第5界層 〜不朽不滅の幽鬼の塔〜
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元の世界へと戻ったユーリ達は、お互いの素材を確認しあっていた。
どうもお化けの布はユーリ達だけでなく、フレン達も手に入れていたらしい。
二つ手に入って安堵している子供組は文句を口にした。
“もう二度と第5界層へは行かない”
と、口を揃えて話していた。
フレン「ともかくこれでメルクさんの薬の材料が手に入ったね。」
ユーリ「後はあいつが素材を手に入れてくるまで待つしかないな。」
フレン「じゃあメルクさんの所に行こうか。」
ユーリ「目的地はカプワ・ノールだな。」
静寂に包まれた町を歩き、バウルに乗る。
目指すカプワ・ノールへ一直線。
皆の心はメルクに会えるという気持ちで、温まっていた。
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___カプワ・ノール
一方、メルク達は今日も散歩という名のリハビリをこなしていた。
片方は医者と、もう片方はレイヴンと手を繋ぎ、海風対策もバッチリだったが、大の大人が両手で手を繋がれるというのはどこか気恥しいものがあった。
メルクは嬉しいながらも、少し困った顔でそれらを見ていた。
もうユーリ達が第5界層へ挑んで数日が経過していた。
少しずつだがメルクもレイヴンと打ち解けつつあり、まだまだ昔のような笑顔には程遠いが笑顔が見られつつあった。
『っ、』
「海風の突風ですね。大丈夫ですか?メルクさん。」
レイヴン「両手繋いでるから大丈夫だな!それにしても体重が羽のように軽いとは…それも善し悪しって事よねー。」
『すみません…、お2人には迷惑をお掛けしまして…』
レイヴン「迷惑だなんて思わないさ!メルクちゃんの手を繋げて、おっさんラッキーとは思うけど?」
「帰ったら体重測定をしてみましょう。毎日測れば健康チェックも出来ますしね。」
二人の好意を有難く受け取り、お礼を伝えると向こうから見慣れた人影がこちらに走ってくるのが見えた。
嬉しそうに手を振り、こちらへと向かってくるのはカロルとパティ、そしてエステルだった。
それを視認し、慌てて俯いたメルクにレイヴンが悲しい顔をした。
カロル「メルクー!」
エステル「はぁ、はぁ!もう、大丈夫、なんです?」
パティ「エステルは運動不足なのじゃ…。」
微笑ましい3人組の登場だったが、それとは反対に明らかにメルクの様子がおかしかった。
3人に対し、よそよそしい態度に、視線を逸らす行為。
今までと全く違う様子のメルクに3人が首を傾げた。
レイヴン「メルクちゃん。ちょっとおっさん、この子達と話してくるわ。」
『あ……行ってらっしゃい、ませ……』
カロル「メルク…?」
エステル「どうしたんです?」
3人の肩や背中を支え、メルクから離れていくレイヴンに、先程来たばかりの3人が非難の目を向ける。
しかしレイヴンも困った顔で3人を連れ、青年達の方へと向かっていった。
『……』
「宜しいのですか?話しかけなくても。」
『……わた、しは……』
「ふむ。ではメルクさん。私どもは帰りましょうか。」
『あ、はい…』
手を繋がれそのまま帰宅するメルクは、チラリとユーリ達の方を向いたがすぐに俯き、医者と共に帰宅した。
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カロル「ちょっと!何でメルクに会わせてくれないのさ!」
パティ「そうじゃそうじゃ!感動の再会をどうしてくれるんじゃ!」
それを見たユーリがすぐに察したのだ。
面会できるよう状態では無い、と。
ユーリ「……何があったんだ?」
レイヴン「ちと、面倒な事になっててな…。」
頭を掻き、気まずそうに話すレイヴンに皆が怪訝な顔で見遣った。
レイヴン「メルクちゃん……もしかしたらあちらさんの方に行くかもしれない。」
「「「え?!!」」」
フレン「…どういう事ですか?」
レイヴン「もう後戻り出来ない。ギルドに戻るしか選択肢は無かったんだ、ってな……」
ユーリ達が来るまでのところでの少女との会話や、レイヴンのこうだろうという予測見解、そして開いてしまった少女との距離感…全てを話した。
最後に少女が見せてくれた揺らいだ瞳……あれに全てを賭けるしかないが、それでも今一つ説得が足りない。
「「「……。」」」
落ち込んだ様子のエステルやカロル、そしてパティ。
だからあんなにも前と違い、よそよそしかったのか。
ユーリ「ともかく本人と会ってだな。」
レイヴン「何とか少しだけ笑顔になる様にはなったけどな…。」
ユーリ達はレイヴンの話を聞きながら、又は第5界層の話をしながら移動を開始する。
医者の自宅へと入ると、医者だけが廊下へと顔を覗かせ、病室からのそりと出てきた。
しかし医者が告げた宣告は仲間達には、大変に厳しいものだった。
レイヴン「メルクちゃんは?」
「すみませんが、面会禁止ですね。」
「「「え…?」」」
「医者として、あなた方をメルクさんに会わせる訳にはいきません。残念ですがお引取りを。」
レイヴン「ちょ、メルクちゃん…そんなに具合が悪くなった、とか?」
「お引取りを。」
ユーリ達の背中を押し外へと出すとそのまま扉を閉めてしまった。
それに何人かが憤慨して、扉を睨みつける。
何の説明もなしに外に出されて怒らない方がおかしい!
そんな仲間たちの声を聞いて、レイヴンが困った顔で頭を搔き、扉を見る。
まさか自分まで追い出されるとは。
ユーリ「取り敢えず会えないんだったら宿屋にでも行くか…。向こうも何か事情があるんだろ。」
カロル「だとしても酷いよ!こっちの話も聞かずに追い出すなんてさ!」
エステル「メルク…、私達に会いたくないのでしょうか…?」
ジュディス「あのお医者様が言ってたでしょ?医者としてあの子に会わせる訳にはいかない、って。あの子の事を考えた末に、あの子の主治医としてお医者様が出した結論だと思うけど?」
リタ「ていうか、あの医者…。本当に医者な訳?怪しさ全開じゃない。」
それぞれが愚痴を言う中、ユーリとフレンは顔を見合せ肩を竦める。
メルクの事になると、皆は頻りに怒ったり泣いたり感情をこれでもかと剥き出しにするというのに、肝心のメルクがこれを見たらどう思うのだろう。
ユーリ「取り敢えず行こうぜ。ここに居ても邪魔になるだろ?」
フレン「ノール港にある宿屋へ行こう。そこで今後の事を考えればいいさ。」
二人の言葉に怒りを表している子供組が渋々頷く。
確かに何も始まらないが、あの医者に一矢報いたい気分だ。
それでも扉をジッと睨んでいた子供組をユーリ達が背中を押し、強制的に移動させた。
やれやれ…暫くは怒りが収まらないだろうな、これ。
ユーリは予想出来る未来に思わず溜息をついたのだった。
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「行きましたよ。彼ら。」
『……。』
「医者として。今の貴女を他の方に会わせる訳にはいきません。良くなってからなら、幾らでもどうぞ。」
『……ありがとうございます。ご迷惑をお掛けして…』
「いえ。迷惑などとんでもない。医者としてやるべき事をやったまでですよ。ムフフッ…!」
窓の外から見えるユーリ達は何処かに向かうようで、カロルやパティ等の背中をユーリ達が押していた。
何とも奇妙な構図だが、その姿にメルクは俯いて静かに瞳を曇らせるのだった。