第5界層 〜不朽不滅の幽鬼の塔〜
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
___カプワ・ノール
二手に分かれていた仲間達。
一つは霊薬アムリタの情報を調べに城の書庫へ。もう一つはメルクの解熱を待ちつつ敵の対策をするために。
先に事が動いたのはカプワ・ノールのグループだった。
メルクが解熱し、面会可能になったのだ。
「面会出来るとなるとすぐに来ますね。流石です。」
カロル「そりゃそうだよ!だって会いたいもん!毎日メルクと会ってるお医者さんには分からないだろうけどね!」
「ムフフッ…!その気持ちは流石の私も分かります。ですが、まさかメルクさんの熱が治って早々に来るとは思いませんから。」
ユーリ「まぁ、それほど皆メルクに会いたいってことだ。」
「面会時間は20分です。」
カロル「短っ!」
ユーリ「無いよりましだろ?さ、行くぞ。」
ジュディス「あの人が一番メルクに会いたい癖にね。」
レイヴン「本当、本当。青年ってば素直じゃないんだから――」
ユーリ「あいつだけは面会禁止でいいってよ?」
レイヴン「ちょ!!駄目に決まってんじゃない!」
急いで病室へ向かうレイヴンの後を追う様に皆も病室へと入っていく。
医者も時間を計るためか中へと入っていく。
『すみません。熱が出たみたいで…。』
ユーリ「それほど昨日は疲れてたって事だろ?気にすんな。」
カロル「そうだよ!あんな綺麗な羽見せてもらったし、あの姿疲れるんでしょ?」
『うーん…。それが自分では分からないのです…。』
レイヴン「それなら猶更気を付けないとな。倒れてからじゃ遅いからなー?」
『はい、気を付けますね?』
すぐに昨日の続きである本題に入ろうとしたメルクだったが、その前にとカロルが水を差す。
霊薬アムリタの情報を入れておきたかったからだ。
カロル「メルクって霊薬アムリタの事知ってる?」
『はい。霊薬アムリタは私の研究の一つでもありますから…。』
カロル「本当?!どんな素材が必要か覚えてない?!」
『まず、霊薬アムリタについてお教えしますね?霊薬アムリタは現状この世界には存在しないんです。』
ジュディス「じゃあ、何故その存在が認知されているのかしら?」
『実は異世界というものが存在していまして…。そこにはあるのです。』
「「「異世界…?」」」
ジュディス「ある意味、〈
ユーリ「確かに言われてみればそうだな。」
カロル「じゃあ、〈
『うーん、それとはまた別で発見されたってことなんです…。文献によるとそう書かれているんですよ?”異世界から来た者、霊薬を持ちて秘薬と共に死者を蘇らせる”と。……秘薬エリクシール。…そして霊薬アムリタ…。その二つが合わさればどんな病気も、どんな状態も治すと言われているんです。』
レイヴン「メルクちゃんが霊薬アムリタを研究したかった理由って…もしかして生き返らせたい誰かが居るとか?」
「「!!」」
驚いた様子でメルクを見る二人だったが、メルクの顔を見て安心する。
どうも、メルクにはそういう人はいないようだ。
しかし、死者を蘇らせられるなんてきっとすごい薬に違いない。
カロルは興味津々とメルクの話を聞く。
『この世界に存在しない理由として、まずは素材がこの世界にはないからなんです。』
ユーリ「?? じゃあメルクはどうやって霊薬の研究をしようとしてたんだ?」
『”疑似霊薬アムリタ”を作り出そうとしたのです。』
レイヴン「逆にそこまでするのには、なんか訳があるのか?」
『はい…。実はアムリタの生成方法はかなり特殊でして…その生成方法を直接見るのがちょっとした夢…でもあるんです。』
少し照れたように笑うメルクに興味を持った面々は前のめりになり、さらに深く聞くことにした。
メルクでさえも虜にする霊薬とはいったいどんなものだろうか。
俄然興味が湧くというものだ。
『霊薬アムリタはとある花に”蜜雨”と呼ばれる特殊な液体をかけることで出来る薬なんです。』
ユーリ「”蜜雨”?」
カロル「とある花ってなに?」
『そうですね…。どう話していいものか……けほ、けほ…』
「「「!!」」」
すると今まで佇んでいるだけだった医者がすぐにメルクの元へと近寄る。
「メルクさん。」
『ひっ…』
「「??」」
明らかに様子がおかしくなったメルクにユーリ以外の面々が不思議そうな顔でメルクを見た。
どことなく冷や汗をかいていそうな表情に、余計に仲間たちは不思議そうにメルクを見た。
