第4界層 〜進退両難なる黒雨の湿原〜
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___帝都城内、病室
牢獄でガタイの良い男達と会った後、引き篭っていたメルクだったが、翌日になるといつもの笑顔でいた。
それにサリュとカリュが安堵してメルクへと話し掛ける。
サリュ「メルク様。お加減どうですか?」
カリュ「昨日の事は忘れましょう?アイツらは嘘つきですから!」
『ありがとうございます。体の方は大丈夫ですよ?』
サリュ「それは良かったです!」
カリュ「無茶はダメですからね!」
双子の優しい言葉にメルクもはにかんで応える。
暫くは双子と他愛ない話をしながら三人で和んでいくと、その内エステルやフレンも合流し、五人でささやかなお茶会をした。
それはメルクにとっても束の間の休息になった。
『(…昨日のあの話で、何処まで私よ正体がバレたんでしょうか…。それにあの人達の顔は諦めないという顔をしていました…。ならば、私はそのまま攫われてしまえばあのお方の所へ…)』
サリュ「メルク様?」
カリュ「大丈夫ですか?」
エステル「何かあれば、私たちに話して下さいね!何でも力になりますよ!」
フレン「エステリーゼ様の言う通りです。貴女は我らの保護対象なんですから、怖いことは何もありません。困った事や悩んでる事があれば遠慮なく話して下さい。」
『皆さん…。ありがとうございます。私は、果報者ですね?こんなにも皆さんから心配してもらえて…。なんて幸せ…』
本当に、そう思う。
こんなにも心配される事はあまり無かったが故に、余計にその優しさが身に染みてしまう。
だからこそ、ここから離れるのを迷ってしまうのだ。
ここに居れば、皆がいて、楽しく話したりお茶したり出来て……。
それに…、気になる彼もここには居る。
でもここに居れば、私の未来には必ず死が待ち受けているから…。
だからこそ……私は、ここから離れなければならないのだ。
ここで処刑されてしまえば、そこに居る人は全員───
嫌な考えをして身震いをしてしまったメルクを皆が心配そうに見る。
〝神子〟が故意に殺されてしまえば、そこに居る者達は神による裁きが下るのだ…。
石版にそう書かれていたので、きっとそういった事が起こると思われる。
だからこそ……、だからこそ私は、やられる訳にはいかない。
そして、アビゴール様の願いも叶えて…。
そしたら……ゆっくりとこの世界で贖罪をしていって…。
カリュ「───メルク様っ!!」
『っ!』
あまりにも深い思考に入っていたからか、カリュに呼ばれている事に全く気が付かなかった。
ビクリと震わせ、慌ててカリュの方へと向けばそこには心配そうに見遣る4人が居た。
心配を掛けてしまった。
いけない、いけない…。
平常心…、平常心……。
『ごめんなさい?いけませんね…皆さんの前で考え事をしてしまうなんて…』
サリュ「メルク様、それは仕方ないですよ。」
フレン「……ともかく、今日の所はゆっくり休むといい。昨日の今日で押しかけてすまなかったね。」
『いえ、ありがとうございます。話をすると気が紛れるのでとても有難いです。本当、ありがとうございます。』
ニコリと微笑んだ瞬間、病室の扉が荒々しく開けられる。
そこには息を切らし、顔を真っ青にした兵士が立っていた。
それに怪訝な顔をしてフレンが声を掛ける。
フレン「何事だ。」
「騎士団長様っ!!奴らが脱走しましたっ!!」
フレン「なっ──」
パリン!!
