア、もう一回していいかな…?」
「ええ」
クレアが頷くと、ラルフとクレアは再び愛し合った。
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