ユーリ「あー…(あの治療方法なら、意識がある時だと確かに怖いよな…)」
『せ、咳はしてませんよ…?』
「ムフフッ…!私はまだ一度も”咳”なんて言葉、言っていませんが?」
『ひっ…』
メルクの額から頬からゆっくりと触り、首に両手を宛がう。
まるで首を絞める様にゆっくりと医者が指を滑らかに1本1本ずつ置いていけば、たらたらとメルクが冷や汗をかいていきそれに仲間たちが珍しそうに見遣る。
「ムフフッ…!咳をしたのは確認済みですよ…?メルクさん…?……ふむ、なるほど。38度ですか…。」
『あ、あれは…その……気管に少し唾液が入っただけでして…。そ、それに今日は暑いですし…』
「あっははァ…!嘘は宜しくないですねェ…?メルクさん?その咳の仕方で誤嚥というのはあり得ません。えェ、あり得ないのですよ。さァ?行きましょうか…?」
『ひっ。た、助けて…!!』
ユーリの方へと助けを求めたが、ユーリが渋い顔で視線を逸らせる。
ユーリ「あー…。助けてやりてえが…今回ばかりは諦めろ、メルク。」
『!!』
絶望した顔でユーリを見るメルク。
それに流石にカロルが恐々とした顔でメルクと医者を見た。
カロル「え?え?何が始まるの…?」
「いーえェ?なァーんにも始まりませんよォ…?ムフフッ…!!ただの治療ですから…。」
そして勢いよく軽々とメルクを持ち上げるとすぐさまどこかへと連れ去っていく医者。
廊下にメルクの悲鳴が木霊する中、カロルやレイヴンが廊下へと顔を覗かせると更に大きくなったメルクの悲鳴が何処からか聞こえてくる。
レイヴン「え?大丈夫なの?あれ…」
カロル「ユーリは知ってるの?」
ユーリ「まぁ、な…。ただ、聞かない方がいいぞ。」
「「え?」」
ウィーーーン、ガシャリ、
『きゃああああああ!!』
ジーー、ジーー、ジーー、
『だ、だれか…!たす、け――』
ウィーーーン、ガシャ、
ズガガガガガガガガ……
メルクの悲鳴と治療には絶対にあり得ない、意味不明な金属音に二人の顔が青ざめていく。
そして二人は咄嗟にユーリを見ると、眉間に皺をよせ何かに耐える青年がそこにはいた。
直接やられたわけではないユーリだが、大好きなメルクの悲鳴に加え、あの良く分からない音に寒気がして耐えていたのだ。
ジーー、ジーー、ジーー、
ウィーーーン、ガシャ、
ズガガガガガガガガ……
もうメルクの悲鳴は聞こえなくなってきて、代わりにあの医者の声が聞こえる。
それも、その声は嬉しそうな歓喜の声を上げている。
「いいっ!いいですよォッ?!!メルクさん!!そのまま…!!!」
ウィーーーン、ガシャリ
「あっっははァ…!!きれいですよォ…メルクさん!!」
レイヴン「ちょ、止めに行った方がいいんじゃない?!」
カロル「ボク…ここではお世話にならないって決めた…。うん…、絶対に…。」
ユーリ「俺も…流石にここでは世話になりたくねえな…。」
ジュディス「随分と楽しそうね。」
ラピード「クゥーン……」
暫く金属音と医者の興奮した声を聴きながら廊下に佇んでいると、数十分後にようやく音が止む。
そして煙と共に奥の方から医者だけが出てくる。
その顔はまた先ほどの無気力そうな顔へと戻っており、姿勢も相変わらず猫背のままだった。
カロル「え、えっと…メルクは…?」
「ムフフッ…!治療でお疲れになったようで、今は寝ていますよ。」
レイヴン「へ、へえ…。そうなんだ…。」
震える声で二人がそう言えば、何故そんな顔をされているのかと不思議そうに医者が二人を見たので何でもないと頭を激しく振っておいた。
「大風邪は少しの症状でも見逃せば命に関わりますから。皆さんも面会中にメルクさんに異変があればすぐ私に仰ってください。」
「「は、はーい…」」
先程のメルクの表情から言いづらい事ではあるが、これは人命救助なのだ。
決して悪気があるわけではない、と二人が心の中で自分自身に言い聞かせた。
ユーリ「これで面会は終わりだな。」
カロル「そ、そうだね…。メルク…本当に大丈夫かな…?」
「もし皆さんも体に異常があれば仰ってください。治療しますよ。」
「「いえ!結構ですっ!」」
「そうですかァ…。残念ですねェ…?ムフフッ…!」
ユーリ「ともかくいったん戻るか。」
「アムリタの件に関しては後で聞いておきますので安心してください。」
カロル「じゃ、じゃあ、ボク達帰るね…」
青ざめた顔の二人とユーリ達は、カプワ・ノールの宿屋へと大人しく戻っていくのだった。