カフェキラットで、あいり達は集まって話をしていた。
「この前のシスターって…香澄ちゃんだよね？」
あいりが聞くと、颯人が補足をする。
「黒い髪に赤い瞳のシスターがドンバレッティオに蹴りを入れていたけど、年は俺達とそう変わらないように見えた…どういうことなんだ？」

あいりと颯人の話を聞いて、ゆあは察したのか説明を始めた。
「あの子はディアマン教団のシスターなの…警察も頼りにならない愛須市では、教団の教えは秩序そのものなの」
「…僕達が教団側にとって秩序を乱す存在と見なされたかもね」
レンが言うと、大輝が慌てた様子で言った。
「お、おい、マジかよ！？俺ら、教団に目ぇつけられたのか！？」
「…周りに聞かれたらどうするんだよ」
大きな声を出した大輝を制すると、ゆあはこう言った。
「その可能性はあるかも…ゆあ達は魔女と悪魔と言っていたし」
「ウチらって…悪いことしてるのかな？」
話を聞いていて、みつきは不安そうに呟く。みつきを安心させるように、ゆあはみつきの手を取って言った。
「わからない…でも、もしかするとゆあ達は教団とも戦わないといけないかもしれないね」

その話を聞いて、不安そうになるあいりを見かねた颯人が言った。
「待ってくれ…その香澄さんって、誰なの？」
その質問に、ゆあが答えた。
「ゆあ達の…中学校時代の同級生だよ。生徒会長をやっていたけど、卒業後は進学せずにシスターになったみたい」
「市外だと当たり前のようにみんな高校に進学するけど、愛須市ではそうじゃないんだよ…だから僕達は愛須市の中でも恵まれている方なんだ」
レンは目を伏せながら言う。颯人は同じ国でも、近くにある街同士でも、格差が大きいことを知って言葉を失う。
それを見て、あいりは重い口を開いた。
「香澄ちゃんとも…戦わないといけないのかな？」

その重い空気を破るように、ひなが軽快に入店した。
「いつものお願いしまーす！…みんな、どうしたの？」
「ひなちゃん！」
あいりは途端に明るい表情になって、ひなを手招きした。

「黒曜香澄…って、最近正式なシスターになった若い子でしょ？あいりちゃん達の中学時代の同級生なんだね」
その言葉に、あいり、ゆあ、みつき、レンが頷く。ひなが香澄の情報を伝えた。
「確か幼い頃に親に捨てられて、ディアマン教団の運営する孤児院で暮らしていたんだって…だから、恩返しと言う目的でシスターになったみたい」
「黒曜…そんな過去があったんだ」
レンが呟くと、ひなはこう言った。
「黒曜香澄のことを伝えられたし、みんなにもう一つ用事があったの！ゆめちゃんが会いたいって！」