3話「黒と紅の彩り」

その日の夜、あいりは自宅のベッドで寝ている時、こんな夢を見た。
紫の光が舞う不思議な夢のような空間だ。

あいりが辺りを見渡すと、そこには藤色の髪の美少年が立っていた。背はあいりより少し低いだろうか…中性的な魅力の少年だった。

「君に恋人がいることも知っているし、心配しなくても僕は君に手を出さないよ…僕にも大切な人がいるしね」
あいりが呆然としていると、少年はクスリと笑った。
「おっと、自己紹介がまだだったね…僕はエスポ。人類の誕生からずっと人類を見守ってきた守護霊さ」
「えっと、わたしは…」
「君のことも知ってるよ、キュアロージー…いや、その姿だと花房あいりかな」
自己紹介をしようとするあいりを遮って、名前を呼ぶエスポ。その宇宙のような青い瞳は、あいりをまっすぐ見つめていた。

「今、僕は君の夢をジャックして君に語りかけている…君の恋人にもしたようにね」
「颯人くんの夢にも現れたの?」
あいりの質問に、エスポは答える。
「そうだよ、颯人もプリキュアである君を心から愛してくれているようだからね」
「颯人くんが言っていた、プリキュアの真実って…何?」

あいりの質問を聞いて、エスポは少し考えてゆっくり言った。
「プリキュアの真実か…当事者である君が無関係であるわけにはいかないね」
エスポは昔を懐かしむように話し始めた。
「プリキュアの歴史は人類誕生とともに始まった…僕も守護霊として長い長い時を経てプリキュアになった女性達を見守っていたんだ」

エスポは少し目を伏せた。
「…だが、それは苦難の歴史でもあった。女性だからと抑圧され、時には魔女として迫害され…悲惨な末路を辿った者も少なくなかった」
「魔女として迫害って…魔女狩りの被害に遭ったってこと?」
あいりは世界史の授業で聞いた魔女狩りのことを思い出す。エスポはどこか苦しそうに頷いた。
「うん、僕も魔女として裁判にかけられたプリキュアを知ってる…でも、近代化が進むと世界に大きな影響を与えた女王がプリキュアの活動に理解を示したり、ウーマン・リブの象徴にプリキュアが選ばれるようになったんだ」
「プリキュアって…そんな歴史があったんだ」
あいりは思った以上に長いプリキュアの歴史に驚く。エスポが頷くと言った。
「今となっては、プリキュアは子供達の憧れでヒーローだ。でも、そのせいでプリキュアの真実をみんなが忘れている…ゆゆしき事態だ」
少年とは思えない哀愁を漂わせるエスポに、あいりは言った。
「エスポ…わたしはどうしたらいいの?」
あいりが聞くと、エスポは答えた。
「そうだな…僕の伝えたことを仲間たちに伝えて。君達だけでも知ってくれたら、それだけで違うから」
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