偽装結婚 ~愛を信じない同士の偽りという契約~
ガクトside
竜「うわ!ちょっ・・・!!痛ッ・・・!キャー!!」
僕はたっちゃんの悲鳴と何かの食器の音で目が覚めた。
な、なんだ・・・?
僕は何事かと思い、起き上がり、ベッドから降り、キッチンの方に行くと、キッチンの前にヒヤヒヤしながら、何かを作っていたたっちゃんの姿があった。
「何やってんの・・・?」
竜「あ!がっちゃん、おはよう、ございます・・・!」
「おはよう・・・。」
竜「起こしちゃいましたか・・・?す、すみません・・・!!寝てたのに・・・!!起こしてしまって・・・!!」
「いや、ちょうど目覚めた所だよ。後、何やってんの?」
竜「あー、結婚したから、ご飯作るのが奥さんの役目だと思って、朝ご飯作ってたんです・・・。」
たっちゃんは気まずいのか、僕の顔を見ず、目を逸らしながら言った。
「そうだったの・・・?それで、こんな無様な様子?」
竜「ご、ごめんなさい・・・!!がっちゃんの家のキッチンなのに、めちゃくちゃにしてしまって・・・!実は、私、料理したことなくて・・・。」
「え?」
竜「変ですよね?女の子なのに、料理ができないって・・・。けど、本当に苦手で・・・。」
よく見るとたっちゃんの両方の指には所々、絆創膏が貼ってあった。それ見た僕は罪悪感を覚えた。
僕のために、わざわざ・・・。
「いいよ。怒ってないよ。たっちゃんには悪いけど、僕、1日1食しか食べないんだ。」
竜「え!?」
「言ってなかったけど、夜しか食べないんだ。でも、先に言わなかった僕が悪いけど、わざわざ僕のために、努力して、作ってくれてるのは感謝しているよ。たっちゃんの努力を無駄にしてしまって、本当にごめんね・・・。」
竜「い、いえ!いいんですよ・・・!!私が勝手にしただけですし・・・!!」
たっちゃんには、無理をさせたくない、僕のために、こんなに痛々しい指をしてまで・・・。よし・・・!!
「今度から、僕が作るから。」
竜「え!?」
「僕、一応料理できるんだ。メンバーにも振る舞ったことあるし。今度から、たっちゃんのご飯は僕が作るから。」
竜「そ、そんな!がっちゃんだって、忙しいですのに、無理しなくていいですよ・・・!!それに、がっちゃんの分までのご飯とか・・・。」
「いいよ。僕には専属のシェフがいるから。」
竜「せ、専属のシェフ・・・!?」
「僕、お米を食べないから。食事のメニューは大体、僕なりに決めてあるんだ。」
竜「そ、そうなんですか・・・。」
たっちゃんは僕の話を聞いて、犬が耳を垂れたようにシュンとなった。
かわいいな・・・。飼い主に怒られてシュンとなった犬みたいで・・・。
「そんな顔しないで。たっちゃんの指を見ると、無理をさせたくないって思うんだ。僕のために、作ってくれてありがとね。気持ちだけで十分だから。」
竜「がっちゃん・・・。」
少し不器用な所がある彼女だけど、守りたくなるほど愛おしい・・・。
契約結婚して1ヶ月が経ったある日、今日は音楽番組の収録だった。
今日はラルクと共演って言うのが憂鬱だった。僕を捨てたハイドに会うのが。
挨拶だけで済まそうと思ってたけど、現実はそうはいかなかった。
ハ「あ!がっちゃん!久しぶり!」
「ッ!!ハイド・・・。」
ハイドだけじゃなく、ラルクのメンバーとバッタリ会った。
「ハイド、久しぶり・・・。」
ケ「なんや、宇宙人やないか。」
ユ「久しぶりだね。」
テ「共演は初めてやな。」
「久しぶり。ていうか、宇宙人ってあだ名、やめてくれないかな?」
ハ「そうやで、ケンちゃん。」
ケ「だって、素性もわからなくて、謎が多いから宇宙人ってあだ名にピッタリやないか!」
テ「こらこら!」
テツくんはケンくんの頭を強くはたいた。
「そういえば、ハイド。旦那さんとは上手くいってる?」
ハ「うん。子供が生まれてから、愛妻家、親バカになったんや。付き合った頃はギクシャクしてたけど、結婚してから丸く収まったんや。がっちゃんが色々と話してくれたおかげで。」
「・・・そうなんだ。」
僕はハイドの幸せそうな笑顔を見て、胸が痛み、それと同時に恨めしく思った。
なんで、幸せそうに笑うんだ・・・?僕のおかげ・・・?ふざけるなよ・・・。君が裏切ってから、ずっと、恋愛できなくなったんだ・・・。君のせいで・・・!!
