にわか雨 駆ける歪な 影一つ
「まったく……遠征から帰ったばかりだというのに、何故偽物くんと買い物しないといけないのかな」
「こちらも畑当番終わりだ。だが主の命だ、仕方ないだろう」
「ふん」
万屋への道を歩きながら山姥切長義が悪態をつくと、山姥切国広がすかさず棘のある口ぶりで言い返したので、彼は眉間に皺を寄せてそっぽを向いた。
本丸では提出期限が迫っている書類の処理に、審神者は忙殺されていた。
いくら処理しても処理しても山積みの書類は目の前に高くそびえて、いつまでも終わらず審神者は気が遠くなった。
いっそお手洗いとでも言って、どこか遠くに逃げてさぼってしまいたいと思ったが、そんな事をしても自分の首を絞めるだけなので、妄想の中だけに留めておく事にした。
無心で筆を動かしている途中で、審神者はふと万屋で頼んでいた商品の受け取りが今日であった事を思い出した。
本当なら自分で取りに行きたい所だが、今抜けたら確実に提出期限に間に合わない。
そこで自分の部屋の障子を開けて、視界に入った刀剣男士二振りがちょうど畑当番が終わったばかりの国広と、遠征から帰って来たばかりの山姥切だったのだ。
彼らは目が合えば顔を歪め、口を開けば皮肉や悪態の応酬、時に殴り合いにまで発展する事もある程、この本丸きっての仲の悪さだ。
審神者もその事を知っていて、普段は内番や当番などはなるべく同じにならないようにしていたが、忙しさに判断力が鈍っていた審神者には、そんな所までは気が回らなかった。
二振りは着替える間もなく、半ば追い出される勢いで本丸から送り出され、それぞれ内番着と戦装束のまま万屋へ向かう事になったのだ。
「こちらも畑当番終わりだ。だが主の命だ、仕方ないだろう」
「ふん」
万屋への道を歩きながら山姥切長義が悪態をつくと、山姥切国広がすかさず棘のある口ぶりで言い返したので、彼は眉間に皺を寄せてそっぽを向いた。
本丸では提出期限が迫っている書類の処理に、審神者は忙殺されていた。
いくら処理しても処理しても山積みの書類は目の前に高くそびえて、いつまでも終わらず審神者は気が遠くなった。
いっそお手洗いとでも言って、どこか遠くに逃げてさぼってしまいたいと思ったが、そんな事をしても自分の首を絞めるだけなので、妄想の中だけに留めておく事にした。
無心で筆を動かしている途中で、審神者はふと万屋で頼んでいた商品の受け取りが今日であった事を思い出した。
本当なら自分で取りに行きたい所だが、今抜けたら確実に提出期限に間に合わない。
そこで自分の部屋の障子を開けて、視界に入った刀剣男士二振りがちょうど畑当番が終わったばかりの国広と、遠征から帰って来たばかりの山姥切だったのだ。
彼らは目が合えば顔を歪め、口を開けば皮肉や悪態の応酬、時に殴り合いにまで発展する事もある程、この本丸きっての仲の悪さだ。
審神者もその事を知っていて、普段は内番や当番などはなるべく同じにならないようにしていたが、忙しさに判断力が鈍っていた審神者には、そんな所までは気が回らなかった。
二振りは着替える間もなく、半ば追い出される勢いで本丸から送り出され、それぞれ内番着と戦装束のまま万屋へ向かう事になったのだ。