鬼の嫁入り
「あ、初めまして!お嬢様・・・!俺はスンヒです!突然ですが、今日からお嬢様の姉でございます・・・!!」
妹「姉?」
ガ「そうなんだ。チャンミンの花嫁なんだ。彼女。」
妹「花、嫁・・・?お兄ちゃんが言ってた?」
ハ「そうなんや。お兄ちゃんの運命の相手なんや。」
お嬢様は無言のまま、俺の事じっと見つめていた。
そりゃ、そうだよな・・・。見た感じお兄ちゃんッ子だし、大好きなお兄ちゃんに取られて、ショックを受けるのはわかって・・・。
妹「嬉しい!!」
だろうな・・・。ん?え・・・!?
ハ「よかったね!アキ!ずっとお姉ちゃんが欲しかったやもんな~?」
ア「うん!え?ていうことは婚礼の儀はもう終わっちゃったの?」
ガ「そうなんだ。バカ息子が急に花嫁が現れたって言って、寄越してきたの婚礼の儀の2日前だったから。その時、メール送ってきてなかったの?」
ア「送ってこなかった~・・・。お兄ちゃん、連絡してくれたらいいのに・・・。あ~ぁ、見たかったな~・・・。」
ハ「そう言うと思って、スンヒちゃんのチマチョゴリ姿を撮ったんや~!」
ア「うわぁ-!!さすがママ!!」
お義母様はいつの間に持ってた写真をお嬢様に見せていた。
「あの・・・、この子が、お嬢様・・・?」
ガ「そうだよ。僕の一族で初めての女鬼だから。」
「あ、じゃあ今まで男鬼ばっかりだったってことですか?」
ガ「そうなんだ。」
チャ「ただいま・・・って、アキ?」
するとチャンミンが帰ってきた。
ア「お兄ちゃん!ただいま!!」
チャ「お、おかえり・・・。ていうか、今日だったんだ・・・。」
ア「それにしても、お兄ちゃんひどいよ-!花嫁見つかって、私の知らない間に婚礼の儀を済ますなんて-!!」
チャ「あ、あー、ごめんごめん。伝え忘れてた・・・。」
ア「もう-!!忘れたで済む話じゃないでしょ!?」
お嬢様はプンプンと怒り、チャンミンの胸をポカポカと叩いた。
ガ「それより、スンヒちゃんは身重だから、あんまり無理しないでね。」
ハ「そうやで!俺たちにとって初孫やから!」
「あ、はい・・・。」
ア「え!?初孫・・・?もしかして、赤ちゃんがいるの?」
チャ「そうだよ。スンヒは今、僕の子供を妊娠してるんだよ。アキにとって甥っ子か姪っ子になるんだよ。」
ア「え!?甥っ子か姪っ子・・・!?やった-!!赤ちゃん、楽しみ-!!」
お嬢様は嬉しそうにピョンピョンとジャンプして、跳ね上がっている。
えーと・・・、チャンミンは中身がお義父様似で、お嬢様は中身がお義母様似かな・・・。
その後、ずっと「お嬢様」と呼び方が気に入らなかったのか、名前で呼んで欲しいと「アキ」と呼ぶことにした。
2ヶ月が経ち、お腹も少し膨らみ、妊娠6ヶ月ぐらいの大きさになった。チャンミンは忙しいのにもかかわらず、俺をサポートしてくれている。
「あの、お義父様・・・。」
ガ「なに?」
「その産婆さんも鬼なんですか?」
ガ「そうだよ。この村で数人だけ。僕が生まれた時、チャンミンやアキが生まれた時と同じ産婆さんだよ。」
「この村では自宅出産って当たり前なんですね・・・。」
ガ「そうだね・・・。村のほとんどが自宅出産だよ。」
「俺たち人間は、病院とかで出産するから・・・。自宅出産は初めてで不安があります・・・。」
ガ「同じ事言ってるね。ハイドの時と。」
「え・・・?お義母様も・・・?」
ガ「うん。君と同じぐらいの年の時にそう言ってた。けど、ここの産婆さんは優秀で今まで何百人の鬼を取り上げたから、無事に生まれてくる。だから、そんなに不安にならないで。」
「は、はい・・・。」
出産への不安は落ち着いたが、もう1つの不安があった。
それは姉さんとじいちゃんとばあちゃんだった。
家を出てから2ヶ月過ぎ、家も帰っていない。アイツらはどうでもいいけど、3人だけは心配だった。
チャ「どうしたんですか?」
「あ、チャンミン・・・。」
俺が姉さんとじいちゃん、ばあちゃんを心配しているとチャンミンに話しかけられてきた。
チャ「元気ないですから。心配で・・・。」
「あ-、ごめん・・・。ちょっと心配してただけ・・・。」
チャ「心配?もしかして、出産のことですか・・・?」
「いや、出産の心配はなくなったからいいけど、姉さんとじいちゃん、ばあちゃんが心配で・・・。」
チャ「お姉さんと、おじいさんとおばあさん・・・?」
俺は味方である姉さんと母方のじいちゃんとばあちゃんのことを話した。
チャ「そうですか・・・。それは心配ですね・・・。」
「あぁ。俺が鬼の花嫁になったって言うのが怖くて・・・。チャンミンが俺を誘拐して、無理矢理子供を孕ませたと勘違いしそうで怖いんだ・・・。」
チャ「・・・わかりました。ちょっと、部屋に戻りますね。」
「え・・・?」
チャンミンはそう言うと振り向かず、部屋に戻っていった。
俺、まずいことでも言ったか・・・?違う・・・!!違うのに・・・!!
俺はチャンミンを追いかけようとしたが、体が金縛りがあったかのように動けず、チャンミンの背中を見つめるしかなかった。
だが、その翌日、俺の目の前にずっと心配していた姉さんとじいちゃん、ばあちゃんの姿があった。
続く
設定
アキ
15才。鬼の長の娘。チャンミンの妹。海外留学から帰ってきた。
容姿はツインテールをした黒髪に鬼の証しである赤い瞳を持った美少女。
性格はいつもニコニコしていて、甘え上手で明るく前向き。
鬼なのに天使のような存在。
一族で初めての女鬼だったこともあり、甘やかされて育てられたが、優しい心を持ち、鬼の里の人達から愛されている。
モデルはとき宣のあきちゃん。
