第1界層 〜変幻自在なる翻弄の海〜
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メルクが船内に入ると、先程までこちらを嫌煙していた男達がいそいそと自身の部屋へと立てこもった。
どうやらこちらに協力してくれる気は無さそうだ。
肩を竦め、食材の把握為にメルクは倉庫らしい場所まで移動をした。
持っていたペンと紙を使って食材を記入して行けば、おおよそ半月程の食料はあるように思えた。
食べ盛りの子供が3人…いや、エステルさんも入れれば4人。
そして成人男性がユーリさんやフレンさん、レイヴンさん……後、部屋にこもった人たちの分も合わせれば6人分。
後は成人女性が2人と、わんちゃん1匹。
その数を合わせたところで、1週間の航海なら余裕で踏破出来るだろう。
しかし、その量は他の誰かがツマミ食いなどしなければ、だ。
紙に書かれた食材を見て、今日は何にしようかなと頭で思い描く。
折角だし、凝ったものでも作ったら先程の部屋に立てこもってしまった男性方も食べてくれるのではないだろうか?
『カレーライスがいいかしら。でも、今日だけなら少し贅沢にしてもよさそうだし…』
「ボク、カレーがいい!」
「あたしもカレーでいいわよ?」
「決まりなのじゃ!」
「楽しみですね!メルクのカレー!」
追いかけて来ていたらしいカロル達に、多少驚いた顔を見せたがすぐに笑顔になり、皆の頭を撫でた。
「あの人たちは?」
『部屋にこもってしまわれて…。うーん…、後でカレーのお裾分けしてきますから大丈夫ですよ。』
メルクが心配そうに部屋の方を注視したが、リタやカロルは彼らに批判的だ。
「あんな奴らほっときなさいよ。その内勝手に出てくるわよ。」
「ボク、あの人たち苦手だな…」
そんな話をしているとその後ろから今度はユーリ達がやってきていた。
狭い倉庫にぎゅうぎゅうになってしまい、ユーリ達は外で待つことに。
カロル達は今日の食材である玉ねぎや人参などを手にし、厨房まで持っていく。
メルクが手にスパイスを持っていた為、後に来ていた人達にも今日はカレーだと言うことが分かった。
「今日はカレーか。」
「メルクちゃんの手作りなら何でも食べるわよ!おっさん!」
「ふふ、楽しみね?カレーは作り手の愛情や隠し味が一番顕著に出る料理だもの。」
「お前……それ本当に楽しみにしてんのか?」
「あら、失敬ね?とても楽しみにしてるわよ?」
そんな会話を繰り広げながらユーリ達が厨房まで行けば、何故かメルクではなくカロルやエステル、パティが服の裾を捲りあげ、やる気満々を見せている。
そんな彼らの後ろに優しい笑顔で見ながら皆にカレー作りを伝授しているメルク。
……おかしい。彼らはカレーを作るなど造作もないはずなのに。
「ボク、カレー作ったことあるから任せてよ!」
「じゃあ、ウチは人参を切るのじゃ!」
「あ!ずるいです、パティ!玉ねぎは目に染みて痛いんです!」
「ふっふーん!エステルが食材取るの遅かったのが悪いんだからね!」
カロルが包丁を持ち、ジャガイモの皮むきを始める。
隣ではパティが人参をスルスルと皮むきをして行き、泣く泣くエステルが玉ねぎを切ろうとした瞬間メルクがエステルの手を止めた。
『エステルさん。玉ねぎは私がやりますから、トマトをお願い出来ますか?』
「え?ですが……」
『ふふ。では、私がトマトを切るの苦手だって言ったら……やってくれますか?』
「!! それじゃあ、私はトマトを切りますね!」
まるでお母さんに見て見て!と言わんばかりのカロル達の光景にユーリ達も優しくそれを見守る。
リタはカロルからどうやら〈
その後も皆がメルクに確認しにいく様は、まるで親子のようだ。
メルクも決して叱ることはせず、あの笑顔で褒めて、褒めて、褒めちぎるのだ。
そりゃ子供じゃなくても嬉しくなるだろう。
……これじゃメルクの手料理というより、料理教室の方が正しい気がする。
『では味付けしてしまいますので、皆さんは少し休憩しててくださいね。』
「「「はーーい。」」」
大人しく退散するカロル達。
今度は大人達がメルクの周りに集まってくる。
「子供の扱いが得意なのね?」
『ふふ。そう見えましたか?』
「あぁ。なんか手馴れてる感があったな。」
『そうですか…。それなら私も嬉しくなります。ちゃんと彼らとコミュニケーション取れていたのか心配だったので。』
「全然!!もう、それはそれは聖母のようでしたよ!」
大袈裟に言うレイヴンに仲間たちが冷たい視線を送る。
しかしメルクだけは、その言葉に嬉しそうにはにかんだ。
いつも冷たい反応されるレイヴンには、その反応は珍しすぎて逆に反応に困る。
『……』
休憩をするカロル達を見守る姿は、本当に母親のようだ。
そんな癒しの空間の中、フレンは大量の香辛料を持って厨房に現れた。
それにユーリ達は「やばい」と一言呟き、フレンと香辛料を離そうと躍起になる。
メルクはその大量の香辛料に目を瞬かせたが、くすりと笑うとその香辛料を受け取った。
『一度に沢山の香辛料を摂取すると、幻覚作用が起きたり、最悪死に至るケースもあります。ですからこちらは今日の所は私が預かっておきますね?』
「そ、そうなのか……」
『ふふ、大丈夫です。人は千差万別…。味覚が違ったりすることを恥じる必要はありませんよ。』
「メルクさん…!」
感動したようにフレンがメルクの名前を呼び、言葉を切る。
そしてフレンは、大量の香辛料をあっという間に倉庫へと戻しにいった。
こうしてカレー作りは賑やかな内に幕を閉じた。
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メルクは出来たてのカレーを持って、とある部屋の前に佇んでいた。
コンコンと控えめなノックをしたが、中から反応は全くなかった。
それに俯き、ほわほわと湯気を立てているカレーを見やる。
『あの、ここに置いておくのでまたお腹のすいた時に食べてください。』
「……」
それでも出てこない部屋の主に、メルクが少し心配そうにして部屋から離れる。
それを見ていた仲間たちは、苦い顔でメルクを見遣った。
可哀想だし、何より優しすぎる彼女にユーリ達も個々で色々思う所があった。
今日は……皆それぞれで色々あったから。