メイドと主人


ガクト様に慰められてから2日が経った。おかげで晴れ晴れした気持ちで仕事が順調に進む。

「ガクト様、コーヒーでございます。」
ガ「ありがとう。(ニコ)」

あれ以来、俺はガクト様のことを目で追うようになった。顔を見ただけ、目が合っただけで顔が熱くなるし、胸の鼓動が止まらない。

その日の夜、仕事終わった後、俺はガクト様に呼ばれ、部屋に向かった。

「ハイドです。」
ガ「どうぞ。」

「どうぞ」と合図を出され、入ると優しい笑顔のガクト様がいた。

ガ「ごめんね。こんな夜分遅くに・・・。」
「い、いえ!大丈夫です・・・。」
ガ「実はね、ハイドはプレゼント、何がほしい?」
「プレゼント、ですか・・・?」
ガ「そう。ブランド物とか興味はないだろ?」
「はい・・・。全く・・・。」
ガ「だから、何がほしいか聞こうと思ってて。」
「ほしいもの・・・。」

俺は真っ先に考えたのは、昔から好きだった絵だった。

「俺、絵を描く道具がほしいんです・・・!」
ガ「絵を描く、道具・・・?ペンとか、紙とか色彩とか描くやつ?」
「はい!俺、昔から絵を描くことが好きだったんです。けど、父が義母と再婚してから、義母だけじゃなく、周りからバカにされて、描かなくなったんです・・・。」
ガ「そうだったんだ・・・。それなら、ここでいくらでも、描いてもいいよ。ちょうど使ってない部屋があるから、そこに専用の部屋として確保しとくから。」
「・・・!あ、ありがとう、ございます・・・!」

嬉しい・・・!!これでやっと、誰にも馬鹿にされず、好きに絵を描ける・・・!!

俺はまた絵が描けると、嬉しい気持ちでいっぱいだった。

数日後、ガクト様から呼ばれ、多くのプレゼントがあった。

「ガクト様、これって・・・!!」
ガ「うん。キャンパスやイーゼル、スケッチブック、パレット、鉛筆と筆、パステルクレヨンや絵の具、色鉛筆とマーカーとか色々入ってる。」
「あ、ありがとうございます・・・!!開けていいですか・・・!?」
ガ「いいよ。」

俺は嬉しさのあまり、箱を開けると、本格的でビックリした。

あ・・・。やっぱり、これだけしか見えない・・・。

俺が手に取ったのは、1本の絵の具。そこには「赤」と書いてあった。

ガ「ん?どうしたの?絵の具を見つめて。」
「あぁ、いえ。ただこれだけは茶色に見えてて・・・。」
ガ「茶色?それ、赤だけど・・・。」
「はい。わかってます。ただ、俺には茶色にしか見えなくて・・・。」
ガ「え・・・?」

俺は昔から赤の色が何故か、茶色に見えてしまい、周りから変に思われることも多かった。

ガ「ハイド・・・。一旦、病院に行って、検査しとく?神威財閥がやってる病院、手配しとくから。」
「へ?」

翌日、俺はガクト様に連れられて、神威財閥がやってる病院で目の検査をし、テストもやった結果、

医「ハイドさん、あなたは・・・、色覚障害です。」
「へ?」

先生からの話によれば、俺の目は色の区別がつかないという遺伝性の疾患で、普通の人より違う色に見えるという障害。

俺はそんな障害があったのは初めてで、「その色、変」って言われた記憶があって、そのせいだったのかと実感した。

視力の方は問題なかったけど、先生からのアドバイスで色覚用の眼鏡を買った。旦那様が負担で出してくれた。

「すみません・・・!旦那様・・・!」
大「いいよ。君はもう、うちの家族みたいなものだから。これぐらい当然だよ。」
「・・・!ありがとう、ございます・・・!!」

そして、俺は眼鏡をかけると、茶色に見えていた赤がこんなにも鮮やかに見える。

これが、皆が視る色の世界・・・!!赤って、こんな鮮やかで綺麗な色だったんだ・・・!!

ガ「どう?着け心地と見え方は?」
「はい!着け心地は問題ないです。それより、赤がこんなにも綺麗な色だったなんて、感動しました・・・!!ガクト様と旦那様には感謝しかありません・・・!本当に、ありがとうございます・・・!!」
ガ「フッ、それはよかった。」

それからの俺は、眼鏡をかけながら、久しぶりの絵に思う存分に描いた。自分の思い描くように色を好きなように描いた。

嬉しい・・・!!また、絵が描けるなんて・・・!!すごく、楽しい・・・!!

続く
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