お願い!マイヒーロー!
ぴぃとジェイドが談話室に戻ってくると、女はまた話を始めた。
「こうして出会えたのも何かの縁です!パワーを溜めるのもそうですが、ぜひ共にPYOMAと戦ってください!」
「ヤダよ」
「えーっ!?なんでですか!?」
「僕は喜んでお手伝いしますよ。ぴぃさんは僕の番ですから」
「ジェイド!?早くないですか!?ぼ、ぼ、僕、僕は、あの」
「人魚が生涯を誓うのは一人ですよ。常識じゃないですか」
「えー…まぁそうだけどさぁ…オレの兄弟ながらすげぇよ」
「ジェイドさん!」
「はい?」
ぴぃ以外には興味がないと、不快感を露わにしたジェイドは、それでも名前を呼ばれて女の方に向き直り、話を聞く体勢をつくる。
「こんなにも生命エネルギーが溜まることなんてなかったのよ!お願いがあるの!」
「お願い?」
「ぴぃちゃんの番 になるのは認める!だから一緒に戦って!」
「なぜ貴女の許可を取る必要があるのでしょう。僕は僕の気持ちによってぴぃさんを番にしたのです。貴女には関係ありません」
「ヒトデちゃん、オレと同じ扱いされてらぁ!」
ジェイドにサクッと提案を切られ、フロイドにも笑われた女は一瞬しゅんとしたが、その程度で折れるくらいなら宇宙警察などしていない。
気を取り直したとばかり、ジェイドの胸に刺さっていたマジカルペンを指さして『話を変えるわ。それは何?』という。
「これはマジカルペンですよ。先ほどアズールとフロイドが魔法を使っていたでしょう」
「マホウ…」
「もしかして貴女の星には魔法はないのですか?」
「そんなものはないわ。私たちはスケベパ」
「それはもういいから!え~じゃあヒトデちゃんたちはその光線銃みたいなものが全てなわけだ?」
「そうよ!…といっても、もう私とぴぃちゃんしか残っていないのだけれどね」
ふっと影がさしたその表情に、アズールがちょっと心を痛めたのは、すでに彼女に一目ぼれしていたせいかもしれない。
「あの、ジェイドさんのそれ、マジカルペン、見せてほしいわ」
「ええ、その程度なら構いませんよ」
「ありがとう!……ふーん?見た目はただの宝石なのね」
「そうですね。結局のところ魔力を帯びた石ですので」
「そうなの。じゃあこれちょっと改造させてもらうわね」
「「「はい?」」」
「えーいっ!」
せっかく溜まった生命エネルギーをビビッとマジカルペンにぶつけて数秒。
マジカルペンの先っぽの尖った部分は、何やらボタンのような形状に変形されていた。
「僕のマジカルペンに何をっ」
「ふん!ジェイドさんに更なる力を与えただけよ!そのボタンを押してみて」
「嫌ですよ貴女のいうことを聞くのなんて」
「ぴぃちゃん!頼むわ!」
「ぴぴぃ…?」
「うっ…!」
キラキラキラキラと瞳を潤ませる、元のうさぎ姿に戻ったぴぃに見つめられて、ジェイドが怯む。一歩詰めよるぴぃ。あ…ああ…と声を漏らしながらしゃがみ込むジェイド。もうこれはお笑いか何かじゃないのかとフロイドが頭を抱えた。
「わかりましたっ…押します!」
「は!?マジ!?やめなってジェイド!」
「ぴぃさんのためです!」
「誰も『ぴぃさんのため』なんて言ってませんが?」
ぽち!
