運命の歯車


「それで・・・、どこに行くか決まってますか?」
ガ「もちろん、考えた。ナギにはもっと知って欲しいことがあるから・・・。動物園にでも連れて行こうかなって。」
「動物園・・・?」
ガ「うん。今日は平日だし、少ない日だから。それに・・・、実はナギと行ったことがないんだ・・・。」
「え・・・?」
ガ「奈々桜が亡くなってから、もちろん、ナギを育ててるんだけど、仕事が忙しくて、遊びに行く機会がなくて・・・。姪と姉たちで連れて行ってもらってて・・・。」
「なるほど・・・。親子で遊びに行く機会がないってことですか?」
ガ「そうなんだ・・・。だから、他の親子とか見ていて、ナギには申し訳ない気持ちでいっぱいだった・・・。」

ガクトさんは悲しそうな笑みでナギくんを見ていた。

「そういうことなら、いいですよ。」
ガ「え?」
「俺、将来、お母さんになったら、子供と一緒に遊びに行くのが夢なんです。それにどういうものなのか、体験になります!」
ガ「ッ!ありがとう・・・!」

ガクトさんは俺にお礼を言うと、

ガ『ナギ・・・。』
ナ『なに?』
ガ『今まで、パパと遊びに行けなくてごめんな・・・。今日はパパとママで動物園に行こう。』
ナ『ほんと・・・!?』(パアァァ・・・!!)
ガ『あぁ。』
ナ『やった-!パパとママとどうぶつえん!わーい!どうぶつえんどうぶつえん!』

俺はナギくんが喜んでる姿に思わず、頬が緩み、ちらっとガクトさんの方を見ると同じく、ナギくんを見ながら、頬を緩んでいた。

そして、動物園に着き、ナギくんはパパであるガクトさんとお出かけが嬉しいのか、ずっとニコニコしていた。

『見ろ。ナギ、あそこにすごい色の動物がいるぞ。』
ナ『うぉー!しゅごい!』

あれから、俺たちは色々と周り、ふれあいコーナーにも行って、小さな動物たちを触れ合い、生まれたばかりのライオンの赤ちゃんの公開を見たり、ナギくんはずっとキラキラした目で動物たちを見ていた。

夕方になり、ナギくんは遊び疲れたのか眠ってしまった。

ガ「今日はありがとうね。僕のわがままを聞いてごめんね。」
「いえ、俺は全然楽しかったですし。それに、ナギくんはガクトさんと遊びに行ってくれるっていうのが嬉しかったみたいです。」
ガ「僕もナギと遊びに行ったの初めてだけど、楽しかった。親子で出かけるって言うのがこんなに楽しいものなんだって。」

とガクトさんは嬉しそうな笑顔で言っていた。

「あの、聞きたいことがあるんですけど・・・。」
ガ「何?」
「多分、ガクトさんには失礼かもしれないですけど、奥さんの奈々桜さん、どんな人だったんですか?」
ガ「うーん、そうだね・・・。見た目は真っ直ぐで長い黒髪にナギと同じ金色に近い琥珀色の瞳、僕も僕のメンバーも赤面になるほどの美人で、儚げだけど、芯が強くて、慈悲深くて、優しい女性だった。」
「へぇ。今でも、奈々桜さんのこと、愛してるんですか?」
ガ「そうだね・・・。亡くなった今でも、愛してるんだ・・・。」

俺はガクトさんの言葉で、胸がチクッと痛みを感じた。

ガ「あぁ、もちろん、愛してるけど。ナギに母親が必要だと思って、再婚を考えてはいるんだけど、中々踏み出せなくて・・・。」
「なんでですか?」
ガ「天国の奈々桜は許してくれるだろうかと躓いちゃって・・・。」
「一歩踏み出せないと・・・?」
ガ「そう・・・。」
「ごめんなさい・・・。せっかく、楽しい気分だったのに、俺のせいで、暗い話になってしまって・・・。」
ガ「いや、いいよ。全然大丈夫だから。逆に僕が暗い話を変わってしまったからね・・・。むしろ、ごめんね・・・。」

ガクトさんは悲しそうな笑顔になりながら、謝った。

ガクトさんが、謝ることじゃないのに・・・。俺、申し訳ない事したな・・・。

「あ、ここです・・・!ここが俺が泊まってるホテルです・・・!」
ガ「もう着いたんだ。じゃあ、ごめんだけど、明日も頼めるかな?」
「もちろんです・・・!俺が帰るまで、ナギくんと、ガクトさんと一緒に過ごしたいです・・・!!」
ガ「じゃあ、おやすみ。スンヒちゃん。」
「おやすみなさい・・・。」

俺はそう言うと車に降り、見えなくなるまで見送った。

やっぱり、叶わない恋かな・・・?ナギくんがいても構わないから、俺は、あなたのパートナーに、なりたい・・・。
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