偽装結婚 ~愛を信じない同士の偽りという契約~


ガクト side

2ヶ月後、僕たちはは約束通り、京都へ向かった。観光名物とかもたくさん見て、名物のご飯も食べ、喧騒を離れた、奥貴船の静かな旅館。川のせせらぎだけが聞こえる、離れの部屋で僕たちは隣同士に座った。

「たっちゃん・・・。あれから、赤西くんとは?」
上「ずっと、口を聞いてません・・・。仕事ではちゃんと対応はしてますけど・・・。がっちゃんに対しての悪口でつい、カッとなってしまって・・・。」

と俯きながら、そう言ってた。

赤『あの人じゃ、上田を幸せにできねぇかもしれないって・・・。』

確かに赤西くんの言ってる事は嘘じゃない・・・。けど、たっちゃんは僕の事を庇ってくれた事が何よりも嬉しかった・・・。

最初は契約から始まった結婚だったけど、たっちゃんと一緒にいるにつれて、真っ直ぐな所と一生懸命な所、純粋で可愛らしい笑顔に惹かれ、離れたくない自分がいる・・・。もう、自分に嘘はつきたくない・・・。

「・・・嬉しいよ。でもね、たっちゃん。赤西くんが言ったことも、半分は当たってるかもしれない。」
上「え?」

僕の言葉に俯いてたたっちゃんは顔を上げ、僕を見た。

「僕は不器用だし、完璧な人間じゃないし、きっと普通の『旦那さん』にはなれない。君に寂しい思いをさせることもあるかもしれない。・・・でも、これだけは誓うよ。」

僕はたっちゃんの左手をそっと取り、指輪が月明かりに照らされて、静かに光っている。

「僕は・・・、僕の全てをかけて、君を幸せにする。・・・契約だからじゃない。僕は君と・・・、一緒にいたいから。これ以上、君が悲しみで泣く姿を見たくないんだ・・・。」

僕がそう言うとたっちゃんの瞳が、また潤んでいく。でも、今度は悔し涙でもなく、悲しい涙じゃない。

上「私、ずっと、思ってたんです・・・。一緒にいればいるほど、がっちゃんを好きになっていく自分がいて、けど、これは「契約」だからと勘違いしちゃダメって言う自分がいて・・・、ずっと、胸が痛かったんです・・・。私も、貴方と一緒にいたいです・・・。」

僕はそんな彼女を愛しく思い、彼女を引き寄せ、彼女の唇に自分の唇を重ねた。

上田 side

京都旅行から戻った翌晩。がっちゃんは机の奥からあの一枚の「契約書」を取り出した。

ガ「たっちゃん、これ・・・覚えてるよね?」
竜「はい・・・。私たちが夫婦になった、始まりの紙ですよね・・・。」

がっちゃんはその紙をじっと見つめ、それから、ふっと優しく微笑むと、迷うことなく破り、灰皿の中に入れるとライターに火を付け、火が一瞬で「1年」「離婚」「他人との恋愛NG」という無機質な文字を飲み込んでいく。

ガ「契約は今、この瞬間で破棄。もう期限なんていらない。君と出会えてくれたおかげで、僕はまた、愛を信じることができた・・・。本当に、君と出会えてよかった・・・。これからは一生、本当の夫婦として、僕の隣にいてくれない?」

がっちゃんからの予想外のプロポーズに私は嬉しくなり、

「・・・私も、ガクトさんと出会えてくれたおかげで、また、愛を信じるようになりました・・・。ガクトさんと出会えて、本当によかったです・・・。これからも、よろしくお願いします・・・!!」

こうして、私たちは契約ではない「真実の愛」を誓い、仮初め夫婦から本当の夫婦になった。

それから数日後。メンバーに京都のお土産を配り終えた時に赤西に声をかけられた。以前のようなトゲも、惨めな敗北感も消え、どこか晴れ晴れとしていた。

赤「・・・この前は、変なこと言って悪かった。俺、あの後ずっと考えてたんだけどさ。お前が俺に見せたことのないような顔で怒って、あんなに綺麗に笑うのはやっぱりあの人の隣にいるからなんだなって、それと、お前の気持ちを無下にして、傷つけた行為をして、本当に悪かった・・・。」

赤西からの予想外の謝罪に私は驚いた。

「私、セフレになる前からずっと、お前が好きだった・・・。亀と付き合う前から・・・。」
赤「・・・ありがとな。後、ごめんな。ガクトさんと幸せになれよ。これからは最高の『メンバー』として、お前を応援してるから。」

そう言うと赤西は右手を差し出し、握手を求め、私も赤西に握手をした。

握られた手は力強く、温かいものでそれは、幼かった私たちの関係が本当の意味で終わり、新しい「門出」を迎えた瞬間だった。
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