6話「蛍石と黒曜石」

香澄はしばらく倒れていたが、ゆっくり起き上がった。ガーネットのような赤い瞳には光が増えている。

「…完敗だわ」
香澄は前に進み、キュアロージーに右手を差し出す。キュアロージーも嬉しくなって握手した。
「香澄ちゃん…!よかった……!」
キュアロージーは嬉しくなって、両眼から涙がぽろぽろと流れ出す。
「…何、泣いてるのよ」
香澄はポケットからハンカチを取り出すと、キュアロージーの涙をぬぐう。

香澄は颯人達にも気付く。そして申し訳なさそうに言った。
「…あなた達にも魔女とか悪魔とかひどいことを言ったわね。ごめんなさい」
「本当は、俺達のことをそう思ってなかったんだね」
颯人の問いに、香澄はうなずく。
「ええ、あなたと話した時に気付いたの。あなたは悪魔じゃないってことに…それに、プリキュア達が魔女じゃないということも最初から気付いてたわ」
香澄が決意したように言う。
「アダマス司祭が教団に来てからおかしくなったの。あいつを止めて…」

香澄の背後から何者かが剣で刺す。香澄は倒れたが、外傷はないようだ。
「アダマス…!」
香澄が後ろにいたアダマスをにらむ。キュアロージー達は驚いて、アダマスを見た。
「シスター香澄…あなたには失望しました。魔女に懐柔かいじゅうされてほだされてしまうなんて…堕落だらくと言わずに何と言うのでしょうか」
「堕落なんて、香澄ちゃんはしてない!香澄ちゃんは…!」
キュアロージーの叫びを聞いて、キュアイノセントは制する。
「待って、ロージー…気持ちはわかるけど、シスターの容態ようたい確認かくにんが先よ」
「でも…!」
キュアロージーが叫ぶと、香澄の体が光りだした。

「やれやれ、プリキュアと戦ったシスターのたましい生贄いけにえささげようとするなんて、司祭アダマスもちたものだね…」
「エスポ!前に出てきたら危ないぞ!」
「はいはい…シスターの魂を固定化させたんだ。彼女は生きているよ」
エスポは大輝の忠告も聞きつつ、後ろから香澄のことを話す。

「おや、私のことは放置ですか…?いずれにせよ、大聖堂へは行かせませんよ」
アダマスはそう言った後、去って行った。

「香澄ちゃん…」
キュアロージーが泣きながら香澄を見つめる。エスポが近付いてこう言った。
「ここは危険だ…シスターを安全な場所で休ませよう。詳しい話はそれからだ」
「いったん本部から出た方がよさそうだね」
キュアアメジストが言うと、キュアシトラスが言う。
「誰が香澄を運ぶの…?」
キュアロージーが決意したように言った。
「わたしが運ぶよ」
「ロージー一人で運べるの?」
「変身を解いた後は一人で運ぶには重過ぎる…俺も運ぶよ」
キュアイノセントと颯人がそう言ったので、キュアロージーがお礼を言った。
「ありがとう、颯人くん」
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