紅茶と角砂糖と、それから
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『いつも応援してくださるファンの皆様へ感謝の気持ちと愛を込めて
https://***********
《QUARTET NIGHT with co.》』
5月23日18時頃にシャイニング事務所の公式ホームページ及び期間限定公式Twitterに投稿された一本の動画。
サムネイルの画像は真っ暗でURL先に飛ばないと内容が全く分からないようになっている。
予告もなく投稿された謎の動画にファンは突然の供給に驚くと共に、謎過ぎるがゆえにURL先に飛ぶことを戸惑う者も居たがそれはすぐに解消された。
「怖くて見てないひと、早く見て」
「私達からは何も言えないからとりあえず見て」
「大丈夫、待っているのは感謝だけだ」
「イヤホン必須!」
謎の動画にも関わらず推しからの供給だからと恐れずに再生したファンからの怒濤のとりあえず見てくれ!ツイートにより、戸惑っていた者もイヤホンをして動画を再生した。
*******▶️*******
5秒ほどサムネイルと同じ真っ暗な画面が続き、パッと画面が明るくなり会議室のような一室が写し出された。
カメラの位置からして机に置かれているらしい。
これから何が起こるのか未だに分からないファンは固唾を呑んで動画を眺める。
ぴょこっ
突然机の向こう側から出てきたのは寿嶺二──────────のパペット。
れいじくん人形を小さくしたようなデフォルメされたパペットは周りをキョロキョロするような仕草をしたのちカメラを見つけた。
「マイガール!マイボーイ!」と大きく手を振ったと思ったら両手を口に持っていき「んまっ♡んまっ♡」と投げキッスし始めた。
ちなみに動きに合わせてセリフが字幕で表示されている。
『みんな元気にしてるかな~?……うんうん!嶺ちゃんと会えなくて寂しい?嶺ちゃんも皆と会えなくて寂しいよぉ~!』
『最近はお仕事もお休みが多いからおうちで普段できないことをしてるよ!沢山からあげを揚げたりとかね☆』
身ぶり手振りを加えながら話すパペットにファンも笑みが溢れていく。
音声は一切入っていないのにまるで本人がそこにいるかのよう。
そしてこのパペット、やたら動きがいいのだ。
パペットは三本の指を上手く動かしながら、人形が動いているかのように表現する遊びである。ただ単に動かすだけでなく、そこに加えて寿嶺二感を出すのは容易いことではないはず。
ファンは中の人が気になりつつも内容を見逃さないように、画面に食い入った。
『皆も気になっていると思うから本題にはいるよん☆今日はキスの日って聞いたから、この動画はいつもぼくたちQUARTET NIGHTを応援してくれるファンの皆へ、ぼくたちからのプレゼント!』
パペット寿はバキュン♡と効果音をつけながら
手銃の代わりに指を上げた。
そして帽子を押さえるように俯く仕草をしたのち、
「アチチなキスを君にあげる……ポワゾンKISS」
突然耳元で再生された寿嶺二の甘いボイス。
一瞬のことでなにが起きたのか分からないファンをそのままに動画は再生されつづけている。
さっきまで会議室のような部屋にパペット寿がいた画面は4分割され、レコーディングルームでヘッドフォンをしている四人が映っている。
そして流れたのは聞き覚えがありすぎるイントロ。
しかし所々既存のCDとは違うメロディのそれにファンは更に戸惑った。
大人の色気を全面に出した、既存のCDとはまた違った毒性の強い歌声。
じわりじわりと全身に回る甘い毒はサビが終わったあと、一気にトドメを刺した。
サビまでとは打って変わって、バラード調にアレンジされたメロディを優しくピアノが奏でている。
そして「愛している」の台詞と共に耳元で響くリップ音。
なんだなんだと耳を澄ませていたファンはひゅっ……と一瞬息が止まり、次の瞬間には全身に毒が勢いよく回った。
四人分の毒は動画を再生していた者の心臓を掴み離さなかった。
「~♪……QUARTET NIGHTより愛を込めて」
いつの間にか曲が終わりカメラに向かって手を振ったり、お辞儀をする彼らが写し出されている。
そして画面はまたパペット寿と会議室に戻り、締めの挨拶をして再生は終わった。
再生時間は約10分。
のちにファンの間では「伝説のキスの日」として語り継がれている。
***********
「キスの日かぁ」
ん~、と伸びをしたいたら思っていたことがポロリと出てしまった。
先ほどまで作業していたPCの画面には公式Twitterに投稿されたツイートが映し出されている。
ファンに向けたメッセージと共に動画のURLが乗ったそのツイートは穂花が投稿したものだ。
次々といいね、RTの数が増えていくのをボーッと眺めながら、企画の発端を思い出す。
自粛生活が続くなか、どうにかファンに元気を届けたいと意見を出し合った結果、近場のキスの日に何かサプライズを仕掛けることになった。
せっかくのキスの日なんだから、曲はポワゾンKISSにしよう。なんならアレンジを加えるのもいいんじゃないか、とテレビ電話を繋ぎながら打ち合わせを行ったのは一週間前のこと。
それから曲のアレンジ、レコーディング、動画の撮影と編集をして今日に至る。
ちなみにあのパペット嶺二は前に事務所のビンゴ大会で当たった非公式のれいじくんグッズだ。
自粛生活が続いているためカミュと会うこともない。
いくらリモートで顔を合わせているとはいえ、実際に会いたいし抱き締めてほしい。欲を言えばキスだったしたいのだ、恋人なのだから。
PCを閉じて寝室のベッドに倒れ込む。
ひんやりした枕が気持ちいい。
暫く枕に顔を埋めた後、スマホを取り出してロックをする。
メッセージアプリを開いて一番上の人物とのトーク画面を開いた。
10文字にも満たない言葉を打ち込んで送信する。ちゃんと送れたことを確認してから、また画面を落とした。
ゴロリと横向きになって目を閉じる。
「……早く会いたい」
そのまま寝てしまった私はまだ知らない。
少し後にメッセージアプリの通知がきていたことを。
「俺も会いたい気持ちは同じだ。
会えなかった分、嫌と言っても構ってやるから覚悟しておくんだな。」
QUARTET NIGHT with co.
QUARTET NIGHT with computer.