6話「蛍石と黒曜石」

その頃、あいりは両親や妹と車で、姉夫婦であるまことと刹那の新居にいた。愛須市外に逃亡したと言っていたがそんなに遠くではなく、陽翼はるよく市に住んでいるようで、まことと刹那とは車に30分ほど乗れば会える距離だ。

「いらっしゃい、どうぞ」
家族が来ることは妻から聞いていてわかっていたのか鍵は開いており、中から刹那が出てきた。
刹那は愛須市でミッドナイト・ファミリーの幹部をしていたころとは打って変わって表情が柔らかくなっており、長い前髪もヘアピンでとめ、髪も束ねている。

リビングに通されると、まことがテイクアウトのお寿司やお皿を並べて準備をしていた。
「わーい、お寿司だー!」
「うん、みんなが来るから張り切っちゃった」
ゆうりとまことが話していると、刹那が心配そうに聞く。
「まこと、休んだ方がいいんじゃないか?準備は俺がやると言ったはずだが…」
「大丈夫よ、もう安定期に入ったんだし…」
まことが両親とあいりにも気付く。
「お父さん、お母さん、あいり、ゆうり、私は幸せよ。お仕事も見つかったし、煌木組から毎月生活費も入るし、刹那と一緒にいられるんだもん」
「俺達も初孫か…」
「生まれてからが大変だから、頑張ってね」
「ありがとう」
両親からの言葉を聞いた後、あいりも言った。
「お姉ちゃん達…幸せそうでよかった」

お寿司を食べた後、刹那が冷蔵庫からケーキを取り出す。
「うわあ!」
あいりとゆうりがワクワクしながら見ていた。あいりが興奮気味に言った。
「それって、ジェンダーリビールケーキだね!友達に送っていい?」
「ええ、いいわよ」
まことが話しているのを見て、刹那もこう言った。
「彼女達に送るんだな…スマホを新しくしたから大輝の連絡先を教えてくれないか?」
「もちろん!」
あいりが義兄となった刹那に大輝の連絡先を送る。刹那はさっそく大輝の連絡先を登録し、メッセージを送った。

『お前、刹那か!?元気そうでよかった…!』
「あいりちゃんが連絡先を教えてくれたんだ」
『そっか、あいりちゃんが遊びに来てくれたんだな』
「あいりちゃんだけじゃない。まことの家族も来てくれている」
大輝は刹那が日常生活で使う漢字も覚えたことに涙が止まらなかっただろう。刹那も親友とつながれて嬉しそうだった。
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