偽装結婚 ~愛を信じない同士の偽りという契約~


「たっちゃん、2ヶ月後、ちょっと出かけてくるね。」
上「え?どこに行くんですか?」
「実は、知人の結婚式で新婦の友達として出席することになったんだ。」
上「え!?そうなんですか?わかりました。きっと、素敵な式になるといいですね。」
「・・・。」

楽しそうに言うけど、きっと、不幸な結婚式になると思う・・・。

2ヶ月後、結婚式当日・・・、

「じゃあ、たっちゃん、行ってくるね。」
上「はい。いってらっしゃい。」
「今日はいつもより早く帰ってくるから。夕食は外で食べよう。」
上「え?二次会とかはいいんですか?」
「いい。早く帰ってたっちゃんと過ごしたいから。」
上「ッ・・・!!///」
「(クスッ)じゃあ、行ってくるから。」
上「い、いってらっしゃい・・・。///」

僕は家を後にし、式場に向かった。

式に着き、指名された席に着き、式が始まるまで待機した。

そして、式が始まり、ハイドは元々美形だったから、純白なウエディングドレスを着て、幸せそうな笑顔をしていたからより美しさを際立たせていた。

そんな幸せも、もう今日で終わりなのに・・・。

途中まではすんなり進んで、姉さんから新郎への贈り物としてサプライズムービーが再生され始める。

そして、ムービーの後半がさしかかり、子供と旦那さんが仲睦まじく遊んでいるシーンから急に場面が変わり、旦那さんと知らない女性が車の中でキスしている写真と一緒にラブホテル入ってる写真が映し出された。それを見た来賓席からどよめきの声がした。

それを見たハイドも開いた口がふさがらなかった。

?「「こ、これは何かの誤解です・・・!!」」

すると席を立ったのは顔面蒼白になっている旦那さんと写真に写ってた女性だった。

旦「お、おい!ヤヨイ!!合成写真がなんだか知らないが、こんなのは冗談で済まないぞ!!」

と姉さんにキレていた旦那さん。この期に及んでまだ誤魔化しきれると思っているのか無駄な抵抗を続けている旦那さんだが、すると今度は音声が流れ、

旦【お前、まだハゲ社長と結婚生活続いてるのか?】
間女【だって、あのハゲ社長。金持ってるだけだもん♪あなただって、ハイドさんを裏切ってるじゃない。】
旦【子供がデキてしまったから、結婚しただけだからな(笑)】

この声はどう聴いても旦那さんと女性の声だった。しかもハゲ社長って確かに来賓席にいる。この女性とハゲ社長は恋人として付き合ってるのにもかかわらず、旦那さんと不倫していたということみたい。

それを聞いた会場は沈黙が流れていた。実は2ヶ月前に姉さんが旦那さんが不倫しているって言ってた。しかも、旦那さんは浮気性で付き合ってるのにもかかわらず、平然で浮気を繰り返していた。

しかもヤバかったのは旦那さんと不倫している相手はハイドの友達で結婚前から不倫していたって言ってた。つまり、この女性とハゲ社長は結婚しているのにもかかわらず、ハイドの旦那さんと不倫していたということみたい。

姉さんがスピーチに立ち、

ヤ「えー、皆さん、ご視聴ありがとうございました。本来ならこの場で祝おうと思ったんですけど、コイツの不倫が原因で祝う気失せました。ちなみにこの音声は私がこっそりとコイツに仕掛けたボイスレコーダーによるものです。」

するとハイドのバンドメンバーが席に立ち上がり、

ケ「おい!お前、ハイドを幸せにするって言うてたやん!!お前、またハイドを裏切ったんか!?」
テ「見損なったで!!結婚して落ち着いたと思ったら、このザマか!?」
ユ「ハイドちゃんが子供がデキて、苦労しながらも喜んでいる横で不倫していたの?ふざけるのも大概してよ。」

