運命の歯車


僕はスンヒちゃんのことが好きだけど、告白できない訳がある。
それは・・・、

「ただいま。」
ナ「おかえり、がっくん。」
ミ「おかえり、ガクちゃん!」
?「ぱっぱ!」
「(ニコ)ただいま、ナギ。」

僕にただいまと笑顔で言ってるのは、僕の姪っ子の高2のナツミと小3のミク。僕はなっちゃんとみぃちゃんって呼んでる。

なっちゃんは僕の上の姉の娘で、みぃちゃんは下の姉の娘。

別に2人のことは秘密ではない。

僕を見て、嬉しそうな笑顔で言ってるのは、僕の息子のナギこと凪兎。今年3歳になる。

ナギの母、僕の妻の奈々桜はナギが生まれた日に亡くなった。

奈々桜との出会いは6年前で奈々桜は村の人たちから虐げられてきて、逃げた時に僕の家から避難した。

僕が30歳、奈々桜が18歳の時だった。

第一印象だったのは、真っ直ぐの茶色がかった黒髪に金色が混じった瞳の色をした儚げな美少女だったが、ずっと虐げられてきたのか、手は荒れ、身体も痣だらけだった。

僕はそんな奈々桜を放っておけなかったため、しばらく僕の家に置くことにした。

奈々桜は美貌だけじゃなく、家事もでき、あんな環境で育てられたのにも関わらず、心優しく、慈悲深い子だった。

僕はそんな彼女に惹かれていき、世間には内緒で付き合うようになった。

あっ、因みにあの村は土砂崩れに遭い、今はなくなっている。

奈々桜がいなくなった事の逆恨みで僕の家に突撃された奈々桜の従姉であり、奈々桜の元許嫁が奈々桜をいたぶって、包丁で殺そうとした時になっちゃんとなっちゃんの友達が2人を足止めした。

そして、2人の足に何か巻き、離すと呑気に逃げるなっちゃんたち、追いかけようとした2人は前に進めないと思った時に見ると2人の足にはガムテープが巻いていた。

友達は『鬼さん、こちら。手の鳴る方へ!』とあかんべーとバカにするように言うと、2人は悔しいのか、ガムテープを巻いた足でなっちゃんたちを追いかけた。ぜえぜえと言いながら。

僕はその隙に通報をした。僕と奈々桜はまだ追いかけっこをやっていると呆然と見るしかなかった。

2人は何か思いついたのか、ガムテープを持ってる包丁で切ればいいとしてみたが、ガムテープが固いのか切れず、そのまま刺さった。

な・友「こんなこともあろうかと、包丁でも切れないようミッチミチに巻いた!」

それをみて、『さすがだな・・・。』って思った所で警察が到着。

ガムテープを剥がそうとしたが、固くて剥がれない。最終的に引きずられながら、2人は警察に連れて行こうとした時に、2人は奈々桜に助けを求めたが、奈々桜は2人をみて、

奈「地獄に堕ちろ、クソが。」

と黒い笑みを浮かべながら言うと、2人は絶望感が漂っていた。

その後、2人は不法侵入罪、銃刀法違反、器物損害罪、殺人未遂の容疑で逮捕された。足のガムテープはそのままらしい。

お巡りさん曰くめんどくさいって言ってた・・・。

この事件を皮切りに村は奈々桜が4年間、虐られてきた事と村の不義が次々に露見し、連日メディアに追いかけ回れっぱなしだった。

因みに僕の家の一部が壊したから、被害届を出し、アイツらから慰謝料と損害賠償を請求した。奈々桜をいじめた奴らは一番厳しい場所でこき使われ、そこで奈々桜の慰謝料を稼がせている。少しでもサボったり、適当な事をしたら、容赦なく鞭で思いっきり叩くとお願いしたのは僕。

