桜は何で色づくか
「あれ?山姥切。何か桜の色違いません?」
「そうかな?」
聚楽第の任務が終わり、無事優判定を貰えたこの本丸に、山姥切長義が配属された。
そんな彼は練度上げの為に部隊長として、自分よりも少しだけ練度の高い他の刀達と共に、戦場を周回していた。
そんな毎日の中で、一緒に出陣していた昔からの顔なじみ、鯰尾藤四郎が不思議そうに山姥切を見上げたのは、彼が初めて誉を取った時だった。
そんな鯰尾の声に、山姥切は一瞬きょとんと目を丸くして、改めて自分から舞っている誉桜を眺めた。
手に取ってみようと手を伸ばしても、その桜は幻の様な物。
伸ばした手をすり抜けるだけで、決して触れる事は出来ない。
ひらひらと舞う桜は、桃色に僅かに赤みが入っており、山桜の様に濃く色づいていた。
「ほんとだ!ボクのよりも色が濃いね、すごくきれい!」
一つ前の戦闘で誉を取って、既に桜を舞わせていた乱藤四郎が、楽しげに山姥切の隣に立つと、二振りの桜が交じり合う。
乱の淡い桃色と比較して見ると、その色の違いが良く分かった。
「……本当だ、確かに俺の桜の色の方が濃いね」
「わあ…!きれいですね!」
同じく乱の近くで二振りの桜を見ていた、秋田藤四郎が感嘆の声を上げた。
「じゃあ、敵も倒した事だし、そろそろ帰るとしようか」
少しばかり照れくさくなった山姥切は、照れ隠しの為に、部隊の帰還を促した。
その夜は山姥切が初めて誉を取ったという事で、宴が行われた。
宴といっても、季節の節目などにされる大きな物とは違って、食卓に並ぶおかずが数種類増えた、いつもより少しだけ豪華な食事というささやかな物だ。
酒を飲みたい者は、それを口実に各々勝手に酒盛りを始めている。
「山姥切さんが誉を取った時の桜が、すごくきれいだったんだよ!ね、秋田」
「はい、すごくきれいでした!」
宴の一角では乱と秋田が、興奮気味に山姥切の桜の事を話していた。
既に酒に酔っている面々は、近くの者からその話に食いつきはじめる。
「そんなに綺麗だったのかい?」
乱の隣に座っていた次郎太刀が、ビールの瓶を置いて、ずいと乗り出した。
既に出来上がっていて顔は真っ赤だが、それでも手に持っているビールのグラスは離さずにいる所を見ると、まだまだ飲むつもりなのだろう。
「そうなの!確か秋田の髪よりも、濃いピンク色だったよね?」
「はい、別の戦闘で誉を取っていた乱兄さんが隣に立つと、二色の桜が混じってすごくきれいでした」
「へえ、じゃあいつか一緒に出陣した時に、その桜が見れたらいい酒が飲めそうだ!」
「ふふ、恥ずかしいから俺で花見酒はやめてほしいかな」
そのやり取りを聞いていた山姥切は、酒を飲みながらやんわりと拒否していたが、満更でもなさそうな顔で微笑んだ。
彼の色濃い桜について盛り上がっている、輪から離れた広間の隅で、深くかぶった布の中からその話に聞き耳を立てていた山姥切国広は、話の中心になっている山姥切を遠目で見つめていた。
「そうかな?」
聚楽第の任務が終わり、無事優判定を貰えたこの本丸に、山姥切長義が配属された。
そんな彼は練度上げの為に部隊長として、自分よりも少しだけ練度の高い他の刀達と共に、戦場を周回していた。
そんな毎日の中で、一緒に出陣していた昔からの顔なじみ、鯰尾藤四郎が不思議そうに山姥切を見上げたのは、彼が初めて誉を取った時だった。
そんな鯰尾の声に、山姥切は一瞬きょとんと目を丸くして、改めて自分から舞っている誉桜を眺めた。
手に取ってみようと手を伸ばしても、その桜は幻の様な物。
伸ばした手をすり抜けるだけで、決して触れる事は出来ない。
ひらひらと舞う桜は、桃色に僅かに赤みが入っており、山桜の様に濃く色づいていた。
「ほんとだ!ボクのよりも色が濃いね、すごくきれい!」
一つ前の戦闘で誉を取って、既に桜を舞わせていた乱藤四郎が、楽しげに山姥切の隣に立つと、二振りの桜が交じり合う。
乱の淡い桃色と比較して見ると、その色の違いが良く分かった。
「……本当だ、確かに俺の桜の色の方が濃いね」
「わあ…!きれいですね!」
同じく乱の近くで二振りの桜を見ていた、秋田藤四郎が感嘆の声を上げた。
「じゃあ、敵も倒した事だし、そろそろ帰るとしようか」
少しばかり照れくさくなった山姥切は、照れ隠しの為に、部隊の帰還を促した。
その夜は山姥切が初めて誉を取ったという事で、宴が行われた。
宴といっても、季節の節目などにされる大きな物とは違って、食卓に並ぶおかずが数種類増えた、いつもより少しだけ豪華な食事というささやかな物だ。
酒を飲みたい者は、それを口実に各々勝手に酒盛りを始めている。
「山姥切さんが誉を取った時の桜が、すごくきれいだったんだよ!ね、秋田」
「はい、すごくきれいでした!」
宴の一角では乱と秋田が、興奮気味に山姥切の桜の事を話していた。
既に酒に酔っている面々は、近くの者からその話に食いつきはじめる。
「そんなに綺麗だったのかい?」
乱の隣に座っていた次郎太刀が、ビールの瓶を置いて、ずいと乗り出した。
既に出来上がっていて顔は真っ赤だが、それでも手に持っているビールのグラスは離さずにいる所を見ると、まだまだ飲むつもりなのだろう。
「そうなの!確か秋田の髪よりも、濃いピンク色だったよね?」
「はい、別の戦闘で誉を取っていた乱兄さんが隣に立つと、二色の桜が混じってすごくきれいでした」
「へえ、じゃあいつか一緒に出陣した時に、その桜が見れたらいい酒が飲めそうだ!」
「ふふ、恥ずかしいから俺で花見酒はやめてほしいかな」
そのやり取りを聞いていた山姥切は、酒を飲みながらやんわりと拒否していたが、満更でもなさそうな顔で微笑んだ。
彼の色濃い桜について盛り上がっている、輪から離れた広間の隅で、深くかぶった布の中からその話に聞き耳を立てていた山姥切国広は、話の中心になっている山姥切を遠目で見つめていた。
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