僕は拳をグッと握りしめながら、心の中で恨み節を言った時に、
?「う、上田・・・?大丈夫か・・・?」
と声の方に向くと、男女の6人組がいて、その中で見覚えのある栗色の髪をした女の子がいた。僕はたっちゃんだとすぐにわかった。たっちゃんはふらついて、倒れそうになった時に僕は咄嗟に駆けつけ、たっちゃんを支えた。
「大丈夫?たっちゃん。」
上「が、がっちゃん・・・?」
?「えぇ!?ガクトさん・・・!?」
?「マジで!?」
たっちゃんのメンバーは僕を見て、当然、驚いていた。
僕は気にせず、たっちゃんを支え、体勢を立て直した。
「大丈夫?たっちゃん。」
竜「あ、はい・・・ちょっと、立ちくらみがしただけで平気です・・・。ありがとうございます・・・。支えてくれて・・・。」
「いいよ。平気だったらよかった。何かあったからと思って、ヒヤヒヤしたよ。」
竜「すみません・・・。」
?「あ、あの~・・・。」
恐る恐る聞いてきたのは、鼻が大きい、地味な子だった。←
「何?」
?「あぁ、すみません・・・!俺、上田と同じグループの中丸と言います・・・!」
「中丸くんね。珍しい名字だね。」
中「いえ、そんな・・・。そうじゃなくて、上田と、どういう関係ですか・・・!?」
「え?たっちゃん、言ってないの?」
竜「すみません・・・。忙しすぎて、報告する暇がなかったんです・・・。社長にも言ってないですし・・・。」
「そうなんだ。あー、実は僕たち、夫婦なんだ。」
KT「「「え・・・?」」」
竜「実は、私、1ヶ月前に、結婚したの・・・。ガクトさんと・・・。///」
KT「「「え、えええぇぇぇ!!??」」」
たっちゃんのメンバーは結婚宣言に叫びはテレビ局内に響き渡った。僕は同時にチラッと後ろを見ると僕を追いかけに来たハイドは話を聞いていたのか、目を見開いていた。
これはちょうど良い機会だ。
?「あ、私、亀梨 和美と言います!本当なんですか・・・!?」
「本当だよ。一目惚れしたの僕の方だから。」
?「意外です・・・。あ、俺、田口 淳之介です。」
?「田中 聖と言います。上田が結婚か・・・。とりあえず、おめでとう。」
竜「ありがとう。聖。」
他のメンバーが紹介するなか、たっちゃんを呆然と見ている男の子がいた。
?「・・・あ、赤西 仁っす。ガクトさんは上田のどこに惚れたんっすか?」
「そうだね・・・。一緒にいると安心感があるし、気を使う所とか、他の人には見せない繊細な所、努力家で一生懸命な所、そして、何より笑った顔がかわいい所が。」
竜「ッ・・・!!///」
僕はたっちゃんの肩を寄せて、惚れた所を正直に言った。
これは演技じゃなく、本当のこと。出会って、結婚して1ヶ月も経ってないのに、1つ1つ魅力的な所を見つけ、何よりも笑った顔が一番の魅力的。
赤「そ、そうなんすか・・・。」
「たっちゃんはここで仕事?」
竜「はい、音楽番組の収録です!がっちゃんもですか?」
「うん。違う音楽番組のね。そうだ、たっちゃん、この後予定は?」
竜「この音楽番組だけで、終わりですけど・・・。」
「そうか。僕もそうだよ。今日の晩ご飯、僕の行きつけのお店なんだけど、たっちゃんの大好物のたこもある店なんだ。」
竜「たこ!?行きます!!」
「了解。じゃあ、僕は戻るから。仕事頑張ってね。皆もたっちゃんのこと、これからもよろしくね。」
KT「「「は、はい・・・!!」」」
僕は自分の楽屋に戻ろうとした時に、まだハイドがいた。
ハ「結婚って、ホンマなん・・・?」
「本当だよ。1ヶ月前に入籍したんだ。」
ハ「そ、そうなんや・・・。おめでとう・・・。」
「ありがとう。じゃあ、僕は楽屋に戻るから。」
ハイドは何故か気まずそうな感じだったが、僕はそんなことを気にすることなく、楽屋に戻った。
たっちゃんがいてくれたおかげでスッキリしたな・・・。あの、ハイドの顔・・・。少しぐらい仕返ししたってバチは当たらないよね・・・。
僕は胸のつかえが不思議となくなり、足取りが軽くなり、気分良く楽屋に戻り、そのおかげか本番も順調に終わった。
