鬼の嫁入り


婚礼の儀から1週間後のある日、チャンミンがいつものように俺を抱こうとしたが、何故か止まってしまい、

「どうした?」
チャ「明日、産婆の所に行きましょう。」
「え?」
チャ「もしかしたら、あなた、妊娠してるかもしれません。」
「・・・え、ええぇぇーーー!!??」

チャンミンの言葉に俺は頭の整理が追いつけなかった。

「ちょっと待てよ!妊娠!?俺が・・・!?」
チャ「はい。」
「なんで分かるんだ!?」
チャ「あなたのお腹に命の音が聞こえたんですよ。」
「え!?そうなのか!?全然気配がないけど・・・。」
チャ「僕たち、鬼の一族は耳が良いのでお腹に子供がいるって言う音も聞こえるんですよ。」
「そ、そうなのか・・・。」

翌日、俺たちは産婆さんの所に行き、

産「若頭、おめでとうございます。ご懐妊だ。」
チャ「~~~!!や、やったーーー!!」
「ちなみに予定日とかはいつですか・・・?」
産「9月頃でしょ。」
「えぇ!?く、9月!?」

今、3月だから・・・。半年後・・・!?

「早くないですか?」
チャ「鬼としては当たり前ですよ。妊娠して半年後に出産するんですよ。」
「人間だと10ヶ月後だけど・・・。鬼と人間って違うだな・・・。」

チャンミンが里の皆に俺が妊娠したと伝えると一気にお祝いムードだった。

その日の夜・・・、俺は妊娠の不安で眠れなくなり、屋敷の庭の縁側に座り、夜風を浴びていたその時、

ハ「どうしたん?」
「ッ・・・!?」

後ろを振り向くとお義母様が立っていて、「風邪引くで。」と俺にブランケットを掛けてくれ、俺の隣に座った。

ハ「不安?突然の妊娠に。」
「は、はい・・・。」
ハ「俺も最初に来たばっかりの時もそうやったんや。半年後に出産やなんてって・・・。」
「お義母様もですか・・・?」
ハ「うん。なんだってチャンミンを産んだの16の時やったから。こんなに若くして出産するなんて夢にまで思わへんかった。スンヒちゃんと一緒、産まれるまで不安で仕方なかった。

けど、産んでみたらすごく可愛くて、がっちゃんも頭領の仕事が忙しいにもかかわらず、ちゃんとチャンミンの面倒とか見てくれてたし、この人が俺の夫でええのかなって考えた時期もあった。」
「・・・。」
ハ「あ!チャンミンの他にもう1人子供がおるんや。スンヒちゃんにとって義妹に当たる。今は留学中でおらへんけど、明日には帰ってくる。明日はがっちゃんと一緒にお迎えに行くんや。」
「義妹ですか・・・。」

どんな人なんだろう・・・。ちょっと不安だな・・・。

ハ「スンヒちゃん、まだ来て2週間ぐらい経つけど・・・、1人で抱え込まないで、いつでも、俺に相談してええからね。ここの里の人達は優しくて、こんな俺でも受け入れてくれた。わからなかったら、チャンミンかがっちゃん、里の人達に聞いてええからな。」
「・・・はい!」

翌日、お義父様たちは空港に行き、チャンミンは若頭としての仕事で今は不在中。

けど、ここに来てから2週間ぐらい経ったけど・・・、たまにチャンミンと一緒に散歩に行くけど、男性と女性、子供はいる・・・。けど、どれも赤い瞳で鬼ばっかり、人間とかいないのか・・・?

「なぁ、ユリ・・・。」
ユ「なんでしょうか?」

俺のお世話係のユリに話しかけた。

「ここって、俺とお義母様以外の人間っていないのか?」
ユ「あー、そうですね。人間は奥方様と花嫁様だけです。鬼の一族と人間の結婚は基本、略奪婚なんです。それも突然の・・・。」
「鬼同士の結婚とかはあるよな?」
ユ「はい。基本はそうです。けど、人間は子供が生まれ、子供を産むとほとんどが街に帰っちゃうんです。」
「そ、そうなのか?」
ユ「はい。さっき言ってたとおり、鬼の一族と人間の結婚は略奪婚。だから、子供が生まれ、子供を産むと帰らせてって言う人が結構います。子供の成長も早いですし、

後は街に戻りたいって家族全員で街に引っ越しちゃう人もいます。ここに残る人間ってあんまりいないんですよ。」
「そうなんだ・・・。」

じゃあ、子供を産んだら、俺は用済みってなるわけか・・・?

ユ「けど、安心して下さい!若は花嫁様一筋なんですよ!」
「え?」
ユ「若は花嫁様を見初めてから、他の人間の女性とか興味なしなんですよ!他の女鬼とかも!

花嫁様が持ってる赤い石は鬼の一族が代々受け継がれている、赤い石で2つあるんですけど、もう1つは運命の人が見つかったら、その相手に渡すという慣習なんですよ!」
「運命の、人・・・?俺が?」
ユ「はい!だから、そんな悲しい顔をしないで下さいよ!」
「ッ・・・!?」

ば、バレてた・・・?顔に出てた・・・?

使用人「お嬢様のお帰りでございます!」
「ッ!!」
ユ「お、お嬢様!?あ、そういえば今日は帰って来る日だった・・・!!」
「忘れてたのか?」
ユ「はい・・・。」

俺たちは急いで、お義父様とお義母様、帰国したお嬢様を出迎えた。

使用人頭「おかえりなさいませ!旦那様、奥方様、お嬢様!」
使用人一同「「「おかえりなさいませ!」」」
「お、おかえりなさい・・・。」
ガ「ただいま。」
ハ「あー!スンヒちゃん!妊婦やから、立っちゃあかんのに~!」
「あ・・・。すみません・・・。」

俺はお嬢様がどんな人かチラって見るとツインテールにしたお義父様譲りの黒髪に鬼の一族特有の赤い瞳、大きな目に外国の血が入ってると思われるハッキリとした顔立ちをしている美少女が立っていた。

続く
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