第5界層 〜不朽不滅の幽鬼の塔〜
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___帝都ザーフィアス、城内
城へと戻ったユーリは兵士たちにフレン達の動向を聞いていた。
どうも先に帰ってきていたみたいで、ユーリが戻るとすぐにエステルやカロルが駆け寄ってきた。
近くにメルクが居なかったからか、悲しそうな顔で2人は近寄ってきていた。
エステル「やっぱり見失ってしまいました…?」
カロル「そう、だよね…。」
後ろから他の面々もやってきたが、その顔はいつも通りだった。
恐らくユーリの顔が悲しみに暮れてないから、何となく悪い方ではないと勘づいたのだろう。
リタ「で?何があった訳?」
ユーリ「順を追って言うから、取り敢えず中に入ろうぜ?」
中に入り、客間に来た仲間達は先客に目を瞬かせていた。
ココとロロが心配そうに見ていたからだ。
その横ではメルクのボディガードであった双子も暗い顔でユーリ達を窺っていた。
一番に心配しているのは彼らだろう。
ユーリは今までにあったことを全て話した。
メルクの事、そして〝神子〟の事や、ヴィスキントと答え合わせをした事、その全てを。
それを聞いた仲間達は暫く黙っていた。
感傷に浸っていたのかもしれないが、一番ショックを受けていたのはココとロロだった。
まさかメルクが裏切りの行為をしていたなんて、信じられないと呆然としていた。
あんなにも優しく姉のような、母親のような人が。
だが、メルクの願いを聞いた2人は大きく頭を振りその考えを打ち消した。
まだメルク姉は悪い方に傾いていない。
だからか、2人は希望に満ちた顔でユーリ達を見た。
ココ「絶対、メルク姉を治して、助けてくれよな…!!」
ロロ「メルクお姉さんが裏切るなんて有り得ません!!……まさか、あの人の洗脳にかかってたなんて驚きですが…でも、まだやり直せる場所にいます!!どうか、メルクお姉さんを処刑しないでください!!」
頭を下げる2人。
前までは土下座をしていたのに、どうやら剣を習ってる内に騎士達に矯正させられたようだ。
仲間達は大きく頷き、ココとロロを見た。
大丈夫、必ず助ける。
そんな気持ちを込めた頷きも、2人には伝わったようでようやく笑顔になった。
ジュディス「じゃあ、素材集め再開ね。第5界層にあるお化けの布よね。」
リタ「なんでアイツにやらせないのよ!!他のやつにしてよね!!?」
カロル「めっちゃキレてるよ…」
カロルがとばっちりを食らわない様にさり気なくリタから離れる。
それにエステルとフレンが苦笑いで見遣り、レイヴンも一応離れていく。
エステル「と、とにかく!!お化けの布を取りに行きましょう!〈
フレン「その前に、準備をしておきましょう。第5界層…恐らく一筋縄じゃいかないと思いますから。」
そう。
界層を深く潜っていく毎にそれに比例して敵の強さも強くなっていく。
それを聞いていた仲間達はカロルを見遣る。
カロルなら冒険書だったか、冒険譚のような本を買っていたであろうから。
カロル「へへっ!ちゃんと勉強してきたよ!第5界層〜不朽不滅の幽鬼の塔〜はその名の通り、お化けや死人が沢山いる場所なんだ。ただ、塔の中は狭いから1回につき3〜4人って推奨されてるんだ。下手したら動けなくなって罠とかで全滅、なんてのも有り得るらしいよ?」
リタ「じゃ、じゃあ何人かはあぶれるわね!」
ユーリ「まぁ、カロルは案内役として入れるとして…」
カロル「え?!何でそうなるの?!」
子供組はどうも行きたくない様子である。
エステルも苦手な分類なのか、顔が強ばっている。
ユーリ「じゃあ、戦力の問題もあるから俺とカロル、それからパティとリタ行くぞ。」
リタ「何でそうなんのよ!!!」
フレン「じゃあ、エステリーゼ様とジュディスさん、それから…」
