第4界層 〜進退両難なる黒雨の湿原〜
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ユーリがレイヴンへ頼み事を依頼した後、メルクも無事に起きて診察を受けさせる。
概ね良好と医師からの診断が出たので、無理しないという条件付きで帝都へと向かう事になったメルク達。
早めに帝都へ来いというフレンの言伝を守る為だった。
カロル「メルクは戦わなくていいからね!」
エステル「ここら辺の魔物なら任せてください!私たちでやっつけますからね!」
リタ「アンタが余計に風邪こじらせたら厄介だから、アンタは歩く事だけに集中してなさい。」
仲間たちの気遣いを笑顔で頷き、ユーリ達一行は帝都へと向かっていた。
急ぐ為にバウルに乗せて貰っているのだが、空を飛ぶという経験はメルクには初めてで、船の欄干に手を付き外を眺めていた。
空を飛んでるので魔物なんて出るはずは無いのだが、それでも用心するに越したことはない。
しかしそれも杞憂に終わってしまい、バウルからゆっくりと降りる仲間たちを騎士団が迎えていた。
フレン「無事で良かったです…。現在の具合はどうですか?」
『早めに着いたので全く疲れていませんよ?ふふ、ありがとうございます。』
そんな二人の間にココとロロが現れ、メルクに抱きつく。
騎士団の面々や仲間たちには大人びた雰囲気を出す二人だが、メルクの前ではまだまだ子供な二人に仲間たちも笑顔でそれを見届ける。
「今日こんなことがあったよ」「この間散歩中に綺麗な石を見つけて──」等、他愛ない話に優しい笑顔でそれに相槌を打つメルクが、段々と二人のお母さんに見えてきたのは言うまでもない。
『ふふ、まだまだ話し足りないでしょうが、そろそろ中に入らせてもらいましょうか?皆さんはお疲れですからね?』
「「はーい」」
メルクの両手にそれぞれ子供達が手を繋いで、中へと走り出す。
その為、走らされる羽目になったメルクも幸せそうな笑顔で子供たちを見ていたが、カロルやエステルが慌ててそれを追いかける。
カロル「まだ病み上がりだから走らせたらダメだよ!?」
エステル「待ってください!メルクは先に医務室です!!」
パティもそれを追いかけていって、他の面々からすると嵐が過ぎ去った気分だ。
ともかくエステル達がメルクを医務室に連れていくだろう、とそれを見届ける。
ユーリ「そっちは大丈夫だったか?」
フレン「あぁ。大丈夫だ。…体制の見直しにかなり時間が掛かってしまったが、これなら大丈夫だろう。」
ユーリ「そりゃ、ご苦労さん。」
フレン「そっちも。」
こちらも他愛ない話を進め、話し始める。
帰還した皆は暫くの休暇を楽しむ事にしたのだった。
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___帝都ザーフィアス城内、医務室
ココやロロ、カロル達に連れられ医務室にやって来たメルクは医師の診察を受けていた。
他の医師からの引き継ぎがなされていたのか、メルクに対し暫く安静にしているよう言伝る。
カロル「やっぱり、安静にしなくちゃダメじゃん!」
エステル「もう走らないで下さいね?」
「「『はーい』」」
パティ「ちゃんと安静にするのか心配じゃの…。」
医師からも再三大人しく、と言われた為にメルクは素直に且つ大人しく医師と共に医務室から病室へと移動する。
病室のベッドに腰掛けると、医師も漸く安心したのか笑顔で頷く。
「くれぐれも…くれぐれも!まだ走り回ったり、歩き回らないように!」
『はい。』
「では大人しく寝てて下さいね。」
そう言って医師は立ち去っていき、メルクは一人大人しくベッドへと横になった。
しかし眠い訳では無いので、目を閉じることもせずに暫くベッド上でボーッとしていると、誰かが中に入ってきた様で扉を開ける音がした。
メルクが扉の方へと顔を向けると、見知らぬ兵士の人、二人がこちらに敬礼して入ってきていた。
「本日からメルクさんのボディガードをさせて頂きます、サリュと!」
「カリュで御座います!以後お見知り置きを!」
元気のいい二人の挨拶に身体を起こし、笑顔でお辞儀をする。
まさか常に管理されるとは思ってなかったが、それでも彼らも仕事なのだから仕方が無い。
『メルク・アルストロメリアと申します。どうぞよしなに?』
「「はっ!」」
再び固い敬礼をした二人は何処と無く緊張しているようで、メルクは目を丸くした。
もしかして新人さんだっただろうか?
見た目からしても若そうだし、筋肉もしっかり付いてはいるが熟練という程では無さそうだ。
メルクは優しく二人へと声を掛けることにした。
『もしかして新人の方でしょうか?』
「いえっ!こう言った任務に就くのは初めてでして!」
「右に同じくであります!」
『あらあら?』
だからか。
こんなにも緊張して可哀想に。
メルクはベッドから降りると二人が慌てて近くに寄ってくる。
きっと医師から聞いているのだろう。
安静にしてろと。
そんな二人に笑顔を向けて、二人の手を優しく取った。
少しの間かもしれないけれど、二人には頑張って欲しいから。
『これからどうぞ、よろしくお願いしますね?』
「「!! …はいっ!」」
嬉しそうに笑う二人は漸く少しだけ緊張の解れた顔をしていた。
その後はと言うと、二人には慌ててベッドに潜る様に急かされたり、何処か具合が悪くないかなんて忙しなく聞かれたりと忙しいことこの上ない。
先程までの静寂が嘘のような今に、私は人知れず笑ったのだった。
フレン「……。」
ユーリ「どうやらファーストコンタクトは上手くいったようだな?」
フレン「メルクさんの事だから大丈夫だとは思っていたが…、これなら安心して任せられそうだ。」
ユーリ「大丈夫なのか?初めてのやつに任せちまって。」
フレン「あの二人は普段ああやって緊張してはいるが、戦闘の才は兵士たちや騎士の中でも群を抜いている。安心してくれて大丈夫だ。」
ユーリ「…そうか。」
扉向こうからこっそり見ていた二人は安堵の息を吐き、扉から離れる。
警備の体制を直す時に一番重きに置いたのは、メルクとの相性だった。
彼女が苦しくならない且つ、彼女が笑顔でいられるようなそんな人材を、と思い探し回った末、見つけた二人。
あの二人は双子で、兵士として入ってきてからはソロでは全くと言っていいほど実力を発揮しなかった。
だが、今回メルクの警備という事で二人付けようと思っていた所、サリュとカリュの二人の見事な連携に上からも賞賛され今回、白羽の矢が立ったということだ。
それに双子であればお互いを認知しているし、犯人側も下手な事……、例えばカリュかサリュのどちらかのすり替えなども出来まい。
フレン「後の問題は〝神子〟の奪取か…。場所が分かりさえすれば、問題は無いのだが…。」
ユーリ「こればっかりはなー?時を待つしか無いだろうさ。」
フレン「あぁ。そうだな…。急いては事を仕損じる、だな。」
ユーリ「ははっ!そういう事だ。」
再度中の様子を見れば心配なさそうで、三人で何を話していたのか可笑しそうに笑っていたので、ユーリとフレンもお互いを見て笑っていた。