1話「絶望の淵に咲く花」

フードコートで食事を終え、トレーを返却口にまで持って行った後だった。
「ちょっとトイレ行ってくるね」
そう言ったあいりに、ゆあは言う。
「変なことされそうになったら、大声で知らせてね」
「うん!」
あいりは走って、女子トイレへと向かった。幸い空いているようだが、油断はできない。

あいりが女子トイレに入ったところで、何か小さな生き物にぶつかった。
「ピュアっ!」
「わっ」
顔面衝突してしまい、その白と水色のかわいい生き物はあいりの両手によってキャッチされる。
生き物はあいりの顔を視認すると、同時にパニックになって叫んだ。
「きゃあーーー!」
「あいちゃん、大丈夫!?」
「誰!?あいりに触ったの…?」
女子トイレに入ったゆあとみつきは叫ぶものの、あいりが生き物を両手で持っているため困惑している。

「あっはは、心配かけてごめんね…わたしは大丈夫」
あいりは顔を引きつらせながら立ち上がる。両手には生き物を持ったままだ。
生き物は人前で動いたらいけないと思って大人しくしているようだ。

「かわいい!その子いつの間に買ったの!?」
ゆあは生き物を見て、目を輝かせる。
「そういえばお店になかったけど、この子どこから来たんだろう?」
みつきも生き物をのぞき込んでいる。
その時だった。

「ママー、あのお姉ちゃん達変だよー」
「しっ、見ちゃいけません!」
トイレに入ってきた幼い女の子とそのお母さんが不審そうに見ていたので、解散してあいりは生き物を連れて空いていた個室に入り、ゆあとみつきは女子トイレから出る。

「…で、あなたってどうしてここにいたの?」
「ピュアンナピュア。この愛須市をシマにしている煌木組の構成員ピュア」
「こ、構成員…?」
あいりはヤクザの組がこんなかわいい生き物を構成員にしていると想像できなかった。彼女にとって、ヤクザの構成員は見るにいかつい男だったからだ。

「そうピュア。ピュアンナ達はもともとグリッタリアという国に住んでいたピュア…でも、強大な国際マフィア組織ミッドナイト・ファミリーがグリッタリアをめちゃくちゃにしたピュア!この愛須市にもミッドナイト・ファミリーの支部があるからこのままだとグリッタリアみたいになっちゃうピュア!助けてピュア!」
「ピュアンナ…」
あいりは同情的になった。
(なんでわたしに助けを求めるんだろう…?わたしは普通の女の子だよ…?)
あいりは安心させるようにピュアンナを撫でた。
「よくわからないけど…わたしにできることなら、任せて」
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