レイヴン「おっさんはメルクちゃんの所にでもいってるわ。誰かは居ないとでしょ?」
リタ「ちょっと!1人だけ楽してんじゃないわよ!!」
フレン「じゃあ、僕とエステリーゼ様、ジュディスさんとラピードで行きましょう。」
ジュディス「ふふ、よろしくね。騎士団長さん。」
文句はあるが、ともかくメンバーは決まった。
後は罠の場所とかを共有しつつ、各々〈
レイヴンはユーリから医者の場所を聞き、カプワ・ノールへと向かうのだった。
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___カプワ・ノール
レイヴンは言われた場所へと辿り着き、扉を潜る。
暗い廊下を目を細め見遣ると、奥からのそり、のそりと誰かが歩いてくるのが見え、思わず身構える。
敵だったらすぐにでもナイフを抜ける様に、柄に手をかけておくと、奥から出てきたのは噂の不健康そうな白衣の男性だった。
「……ムッフフゥ…!いらっしゃい。ここにはどんな御用で?」
レイヴン「メルクちゃんの様子を見にきたんだが…」
「あぁ。お仲間の方でしたか。失礼しました。ささ、こちらへどうぞ。」
猫背の男性はレイヴンよりも高く、細身ではあるが威圧感を感じさせる身長だった。
廊下を歩き、とある部屋の前へと来た医者はコンコンと軽いノックを入れる。
「メルクさん。お客様ですよ。」
『?? はい。』
もう起きていたのか。
なるほど、腕の良い医者というのは本当らしい。
レイヴンが中に入り、気さくに「よっ」と手を挙げればハッと息を吐き、言葉に詰まらせると俯いたメルクちゃん。
……そりゃあ会いにくいよな。
裏切り者として名の知れた己だからこそ、仲間には会いたくなかっただろう。
俺も少し前そうだったから。
レイヴン「……元気そうじゃない。体、大丈夫なの?」
メルクちゃんへと近付いて、極めて優しく話し掛ける。
その後ろからは医者がついてきて、メルクちゃんの具合が悪くなった時用なのか、それとも俺への監視用なのか近くに佇んでいた。
一瞬医者を一瞥したが、すぐにメルクちゃんの顔を覗き込んだ。
『……。』
それでも気まずそうに視線を逸らされる。
そこには、いつもの柔らかな少女の笑顔は無かった。
苦笑いをして近くの椅子に座ろうとしたが、医者が時計を見て呟く。
「ふむ。メルクさん。散歩の時間です。」
『あ、はい…。』
タイミング悪すぎやしないか?
丁度話し掛けようと思ってたんだけど?!
と、後ろに向かって言おうとしたがメルクちゃんがベッドから立ち上がり、ふらついた事でその考えも吹き飛ぶ。
慌ててその体を支えて驚いた。
メルクちゃんが、通常の女性の体重ではないからだ。
こんなの、おっさんである自分でも片腕だけで持ててしまうだろう。
青年からおおよその事は聞いてはいたものの、これはこれで心配に拍車が掛かってしまうほどの異常さだ。
息を呑んだ俺を見て、悲しそうな顔をしたメルクちゃんは一言俺に謝ると大人しく医者の後に着いて行った。
残された俺は一瞬どうするか考えたが、すぐに2人を追いかけることを決めた。
……少し厄介なのが、以前よりも開いてしまった距離感だ。
これは仲間達が来る前に色々と根回ししておかないとな、と頭の後ろで手を組んでメルクちゃん達を追い掛けながらそう感じた。
でないと、このまま気まずいのが続けばきっとメルクちゃんは……。
嫌な想像をして頭を振る。
いや、そうならないように根回しするのだ。
そう、このまま気まずい状態が続けばメルクちゃんはきっと向こうに行ってしまう。
メルクちゃんの願い…、ギルドマスターの願いを叶える、という自身の願いを自分の手で叶えに行くために。
俺たちと居るという願いは、きっと諦めてしまうだろう。
レイヴン「……残っておいて良かったな。」
呟いた言葉は、カプワ・ノールの風に流されて行った。