その瞬間メルクの後ろにあった窓ガラスが割られ、3人の屈強な男が中へと侵入してくる。
側に居た2人はサリュとカリュに攻撃を仕掛け、真ん中の男はメルクの口元を塞ぎつつその体を抱き上げると一瞬にして窓から外へと連れ去る。
フレン「メルクさん?!!」
エステル「急いで追いかけましょう?!」
サリュ「騎士団長様!ここはお任せをっ!」
カリュ「それよりも早くメルク様を!!」
双子の言葉を受け、フレンは大きく頷くとエステル共に外に出て男の後を追おうとするも、もうその姿は見えないので兎に角城の外へと向かう。
フレン「くそっ…!まさか、脱走されているとは…!!」
エステル「大丈夫でしょうかっ?!メルク…!」
フレン「分かりませんっ…!ともかく、早く奴らの後を追いましょう!!」
城を後にした2人は下町につくとそこに見知った顔ぶれがあることに気付く。
慌ててその顔ぶれに声を掛け、質問を投げかける。
フレン「ユーリっ!!」
ユーリ「ん?どうした、そんなに慌てて…」
エステル「ユーリ!メルクを見ませんでしたか?!あの男達に攫われたんですっ!!」
「「「「「え?!」」」」」
レイヴン「向こうさんは何がしたいんだ…?」
ユーリ「俺たちは見てねえが…行く場所のアテならある。」
フレン「本当か!?早くメルクさんを連れ戻さないと…彼女は今……心を病んでいるから、何を起こすか分からないっ!!」
ユーリ「……どういうことだ?」
フレン「説明は後だ!そのアテとやらを早く教えてくれっ!」
しかしそんな皆の前に脱走していた屈強な男達が立ちはだかる。
「よぉよぉ?そんな急いでどこに行くつもりなんだ?けへへ」
「俺たちにも教えてくれよー?」
「「「ハハハハッ!!」」」
フレン「くそっ、こんな時に…!!」
ユーリ「早く片付けるぞ!」
言うまでもなくユーリ達の足止めをする男達。
そこへサリュとカリュも到達し、応援に駆けつけてくれる。
屈強が故に中々倒せない相手だったが、ユーリ達も幾千の闘いをこなしているのだ。
最終的にはユーリ達の勝利で終わり、男達は兵士や騎士達が取り押さえていた。
ユーリ「よし、〈
エステル「え?何で〈
レイヴン「案内人のベンは、〈怪鴟と残花〉のヴィスキント・ロータスだからよ。」
フレンエステル「「っ!?」」
衝撃の事実に息を飲む2人。
では、何故今までメルクを見て見逃していた?
メルクも反応しなかったのは何故?
ユーリ「疑問は後にしろ!とにかく急ぐぞ!」
ジュディスがバウルを呼んでくれたお陰ですぐにそれに乗り〈
フレン「どういうことだ?何故彼がヴィスキント・ロータスなんだ?」
ユーリ「メルクもベンもグルだったって事だよ。」
エステル「そ、そんな…!有り得ませんっ!だってメルクはギルドの惨状に心を傷めていましたし、何度も彼らに攫われてるんですよ?」
レイヴン「だから本人に直接聞かないとな、って言ってたんだが…何がなんやら分からなくなっちまったな…。」
フレン「……その話、合ってるかもしれないな。」
エステル「フレン?!」
フレン「メルクさんは、あの男たちの話にかなり動揺していた…。あの笑顔が崩れる程に…。それほどまでに彼らの言葉は彼女に響いていたはずなんです…。ユーリ達の話が本当なら、途中僕たちに分からない合図があってもおかしくはありません。そうすれば彼女のあの動揺にも説明がつきます。」
エステル「で、でも、それは男達が脅していたからで…」
ユーリ「待ってくれ。こっちも話が見えないんだが。」
フレンとユーリはお互いの情報交換をした。
それを聞いていた仲間達の顔も段々と曇っていく。
どれが真実で、どれが嘘の情報か見極める必要がある。
それには何としてもメルクを取り戻す必要があった。
カロル「ねぇ…ひとつ良い?」
フレン「ん?」
カロル「この件が片付いて、メルクが嘘ついてたとしたら……メルクは牢獄行きになるの?」
フレン「……事と次第によっては…。」
エステル「っ!」
暗い影を落とす仲間達だったが、心の整理がつく前に〈
怯む足を無理やり前に出し、案内人の元へと仲間達は向かう。
その心は酷い痛みと悩みに苛まれながら……。