村にいた子供も奈々桜をいじめ、更生のため、一番厳しいと有名な寺で修行と一番厳しい全寮制の学校で腐った性根を叩き直してるらしい。

村の長家族は息子、奈々桜の元許嫁の悪行でマスコミに押しかけで精神的に病んでしまったらしい。

謝罪は来てたけど、奈々桜は許すつもりは一切なかった。

奈々桜の元両親はやつれた姿で現れ、今まで見てみぬふりをして悪かったと謝罪したが、こちらも許す気は一切なかった。

2人にはまだ赤ちゃんの娘がいたが、両親が犯罪者になってしまい、心優しい里親の所に引き取られた。

事件から2年後の春、僕たちは奈々桜の20才の誕生日を機に結婚した。結婚してすぐに妊娠が発覚。性別は男の子。奈々桜が、

奈「男の子ですから、【凪兎】にしましょう!私とガクトさんの名前を1文字とって!争いなく、平和主義な子に育ってほしいです。」

と楽しみという笑顔で僕に言っていた。僕は名前の由来を聞いて、嬉しい気持ちになり、賛成し、膨らんだ奈々桜のお腹に耳を当て、生まれてくるのが楽しみだった。

だが、突然の別れがやってくる。

奈々桜はその日、生まれる3日前に病院で定期検診の帰り、雨が降っていて、信号待ちをしてた時に突然の落雷で、信号機が倒れてきて、見ず知らずの子供を庇い、下敷きになり、重症を負い、救急搬送された。

僕はその時、仕事だったためニュースで知り、急いで彼女が搬送された病院へ向かった。彼女は病院に着くまで、必死で耐え、瀕死状態のまま、無事にナギを出産した。

「奈々桜、しっかりしろ!僕たちの子供はちゃんと生まれた!凪兎のためにもしっかりしろ!」

僕は彼女に必死に問いかけたが、

奈「私も、そうしたいですけど・・・、あの子に、凪兎に、会わせて下さい・・・。」

彼女は弱々しい声で「会わせて」と言うと、僕は凪兎を抱っこし、彼女の前に差し出すと、凪兎の頬を撫で、

奈「あなたに、命を繋ぐことができて、よか、った・・・。」

そう言うと彼女の金色の瞳はすぅっと涙を流しながら、力尽き、

「奈々桜、奈々桜ーーー・・・!!!」

僕は彼女に必死で呼びかけたが、返事は返すことは二度となかった。

奈々桜はナギを生んですぐに亡くなった。21才という若さだった。彼女の葬儀後、僕は彼女を亡くしたという悲しみで一時期は喪失感はあったが、姪っ子たちが目をキラキラしながらナギを見ていた。僕はナギの顔を見ると、ナギの開いた目の色が彼女、奈々桜と同じ色をしていた。

僕はナギを見て、思わず涙を流し、ナギを抱きしめた。

いつまでも、塞ぎ込んでる訳には行かない・・・。愛さずにいられないわけがない・・・!ナギは、君と僕の子だから・・・!!
奈々桜、ナギはちゃんと僕が、君の分まで育てる・・・!!生まれてきてくれて、ありがとな、ナギ・・・!!

僕はナギを1人で育てると決意した。姉さんたちも、メンバーも色々とサポートや援助をしてくれた。

ナ「がっくん?どないしたん?」
「・・・あぁ、いや、なんでもないよ。いつも、ナギを遊んでくれてありがとね。」
ミ「どういたしまして!」

最近の僕は、ナギと奈々桜には申し訳ない気持ちでいっぱいだった。だって、「ナギのために奈々桜以外、愛さない。」とそう決めてたのに、スンヒちゃんと出会い、また好きになってしまった。

もちろん、奈々桜のことはまだ愛してるし、ナギのことも大切な我が子でもある。けど、スンヒちゃんに僕が子持ちだって言うと、僕から離れるんじゃないかと悩み悩んでいた。

いつまでも隠す訳にはいかないのはもちろん、わかってる。けど、天国の奈々桜が、それを許してくれるかどうかの話だ・・・。

終わり
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