5話「全力疾走×全面抗争」

ミッドナイト・ファミリーのアジトの最上階のゆめが捕らえられている部屋には鍵がかかっていなかった。
中に入ると、ゆめがはりつけ台に両手と両足を拘束されていた。両目には泣きはらした跡があったようで、キュアロージー達を見ると、安堵のあまり泣き出した。
「よかった…!助けてくれたの!?」
「そうだよ!ゆめちゃん!」
ゆめとキュアロージーが話している間に、キュアアメジストと颯人、レン、ひながゆめの拘束具を解く。

「わーん!ありがとー!」
ゆめは泣きながら、キュアロージーを抱き締める。ゆめはひなに気付いてこう聞いた。
「キュアロージーって…ひなちゃんと知り合いなの?」
「う、うん!そーだよー!お母さん心配してるから帰ろっか!」
「うん!ありがとーね、みんなー!」
ゆめはひなと一緒に帰ることとなった。
「お願いね、ひなちゃん!」
「気を付けて帰るんだよー!」
キュアロージーと颯人に見送られ、ひなとゆめはミッドナイト・ファミリーのアジトから出る。後ろを見張っていたキュアイノセントが何かに気付いた。
「待って!誰かがこっちに来るわ!」

「やっぱり部屋の鍵は開けておいて正解だったな」
あごひげを生やしたミッドナイト・ファミリーの男性幹部が現れた。
「あ、あんたは…!」
「シトラス、大丈夫か!?おい、あんた誰だ!」
キュアシトラスは青ざめる。横にいた大輝も叫ぶと、男性幹部は部屋の中へと入ってくる。
「チッ、ガキはもう逃がした後だったのか…!」
「ディーノ園城…!」
レンはディーノ園城を睨みつける。

「相も変わらず生意気なガキだな…!」
ディーノ園城はレンに掴みかかって言った。
「おい!あのガキをどこにやった!」
「はぁ!?そんなん言うわけないだろ…!」
「この野郎…!」
ディーノ園城がレンを殴ろうとすると、キュアイノセントがディーノ園城の動きを封じた。
キュアイノセントが冷たく言い放つ。
「警備が甘かったようね。プリキュアを軽んじていたのかしら?」
「クソ…」
ディーノ園城は、床に押さえつけられる。

「誘拐してウチらをおびき寄せて罠にかけようだなんて…最低だよ、あんた」
キュアシトラスがディーノ園城に言う。ディーノ園城がこう言い放った。
「はっ、こんなガキどもに報復をやらせるとか煌木組も堕ちたもんだな。これはガキのお遊びじゃねぇんだぞ」
「大人って、そんな卑怯な遊びするんだね」
キュアアメジストが言い放つと、ディーノ園城が低く言う。
「卑怯だと…?プリキュアに憧れるガキを誘拐すれば、それでプリキュアをおびき寄せて始末できると考えたのに…今どきのガキは常識や礼儀が備わってねぇみたいだな」
「二人とも、相手マフィアだぞ!」
「無事で帰れなくなっちゃう!」
颯人とキュアロージーが叫ぶと、レンがこう言った。

「へぇ…誘拐、ねぇ……」
「あ?」
ディーノ園城がレンを見ると、レンはこう言った。
「あんたが雇ったチンピラはあんたが誘拐をやらせたと言ってたけど、これをボスが知ったら悲しむと思いまちゅよ~」
レンの予想外の煽りに、キュアロージー達は唖然とする。颯人は慌ててこう言った。
「レン!相手はマフィアだぞ!」
「わかってるよ、颯人。言っただろ?ディーノ園城に借りがあるって」
レンが颯人を制すると、ディーノ園城に向かってこう続けた。
「プリキュアに憧れてるからってカタギの子供を誘拐するなんて、仁義外れと言われても仕方ないでちゅね~」
「お前、俺の部下だっただろ!?」
ディーノ園城が怒りと屈辱のあまりこう叫ぶと、レンはこう続けた。
「部下だったから言えるんでちゅよ。プリキュアが僕を救ってくれたから、僕は命拾いできたんでちゅよ~」
「ぐぬぬ…!」
ディーノ園城がの怒りがふつふつと湧き上がる。

大輝もさすがに心配になり、レンにこう言った。
「お、おい…さすがに元上司だからってここまでやれとは言ってねぇぞ!」
「わかってるよ、元部下に赤ちゃん言葉で煽られるなんて心底予想外だっただろうね」
「みんな、来るわよ!」
キュアイノセントが叫ぶ。キュアロージー達は戦う準備をした。

「許さねぇ、ガキども!今日がお前らの命日だ!」
ディーノ園城が叫んだ。
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