2章「Journey to the City」

フレイアとの会食の後はティエラのホテルに一泊し、その翌日もティエラの街を散策していた。
「いろいろ観光名所があるだろ?一日ではすべて回れない、という意味だ」
フウトがティエラのことについて話す。どうやらだいたい回ってしまったらしく、情報をまとめようと噴水広場かカフェに行こうとした時だった。
「あ、あそこにも入りましょう!」
「あ…おい、こら!」
ハルが突然走り出したので、追いかけた。

イリスアカデミーはティエラの学校で、多くの子ども達がエレメント共に晩学に励んでいる。
今は昼休みの時間なので、グランドには多くの子ども達が遊んでいた。
ハルがそこに入ってしまったので、当然大騒ぎになっている。ジュリという名の少女がパートナーエレメントのビジュと共に走ってきたハナ達に近付かないよう注意を呼びかけていた。
「お、おい…ヤバいことになってないか?」
ブレイズが困惑しながら周りを見ている。フウトはハルを睨みつけた。
「ハル…自分が何したかわかってるのか?」
「えっと、な…何か問題でも……」
「あるに決まってるだろ!」
ハナは冷や汗をかきながら門を指さして言う。
「まぁ…とりあえず逃げよう!」

その時だった。黄色いパーカーを着た金髪の少年が、眼鏡をかけた黒いロングヘアの女性教師を連れて走って来た。この二人にも、パートナーエレメントがいる。
「キアラ先生、こっちです!」
「な、何があったんですか!?」

それで、ハナ達はイリスアカデミーの教師であるキアラから注意を受けるはめになった。
「ダイチくんから話は聞きましたが…あなた達も学校は部外者は入れないということをわかっていますね?」
「はい、すみません…」
「後で注意しておきます…」
イリスアカデミーの校長先生であるアカネがハナ達のフォローをした。アカネはジュリの母親である。
「でも、生徒たちに危害を加えるつもりはなかったのでしょう?」
「生徒から聞き込みをした結果、武器を生成するそぶりはなかったようね」
アカネのパートナーであるルビィが補足する。
「わたしが勝手に入ったばかりに…ごめんなさい」
ハルは珍しく終始うなだれていた。それを見て、キアラのパートナーである帽子を被ったエレメントのエルドが言う。
「まぁ、本人も反省しているようだし…今回は注意だけにした方が良さそうだな」

その時ノックオンがして、中にさっきの黄色いパーカーの少年とパートナーエレメントのアースが入って来た。キアラが心配そうに尋ねた。
「ダイチくん、どうしたのですか?午後も授業がありますし、準備する時間もあるでしょう?」
「なので、ちゃちゃっと言いますね!さっきアカデミーに入ったのってたぶん旅人なんですよ!」
ハナ達は思わずビクッとなった。ダイチは構わず続ける。
「冒険の参考になるような調べ物とかする時に、このアカデミーに入らなきゃいけないこともあるんで特別に許可してもらえませんか?お願いします!」
「僕からもお願いします!」
ダイチは頭を下げた。横にいるアースも頭を下げる。
「確かにそうですね…わかりました」
キアラはダイチにうなずいた後、ハナ達に向き直った。
「冒険でこのアカデミーに立ち入ることもあるでしょう…ただしその場合、条件があります。ダイチくんたちに同伴してもらってくださいね」
「え!?いいんですか!ありがとうございます!」
「本当ですか!?ハル、よかったな!…勝手に入ったのは良くないけど」
ハナとフウトはダイチにもお礼を言うと、ダイチは次の授業もあるからと校長室を出た。
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