意を決してそれを押したジェイドは、それでも何が起こるのかという好奇心から目をぱちぱちと瞬かせる。
異変が始まったのはすぐだった。
ジェイドの周りをキラキラしたものが舞い始めたと思えば、服が、糸が解けるようにしゅるしゅると脱げていくではないか。
「おや」
「おや、じゃねぇええ!」
「ジェイド、お、お前服が!」
消えてゆく服を止めることはできない。存外勢いよくなくなっていく服を眺めながら、『なかなかよい解放感ですね』などと述べるジェイドは強者だった。そして残す下着も消えてしま…うと思われた瞬間。どこからともなくチィン!という音が鳴り、それに合わせてぴぃが飛び跳ねたおかげでジェイドのナニが露出するのは避けられた。
ジェイドの寮服の代わりに現れたのは、どこぞのスーパーヒーローのようなアーマースーツであった。ご丁寧にチョウザメの鱗柄がついていて強そうだ。
スーツカラーは髪の色に合わせたのか、シーグリーン。顔は上半分を黒の半透明なゴーグルでおおっている。
それからジェイドの背丈ほどある光線銃を背中に背負って、それに気づくとすぐさま構えてみたジェイドは何だか満足そうである。
「これはこれは…思った以上ですね」
「うわっすげっ!」
「この生命パワー、一人で使うには勿体ない…!皆さんのも改造するわよ~!」
「は?」
「ちょ、」
「えーい!」
ビビビと打ち込んだ光線は的確にアズールとフロイドのマジカルペンに当たり、それらにもボタンがつく。
こうなったら仕方がない、と、フロイドも腹を括り変身。それを見たアズールも、何故か遅れをとるまいとボタンを押したのであった。
「あ~~~~もうなんか本当あれだな、オレなにしてんの……」
「ウ、ウワァっ!!」
「アズール隠すとこちげぇだろ」
「わっあっ、ぬげっ、みえ、」
どこを隠すこともしないフロイド。身体をくねらせて必死で隠そうとするアズールも無事アーマースーツを身に纏う。
変身完了!と満足そうに言う女と、自らの恰好を見る三人の間に、不思議な空気が漂った。
「思った通り!ジェイドさんもフロイドさんもとても強そうだわ!その光線銃はね、あなたのスケベ魂よ!」
「あーーーーーーーーやっぱりそういうことかよ形状がなんかそれっぽいもんねほんとヒトデちゃんの星やべぇよ!!!!!!!!」
「アズールさんのは…可愛いわね!お二人に比べたら小型銃なのね!」
「…?」
「あ~~アズールは意味わかんないままでいーよー」
変身し終わってそろってみれば、なかなかヒーロー面になるのだから面白い。
他の寮生たちは散り散りになっていたので、残っていたのは三人だけだったのが幸いだ。
すなわち「やっぱりリーチ兄弟に比べると…寮長の、小さいんだな」とそう思われることは避けられた。
余談だが、別にアズールのソレが特別小さいわけではない。単純にリーチ兄弟に比べるとそう見えるだけだ。
「貴方達!PYOMAと戦うために力を貸して!お願いよ!きっと勝てるわ!」
「魔法が役に立たない戦いですか。こうなると俄然興味があります」
「乗りかかった船です。これも慈悲の心というもの。貴女の力になりましょう」
「オレは興味ないけど~、ジェイドとアズールがやるならいーよー」
「わぁ!ありがたいわ!」
「あ、一ついいですか?」
スッと手を挙げたのはジェイドだ。
皆が不思議な顔をしてジェイドの方を見ると、ジェイドは愛おしそうにぴぃを抱き上げて言った。
「ぴぃさんにあんなことやこんなことをするのは僕だけにしていただかないと困りますが、そこは大丈夫ですね?」
「「大丈夫に決まってる!!!!!!」」
キィン。大きな声が寮内に響き渡った。
「てかさぁ…、割といい時間じゃね?そろそろ眠ぃ」
「ああ、たしかにそうですね。では僕とぴぃさんは」
「ジェイド、お前もうオレたちの部屋で寝んな!そいつ連れてくんなら出禁だかんな!」
「おやおや悲しいことを…。では、アズール、緊急事態なのでゲストルームを貸し出していただけますね?」
