2話「月夜の死神と愛の女神」

休日、あいり達は大輝の家のリビングに集まっていた。
「大輝、辛いなら無理に話さなくていいんだよ…?」
レンもさすがに心配そうに、大輝の肩に手を置く。大輝は一呼吸置いて言った。
「レン、いいんだ…遅かれ早かれバレることだったからな」

大輝はゆっくりと、自分の過去について話し始めた。

「俺は愛須市の中でも特に治安が悪いとされている、貧民街で生まれた。俺の物心がついた頃には親はもういなかったよ」
大輝自身も親のことを覚えていない。赤ん坊の頃はどんな生活をしていたのか、自分の親がどんな人だったのかもわからなかった。

「俺は生きるために、小さい頃から盗みをしてきた…盗みが悪いことだと知ったのは俺が大きくなってからだよ。少ない食事をめぐって他の子供とケンカしたことだってある」
大輝は貧民街の中で物を盗んだり、食べ物を恵んでもらったりして食い繋いでいた。
少ない食べ物をめぐって貧民街に暮らす他の子供とケンカしたことだってある。

「貧民街に文字を教えてくれるホームレスのおじさんがいてな…俺はそのおじさんに本を読んでもらって、文字を覚えたんだ。小枝を使って文字を書く練習もしたこともある」
大輝はその時は懐かしむかのように、なぜ自分が流ちょうに言葉を話せるのか、文字の読み書きができるのかを話す。
貧民街の子供は生きるために精一杯だ。多くの子供達は文字の読み書きを習うほどの余裕がなかったのだろう。

「死神とは…どんな関係だったの?」
みつきが聞くと、大輝は落ち着いた様子で、こう言った。
「そうだったな…刹那とは同い年で、貧民街で共に生きると決意してからは一緒に暮らすようになったんだ」
大輝は物乞いをした時にイチゴメロンパンを恵んでもらって、刹那の元に駆け寄って二人で半分こしたようだ。
当時を懐かしむように微笑んでいた大輝だが、途端に表情だ曇る。
「だが10歳の時…俺が息を弾ませて家に帰った時に、刹那がいなかったんだ。…いくら待っても刹那は帰ってこなかった」
大輝の過去に、あいり達は沈痛な思いになる。

「だから刹那は大輝に感情的になったんだな…」
レンは、刹那は大輝とはもう再会したくなかったんだと察した。ゆあも悲痛な思いを抱えながら言う。
「死神も、感情がないわけじゃなかったんだね…」
みつきと颯人も言う。
「感情がない得体の知れない男だって聞いたけど、普通の人間と同じなのかな…」
「わかったよ、俺達がどれだけ恵まれてるか…!」
それを聞いて、あいりが決意をしたように立ち上がる。
「…助けよう。その人は死神と呼ばれていても、お姉ちゃんの大切な人だから!」

その時、ピュアンナが飛んできた。
「大変ピュア!昼間から死神が現れたと大騒ぎピュア!」
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