メンバーと姉さんの言葉に来賓していた全ての人達から僕を除き、一斉に白い目が旦那さんと女性に向けられる。

旦「ま、待って下さい!!あれは俺たちの声じゃないです!!」
女「そ、そうよ!ハイドも友達もメンバーもきっと、騙されているんですよ!!」

証拠も揃ってるのにまだあがき続ける2人の神経の図太さに呆れていると旦那さんの父親が旦那さんの前に来て、

旦・父「このバカ息子が!!」

怒鳴りながら、旦那さんの顔面を思いっきり殴った。旦那さんは殴られた顔を痛そうに抑えながら尻もちをついた。

旦・父「男がいつまでも言い訳をするな!!皆さん、この度はうちのバカ息子がとんでもないことをしでかしてしまい、申し訳ありませんでした!!」

旦那さんの父親は「しっかり罪を償わせます!!」とお辞儀しながら、ハイドと来賓していた全ての人達に謝罪をした。

旦・父「お前もいつまでも顔を押さえていないで、皆様に頭を下げんか!!」
旦「も、申し訳ございませんでした・・・!!」

旦那さんはお父さんと一緒に僕たち全員に向かって、土下座を何度も何度も繰り返していた。ハイドは席から崩れ落ち、涙を静かに流していた。

旦那さんの周りには親族やら会社の上司やら集まって怒号が飛びかかっていた。当然、女性も夫である社長を激怒させることになってしまい、膝から崩れ落ちた。

僕はそんなカオスな背景を尻目にハイドの所に向かい、まだ座っているハイドにしゃがみ、

「ねぇ、ハイド・・・。大好きな人から裏切られた気持ちはどう?すごくショックだよね?すごく傷ついたよね?けど、君は僕と同じだよ・・・。」
ハ「・・・?」
「僕は・・・、ずっと前からハイドが好きだったんだよ。恋愛として・・・。あの時、このまま旦那さんと別れて、僕の所に来れば良いのにと、どれだけ願っていたことか・・・。

挙げ句の果てに君は僕の気持ちを知らないで、「弟みたいな存在で、頼りになる優しい後輩でしか思った事ないんやけど。」って言ってた。そのせいで、僕がどれだけ傷ついたと思ってるんだ・・・!!」
ハ「ッ・・・!!」
「4年前の事は許さなかったけど、僕が一番許さないのは、君がたっちゃんを泣かせ、「迷惑」だと言って傷つけた事だ・・・!」
ハ「ヒッ・・・!!」
「君は、僕とたっちゃんをどこまで傷つけりゃ気が済むの・・・?僕は君を好きだった事が何よりも黒歴史だったよ・・・。」

僕はすっと立ち上がり、

「これはね・・・、君への復讐だよ・・・。僕とたっちゃんを傷つけた事に後悔しながら、一生反省して生きていけばいいよ・・・。」

そう言い残すと僕は式場を後にした。

ずっと言いたかった事が言えて、スッキリしたな・・・。もう、後悔なんてすることは一生ないな・・・。

そう思いながら、僕は携帯を取り出し、たっちゃんに電話した。

「あ、もしもし。たっちゃん?うん。もう式は終わった。うん。いいの。それより、夕食はいつもと違う店で僕のおすすめの店なんだけどいいかな?了解。もう予約したから。じゃあね。」

僕は通話終了ボタンを押し、我が家に帰った。

その後、式場は当然中止となり、式のキャンセルは旦那さんが支払うことになった。ハイドは旦那さんと当然、離婚し、親権はハイド持ちになった。元旦那さんに裏切られたハイドは二度と再婚することはなかった。

元旦那さんは信用を失い、会社をクビになった。今は寝る間も惜しんで日雇いバイトで養育費と慰謝料を稼いでいる。

女性の方は社長と離婚され、実家に戻ったが勘当された。就職先を探そうとしたが上手くいかず、最終的にはお客さんに体を売るしか方法がなかった。

復讐なんて考えてなかったけど・・・、たっちゃんを泣かせたんだもの、これぐらいの復讐してもいいよね?




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