偽装結婚 ~愛を信じない同士の偽りという契約~


あれからの私たちは結婚していることを公表し、結婚して1年目に結婚式を挙げ、結婚2年目、私は第一子である、元気な女の子を出産。

ガ「あー、なんて、可愛らしいんだ。」
「記念すべき、第一子の誕生ですね。名前とかは決まりましたか?」
ガ「うん。決まったよ。もし、子供が生まれたら「雪」がつく名前がいいと思っていたんだ。」
「雪・・・?」
ガ「君が弾かせてくれた曲、「ETERNAL SNOW」を聴いて、思っていたんだ。」

がっちゃんは私に紙を渡された。そこに書いてあったのは「美雪」という二文字だけの紙だった。

「美雪・・・?」
ガ「うん。曲を思ってつけたのはもちろん、冬の寒さの中で美しく輝く雪のように、厳しさの中でも自分をしっかり持った凛とした女性になってほしいんだ。過去の僕たちみたいにならないように・・・。」

がっちゃんが娘を思って、ちゃんと意味を持ってくれた事で私は何よりも嬉しかった。

「いいですね・・・。私も賛成です・・・!!」
ガ「じゃあ、決定だね。美雪、生まれてきてくれて、ありがとうな。」
「これからもよろしくね。」

契約結婚から19年が経ち、美雪は今年で高2になる。

17歳になった娘の美雪は、鋭くも気品のある目元はがっちゃん譲りだけど、

がっちゃん曰く「たっちゃんの透明感のある美しさと愛くるしい笑顔は完璧に受け継いたんだね。」と言っていた。

所謂、両親のいいとこ取りで、我が娘ながら、誰もが振り返るような美少女へと成長した。

私たちはいつものようにあの曲を弾いていた。ピアノの演奏を終えた私と隣でバイオリンを置いたがっちゃんと微笑み合っていると、学校から帰ってきた美雪が不思議そうな顔で口を開く、

美「ねえ、パパ、ママ。またその曲? 本当に好きだよね、『ETERNAL SNOW』。」
ガ「(クスクスと笑いながら)僕たちにとって、世界で一番、大切な曲だからね。」
「そうなの。この曲がなかったら、今の幸せはなかったかもしれないんだから・・・。」

美雪はソファーに座り、ふと何かを思い出した。

美「そういえば、ヤヨイおばさんから聞いたんだけど、パパとママって、元々『親戚』だったって本当?」
「えっ!? あ、あー・・・。そうか、言ってなかったよね?」
ガ「隠してたつもりはなかったよ。ただ、言うタイミングがなかったんだよ。僕からしたら、たっちゃんは従兄の娘でたっちゃんからしたら、従兄弟の叔父さんなんだよ。」

美雪は驚きのあまり、持っていたスマホを落としそうになった。

美「つまり・・・、少し遠い親戚?嘘でしょ!?パパは親戚の集まりでママをナンパしたってこと!?」
ガ「違うよ。知ったのは結婚してからなんだよ。僕、親戚の集まりとか全然、行かないから、当然、知らなかったよ。」
「私も。けど、最初は『契約結婚』から始まったんだけどね。」
美「『契約結婚』・・・!?ちょっと待って、情報量が多すぎるんだけど・・・!!」

美雪はパニクりながらも、どこか嬉しそうに目を輝かせました。

美「でも・・・、なんか納得した。パパがママにベタ惚れなのは・・・、最強の『運命の二人』だったんだね。」
ガ「そうだよ。美雪が生まれてきてくれたのも、その運命の結果だ。だから、パパはママのことも美雪のことも、命がけで守るって決めてるんだ・・・。」

がっちゃんは堂々と美雪の頭を撫でながら、優しい笑顔で言った。
19年前と変わらないその言葉に、また胸を熱くなり、たとえ「親戚」という縁があったとしても、私たちが築き上げてきたのは、血縁を超えた、唯一無二の深い愛だった。

その夜、美雪が自分の部屋へ戻った後、私たちはコントロールルームのキーボードの前に座った。

時代は変わり、19年前のガラケーはスマホに変わったけど、私たちの指にはあの時選んだ結婚指輪が、19年の月日を経て、さらに馴染んだ輝きを放ってるように見える。

「美雪に言っちゃいましたね、契約結婚のこと。(笑)」
ガ「いいじゃないか。僕たちの物語は・・・、そこから始まったんだから・・・。」

がっちゃんがそっと鍵盤を叩き、切なくも温かいイントロが流れる。外では夜空からは静かに雪が降り始めた。

♪ Hold me tight こんな思いなら……

19年経っても、この曲を聴くたびに二人はあの日を思い出す・・・。愛を信じなかった私が・・・、絶望の中で出会い、嘘から始まり、また、愛を信じられるようになり、本物の家族になったあの奇跡を・・・。

ガ「愛してるよ、たっちゃん。・・・20年目も、その先も、ずっと・・・。」
「私も・・・、愛してます、がっちゃん・・・。」

降り積もる雪のように・・・、私たちの愛はこれからも静かに・・・、そして、永遠に積み重なっていくのだった。

終わり
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