運命の歯車


メールで待ち合わせ場所と待ち合わせ時間の15分前に着くと、待ち合わせ場所には高そうな車が止まっており、立ってても目立つガクトさんがいた。

「ガ、ガクトさん・・・。お待たせしました・・・。」
ガ「いや、待ってないy・・・。」

ガクトさんは俺を見て、一言も言わなかった。

「あ、あのー・・・。」
ガ「・・・あぁ、ごめん。その服、あまりにも似合ってるからつい、見惚れちゃって。」
「・・・ッ!!///」

なんでこんなに、サラッと言えるんだ・・・!?///俺だったら、無理・・・!!///

「あ、ありがとう、ございます・・・。///ガクトさんもその、私服、素敵です・・・。///」
ガ「(ニコ)ありがとう。さぁ、行こうか。乗って。」
「は、はい・・・。///」

ガクトさんは慣れてるのか、車のドアを開けて、俺をエスコートしてくれる。

俺を助手席に乗せ、ドアを閉めるとガクトさんも運転席に乗り込み、運転をし始めた。

ガ「誕生日はメンバー達にお祝いしてもらった?」
「はい!日本の朝の情報番組でスタッフさん達がケーキとか用意してくれまして、それもメンバー達も祝ってくれました。」
ガ「嬉しかった?やっぱり。」
「はい!」

脱退してからメンバーと祝うことがなくなったから・・・。また、祝ってもらうことがどんなプレゼントより嬉しい・・・!!

ガ「そうなんだ。そのヘアピン・・・。」
「あぁ、これ。リーダーのジヨンって奴が誕生日プレゼントってこれを。」
ガ「へぇ・・・。ジヨンくんって子も良いセンスしてるね・・・。色と蝶の形が君にピッタリだよ。」
「え?///あぁ、ありがとうございます・・・。///」

なんだ、この慣れは!?///ガクトさんって、本当に何者なんだ・・・!?///

ガ「お腹は大丈夫?すいてない?」
「出る前にお昼、軽く食べましたので大丈夫です。ガクトさんは・・・、あ、そうだった・・・。」
ガ「ん?」
「ガクトさん、確か、1日1食で夜しか食べないんでしたっけ?」
ガ「そうだよ。よく知ってるね。」
「一応、調べたんですよ。ガクトさんのことを。言いかけようとしましたけど、さっき思い出して、聞くのをやめたんですよ。」
ガ「なるほど。じゃあ、僕のおすすめの所に連れて行くよ。」
「はい!お願いします・・・!」

デートなんて初めてだな・・・・。これなら、女の子の気持ちが分かるかもしれない。これは勉強になるな・・・!

着いたのは、見た感じで分かる高級ホテル。車から降り、わざわざエスコートまでしてくれた。

「わざわざ、エスコートしなくてもいいですのに・・・。」
ガ「え?デートだから当たり前じゃないの?僕がこれ、基本だと思ってるから。それにこういうデートらしいデートは久しぶりだから。さぁ、行こう。僕のおすすめの所に。」
「は、はい・・・。」

ホテルの中なのに、俺の手を繋いでくれた。恥ずかしかったけど。

ガ「ここだよ。」
「こ、ここですか・・・?」
ガ「そう。」

案内されて、着いた場所はガーデンラウンジだった。

「ガクトさん、よくここに来るんですか?」
ガ「まぁ、たまに来る。」

スタッフさんに席を案内され、指定された席に着き、

ガ「何か飲みたいものはある?」
「んー、とりあえずコーヒーで。」
ガ「コーヒー?好きなの?」
「はい。大好きでインスタントですけど、毎日飲んでます。」
ガ「そうなんだ。すごいな・・・。」
「べ、別にすごいことなんてありませんよ・・・!」
ガ「実を言うと僕・・・、コーヒー飲めなくて。」
「え!?そうなんですか・・・!?」

俺はガクトさんの意外な告白に驚いた。

毎朝コーヒーを飲んでるイメージだったんだけど・・・。
意外とかわいいかも・・・。

ガ「本当に恥ずかしい話でごめんね・・・。(笑)」
「い、いえ!意外すぎてビックリしただけです・・・!」
ガ「いいよ。だから、スンヒちゃん、すごいなーって本当に思ったんだ。」
「コーヒー飲めるだけで・・・?」
ガ「うん。(コクリ)」

俺は2種類のケーキセットとコーヒー、ガクトさんはアールグレイ。

やっぱり、甘い物はダメか・・・。イメージ通り・・・。

ガ「2つだけでいいの?もっと頼んでいいよ。」
「い、いえ!そういう訳にはいけませんし・・・!!それに、甘い物を食べたらまた太りそうだなって・・・。」
ガ「”また”?」
「あー、実はこう見えて、デビュー前、小さい頃から学生時代まで太ってたんですよ。」
ガ「そうなの?」
「はい。事務所の社長に私の姿を見て、追い返されて、音楽の実力は認めてくれたのに、見た目だけが欠点だったって。」
ガ「ひどいね・・・。」
「それから、必死でダイエットしたんですよ。40日で20kg減量したんですよ!」
ガ「え!?たった40日で・・・!?すごいな・・・。」
「まぁ・・・。今思うと社長のおかげでもありますから。」
ガ「そうだね。」

ガクトさんと話しているとケーキとコーヒー、アールグレイが来た。

「んー!美味しいです!」
ガ「それはよかった。」
「日本でこんな素敵な所があったなんて知らなかったです・・・。ケーキもコーヒーも美味しい・・・。」

しかも、胃もたれしないし、ケーキ2個余裕で食べられるなんて・・・、やっぱり、若いって最高・・・!!









ガクトside

ケーキを幸せそうに食べる彼女の姿を見て、愛おしいと思った。

この前、スンヒちゃんの誕生日を知ったのは朝の情報番組でBIGBANGが映っていた。その日はスンヒちゃんの誕生日だったみたいで、知り合って数ヶ月が経ち、彼女の誕生日を初めて知った。

それを観た僕は、スンヒちゃんに「誕生日おめでとう」と「ごめんね。」のメールを送り、スンヒちゃんは「ありがとうございます。」の返信がきた。

最悪な事に誕生日プレゼントとか用意していなかった。それで僕は次会った時にお詫びという形でデートを誘うと決めた。

僕は彼女を祝いたくて、レストランと行きつけのバーを予約し、プレゼントまで買った。

先週、たまたまスンヒちゃんと再会し、デートを誘った。当然、戸惑ってはいたけど、僕は必死になってお願いをして、最終的に「はい」と答えた彼女。

正直言って、こんなに必死でお願いするのは初めてだった・・・。今までこんなことなかったのに・・・。

と僕は1週間前の自分が恥ずかしいと思った。

そして、今日。待ち合わせ場所に着き、スンヒちゃんが来るのを待つといつもと違う可愛らしい服装を着たスンヒちゃんが現れた。

僕は思わず、見惚れてしまった。移動中に僕が例の朝の情報番組乃時にメンバーが祝ってくれた話をすると、祝ってくれたことが心から嬉しかったっていう笑顔で。

リーダーのジヨンくんからって渡された蝶のヘアピン。そのヘアピンを見て、僕は亡くなった親友のことを思い出しながら、見つめていた。

行きつけのホテルのガーデンラウンジに着き、僕の知らない彼女の部分をまた知ることができた。

コーヒーを飲んでること・・・、昔、太ってたこと・・・、努力してダイエットして、今の体型になったこと・・・。何より、知って嬉しかったことは・・・、彼女の愛らしい笑顔だった・・・。


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