「あ、ああ、それは、そうだな………」
「んじゃあヒトデちゃんはぁ?ジェイドいないからオレんとこくる?」
「え、私は」
「彼女は僕の部屋にご案内します!!!!!!!!!」
その言葉にきょとんとしたジェイドとフロイドが、にんまり笑う。
「へぇ~?アズール本気なんだ?」
「アズールにできるんでしょうかねぇ。『スケベパワーにつながること』が」
「ぼ、僕は別に!そういうのを気にしているわけでは!ほら貴女!行きますよ!」
「え、わ、」
どうあがいても譲りたくないようだったアズールに連れられて、女は寮長室へ引きずられていった。
「ジェイドさぁあんぴぃちゃんをよろしくお願いしますうううう!!」
「はい、お任せください」
「あとそのスーツ!もう一回スイッチ押せば戻りますからぁ~おやすみなさい~~」
「よくできてんな~」
そうして初めての夜は更けてゆく。
果たして、アズールはスケベパワー貯蓄に貢献することができるのだろうか。
「こうして出会えたのも何かの縁です!パワーを溜めるのもそうですが、ぜひ共にPYOMAと戦ってください!」
「ヤダよ」
「えーっ!?なんでですか!?」
「僕は喜んでお手伝いしますよ。ぴぃさんは僕の番ですから」
「ジェイド!?早くないですか!?ぼ、ぼ、僕、僕は、あの」
「人魚が生涯を誓うのは一人ですよ。常識じゃないですか」
「えー…まぁそうだけどさぁ…オレの兄弟ながらすげぇよ」
「ジェイドさん!」
「はい?」
ぴぃ以外には興味がないと、不快感を露わにしたジェイドは、それでも名前を呼ばれて女の方に向き直り、話を聞く体勢をつくる。
「こんなにも生命エネルギーが溜まることなんてなかったのよ!お願いがあるの!」
「お願い?」
「ぴぃちゃんの
「なぜ貴女の許可を取る必要があるのでしょう。僕は僕の気持ちによってぴぃさんを番にしたのです。貴女には関係ありません」
「ヒトデちゃん、オレと同じ扱いされてらぁ!」
ジェイドにサクッと提案を切られ、フロイドにも笑われた女は一瞬しゅんとしたが、その程度で折れるくらいなら宇宙警察などしていない。
気を取り直したとばかり、ジェイドの胸に刺さっていたマジカルペンを指さして『話を変えるわ。それは何?』という。
「これはマジカルペンですよ。先ほどアズールとフロイドが魔法を使っていたでしょう」
「マホウ…」
「もしかして貴女の星には魔法はないのですか?」
「そんなものはないわ。私たちはスケベパ」
「それはもういいから!え~じゃあヒトデちゃんたちはその光線銃みたいなものが全てなわけだ?」
「そうよ!…といっても、もう私とぴぃちゃんしか残っていないのだけれどね」
ふっと影がさしたその表情に、アズールがちょっと心を痛めたのは、すでに彼女に一目ぼれしていたせいかもしれない。
「あの、ジェイドさんのそれ、マジカルペン、見せてほしいわ」
「ええ、その程度なら構いませんよ」
「ありがとう!……ふーん?見た目はただの宝石なのね」
「そうですね。結局のところ魔力を帯びた石ですので」
「そうなの。じゃあこれちょっと改造させてもらうわね」
「「「はい?」」」
「えーいっ!」
せっかく溜まった生命エネルギーをビビッとマジカルペンにぶつけて数秒。
マジカルペンの先っぽの尖った部分は、何やらボタンのような形状に変形されていた。
「僕のマジカルペンに何をっ」
「ふん!ジェイドさんに更なる力を与えただけよ!そのボタンを押してみて」
「嫌ですよ貴女のいうことを聞くのなんて」
「ぴぃちゃん!頼むわ!」
「ぴぴぃ…?」
「うっ…!」
キラキラキラキラと瞳を潤ませる、元のうさぎ姿に戻ったぴぃに見つめられて、ジェイドが怯む。一歩詰めよるぴぃ。あ…ああ…と声を漏らしながらしゃがみ込むジェイド。もうこれはお笑いか何かじゃないのかとフロイドが頭を抱えた。
「わかりましたっ…押します!」
「は!?マジ!?やめなってジェイド!」
「ぴぃさんのためです!」
「誰も『ぴぃさんのため』なんて言ってませんが?」
ぽち!
