第5界層 〜不朽不滅の幽鬼の塔〜
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___ギルド〈
ギルドの隠れ家には、3人の影があった。
無論、その中にはギルドマスターであるアビゴールやその側近であるヴィスキントも居た。
そして、
「えへへ、楽しみ♪」
その中には、偽物の〝神子〟として連れてこられた女性も居た。
全く怖がる様子もなく、その人は踊りながらアビゴールを見る。
それに口角を上げ見遣るアビゴールが居た。
「ハッ!そんなに楽しみか?メルクに会えるのが。」
「あったりまえじゃないですか〜♪ だって、もう1人の〝神子〟なんですよ〜?」
「フッ、そうだな。」
「……。」
ヴィスキントはそれを聞いて静かに目を伏せる。
そして思いを馳せるのは、今はここにいない少女のことである。
本物の〝神子〟であり、アビゴールの願いを叶える唯一無二の存在。
そして、なかなか手に入れられない難しい存在となってしまった少女の事を。
しかし、この事をきっかけに少女を連れ戻す。
───何がなんでも、だ。
「フッ……、待ってろメルク。ぜってぇこちら側に連れ戻すからな…!!フフ、アッハッハッハッハッ!!!」
「あっはっは〜♪」
偽物の〝神子〟もアビゴールの笑いに似せて笑い出すのをヴィスキントは眉を顰め、耐え凌ぐ。
……あぁ、煩わしい声だ。
まだ嫌だ嫌だと泣き喚いてくれるよりは良いものの、ここまでアビゴールに執心ならあの少女と変わらぬ……いや、何故かこちらの方が煩わしく感じる。
今は居ない少女に再び思いを馳せていることに気付かぬまま、ヴィスキントは人知れず溜息を吐く。
「……リコリス、行きますよ。時間です。」
「は〜い♪ ヴィスキント様!」
「……今は教祖様と呼びなさい、と言っているでしょう?」
「はっ!そうでした!」
「おいリコリス。この計画を台無しにしてくれるなよ? 折角メルクを攫えるチャンスだ。……お前もメルクと一緒に居たいだろ?」
「はい!初めて会うから緊張しちゃうけど、でも友達に絶対なりますから!」
そう言って快活な笑顔を見せた女性は再び自作の踊りを披露していた。
それを一瞥し、ヴィスキントは深くフードを被る。
変装のプロであるヴィスキントは今や真っ白い教祖服に身を包んでいる。
頭のフードで顔を隠したヴィスキントを見て、アビゴールも真っ白い教祖服に付いているフードを目深に被る。
そして〝神子〟として仕立てあげられたリコリスという女性もまた大きく深呼吸すると、その顔を真剣な顔へと変える。
そして〝神子〟用の服である、これまた白の清楚な服装に身を包んだリコリスは手を前にやり清楚に歩き出す。
アビゴールが扉を大きく開け放つとそこには異様な光景が拡がっていた。
百はいるだろうか、その白を基調とした教会のようなホールに整列した人々は白装束を着ており、アビゴールが開けた扉を見て深深と頭を地面に伏せる。
リコリスを中心にして3人は並ぶと、地面に伏せた白装束の民衆は声を張り上げた。
「「「「教祖様、神子様、万歳!!!」」」」
その言葉にニヤリと笑ったアビゴールは民衆を見て言い放った。
「神子様は現在、体を壊されている!優秀な薬師が必要だ!そして同時に神子様の御心を癒せるほどの力量を持つ薬師が必要である!」
「「「「……!!」」」」
「この世界にいる〝瑠璃色の瞳を持ち、瑠璃色の髪色を持つ少女〟を探し出せ!ユグドラシル様から神子様に捧げられた“お告げ”である!」
「「「「ユグドラシル様と神子様の仰せのままに!!」」」」
「但し、ユグドラシル様のおメガネに適う少女である!殺さないように!また丁重に扱うよう、注意を払え!そしてここへ連れてくるのだ!抵抗するならば鎖で拘束するくらいなら構わない!ここにユグドラシル様から預かりし、聖なる鎖を用意した。各自持ち出し、捕縛せよ!」
「「「「ユグドラシル様、万歳!神子様、万歳!教祖様、万歳!!!」」」」
広いホールに反響する統一された声に満足そうにアビゴールが嘲笑う。
これでメルクはこちらのものだ。
幾ら抵抗しようが、相手は一般人だ。
向こうも手荒なことは出来まい。
それに向こう側のヤツらがメルクを連れ戻そうものなら……騎士団の所為に出来る。
ここまで大きくなり、信者も沢山いる中そんなことをすれば現在の皇帝の信頼がガタ落ち、最悪の結果を招くだろう。
「急ぐのだ!神子様の体調はこの一瞬一瞬で悪くなるばかり!そうなればユグドラシル様がお怒りになり、世界は破滅を迎えるだろう!!我々に出来ることは瑠璃色の少女の捕縛である!皆の健闘を祈る!」
「「「「ユグドラシル教、万歳っっ!!!!」」」」
───白装束達は、その手に白の鎖を持ち外に出た。
目的は、〝瑠璃色の瞳を持ち、瑠璃色の髪色を持つ少女〟である。
その白装束たちの瞳には、濁りなき信仰心しか無かったのだった。
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それぞれの道(𓏸𓏸編)