意を決してそれを押したジェイドは、それでも何が起こるのかという好奇心から目をぱちぱちと瞬かせる。
異変が始まったのはすぐだった。
ジェイドの周りをキラキラしたものが舞い始めたと思えば、服が、糸が解けるようにしゅるしゅると脱げていくではないか。
「おや」
「おや、じゃねぇええ!」
「ジェイド、お、お前服が!」
消えてゆく服を止めることはできない。存外勢いよくなくなっていく服を眺めながら、『なかなかよい解放感ですね』などと述べるジェイドは強者だった。そして残す下着も消えてしま…うと思われた瞬間。どこからともなくチィン!という音が鳴り、それに合わせてぴぃが飛び跳ねたおかげでジェイドのナニが露出するのは避けられた。
ジェイドの寮服の代わりに現れたのは、どこぞのスーパーヒーローのようなアーマースーツであった。ご丁寧にチョウザメの鱗柄がついていて強そうだ。
スーツカラーは髪の色に合わせたのか、シーグリーン。顔は上半分を黒の半透明なゴーグルでおおっている。
それからジェイドの背丈ほどある光線銃を背中に背負って、それに気づくとすぐさま構えてみたジェイドは何だか満足そうである。
「これはこれは…思った以上ですね」
「うわっすげっ!」
「この生命パワー、一人で使うには勿体ない…!皆さんのも改造するわよ~!」
「は?」
「ちょ、」
「えーい!」
ビビビと打ち込んだ光線は的確にアズールとフロイドのマジカルペンに当たり、それらにもボタンがつく。
こうなったら仕方がない、と、フロイドも腹を括り変身。それを見たアズールも、何故か遅れをとるまいとボタンを押したのであった。
「あ~~~~もうなんか本当あれだな、オレなにしてんの……」
「ウ、ウワァっ!!」
「アズール隠すとこちげぇだろ」
「わっあっ、ぬげっ、みえ、」
どこを隠すこともしないフロイド。身体をくねらせて必死で隠そうとするアズールも無事アーマースーツを身に纏う。
変身完了!と満足そうに言う女と、自らの恰好を見る三人の間に、不思議な空気が漂った。
「思った通り!ジェイドさんもフロイドさんもとても強そうだわ!その光線銃はね、あなたのスケベ魂よ!」
「あーーーーーーーーやっぱりそういうことかよ形状がなんかそれっぽいもんねほんとヒトデちゃんの星やべぇよ!!!!!!!!」
「アズールさんのは…可愛いわね!お二人に比べたら小型銃なのね!」
「…?」
「あ~~アズールは意味わかんないままでいーよー」
変身し終わってそろってみれば、なかなかヒーロー面になるのだから面白い。
他の寮生たちは散り散りになっていたので、残っていたのは三人だけだったのが幸いだ。
すなわち「やっぱりリーチ兄弟に比べると…寮長の、小さいんだな」とそう思われることは避けられた。
余談だが、別にアズールのソレが特別小さいわけではない。単純にリーチ兄弟に比べるとそう見えるだけだ。
「貴方達!PYOMAと戦うために力を貸して!お願いよ!きっと勝てるわ!」
「魔法が役に立たない戦いですか。こうなると俄然興味があります」
「乗りかかった船です。これも慈悲の心というもの。貴女の力になりましょう」
「オレは興味ないけど~、ジェイドとアズールがやるならいーよー」
「わぁ!ありがたいわ!」
「あ、一ついいですか?」
スッと手を挙げたのはジェイドだ。
皆が不思議な顔をしてジェイドの方を見ると、ジェイドは愛おしそうにぴぃを抱き上げて言った。
「ぴぃさんにあんなことやこんなことをするのは僕だけにしていただかないと困りますが、そこは大丈夫ですね?」
「「大丈夫に決まってる!!!!!!」」
キィン。大きな声が寮内に響き渡った。
「てかさぁ…、割といい時間じゃね?そろそろ眠ぃ」
「ああ、たしかにそうですね。では僕とぴぃさんは」
「ジェイド、お前もうオレたちの部屋で寝んな!そいつ連れてくんなら出禁だかんな!」
「おやおや悲しいことを…。では、アズール、緊急事態なのでゲストルームを貸し出していただけますね?」
「あ、ああ、それは、そうだな………」
「んじゃあヒトデちゃんはぁ?ジェイドいないからオレんとこくる?」
「え、私は」
「彼女は僕の部屋にご案内します!!!!!!!!!」
その言葉にきょとんとしたジェイドとフロイドが、にんまり笑う。
「へぇ~?アズール本気なんだ?」
「アズールにできるんでしょうかねぇ。『スケベパワーにつながること』が」
「ぼ、僕は別に!そういうのを気にしているわけでは!ほら貴女!行きますよ!」
「え、わ、」
どうあがいても譲りたくないようだったアズールに連れられて、女は寮長室へ引きずられていった。
「ジェイドさぁあんぴぃちゃんをよろしくお願いしますうううう!!」
「はい、お任せください」
「あとそのスーツ!もう一回スイッチ押せば戻りますからぁ~おやすみなさい~~」
「よくできてんな~」
そうして初めての夜は更けてゆく。
果たして、アズールはスケベパワー貯蓄に貢献することができるのだろうか。