第4界層 〜進退両難なる黒雨の湿原〜
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スキット① 【おやゆび姫】
ユーリ「くそ、メルクが標的だと分かってたんだが…」
ジュディス「仕方ないわよ。仲間がいるなんて知らなかったんだし、あんなスピードで捕まれられたら誰も反応出来ないわ。」
フレン「元々メルクさんを捕まえる気だったんでしょうか?」
カロル「多分そうかも。ユーリも言ってたけど、昨日帰る時にも後をつけてたみたいだし……」
ジュディス「こういう状況…何かに似てるわね。」
カロル「え?なに?」
ジュディス「思い出したわ。親指姫よ。」
フレン「確か…、人の親指程の小さなお姫様の話、でしたよね?」
ジュディス「ええ。その状況にとても似てる、と思って。」
カロル「どんな話なの?」
ジュディス「とある老婆は子供もいなくて寂しい思いをしてたんだけど、そこへ魔女がお花をプレゼントしたのよ。お花を元々好きだった老婆はそれを見事育て上げた。するとそのお花から女の子が出てきた……」
フレン「それが親指姫、という事ですよね?」
ジュディス「ええ、そうよ。」
カロル「へぇ…!それから?」
ジュディス「親指姫はとても美しく育っていって、とても歌の上手い子だったわ。」
カロル「本当にメルクみたい……」
ジュディス「そこへ、とあるカエルが親指姫を見て感嘆したの。〝なんて美しい娘だ。そうだ、息子の花嫁にしよう〟とね。」
カロル「ごくり…」
ジュディス「それでそのカエルは親指姫を攫ってしまうのよ。親指姫は怖くて悲しくて、泣くしか出来なかったそうよ?」
フレン「よく覚えていますね…」
ジュディス「ふふ、この話結構昔から聞かされてきたから。それで覚えてるのよ。」
ユーリ「今の現状そのまんまじゃねえか。」
フレン「それなら彼女は今頃泣いて怖がってるだろうね。」
カロル「え、そのお姫様はどうなるの?カエルの花嫁にされちゃうの?」
ジュディス「いえ?確か…魚が逃がしてくれたのよ。」
ユーリ「……魚が居そうな水じゃないことは確かだな。」
ジュディス「その後は何度も何度も親指姫は攫われてしまうのよね。可哀想に。そのあまりの美貌を持つ親指姫を他の人が黙ってはなかったのね。」
フレン「……メルクさんも、何度も攫われてますね…。」
ユーリ「メルクは親指姫の化身かなんかなのか?」
カロル「で?で?最後は?」
ジュディス「それが覚えてないのよ。残念だったわね。」
カロル「えぇ?!そこまで覚えてるのに?!」
ユーリ「エステルなら知ってるんじゃないか?好きそうな話だろ?」
カロル「よし、後で聞いてみよっと!」
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スキット② 【おやゆび姫の続き】
カロル「エステル!」
エステル「はい?どうしたんですか、カロル。」
カロル「エステルはさ、親指姫って話知ってる?」
エステル「はい!子供の頃よく読んでいました。」
カロル「よしっ!ねえねえ、親指姫の最後ってどんな話だったの?ジュディスが話すだけ話して最後覚えてないって言うから…」
ジュディス「本当に覚えてないのよね。」
ユーリ「それで気になってエステルに聞きに来たって事だな。」
エステル「なるほど。そういう事だったんですね。親指姫の最後はハッピーエンドで終わりますよ?」
カロル「どんな終わり方するの?何度も攫われるんでしょ?」
エステル「私が知ってるお話ですと、何度も攫われてる内に、親指姫は王子様と出会うんです。」
ジュディス「あら、そんな話だったかしら。」
エステル「実は親指姫は何度も修正されてるお話なので、本当の話はどれか分からなくなってるんです。」
フレン「さすがエステリーゼ様です。」
エステル「あ、ありがとうございます。」
カロル「で?で?話は?」
エステル「えっと、王子様は妖精族に住まう王子様だったのでその背中には綺麗な羽が生えていたんです。その王子様が親指姫を見つけて助けようとするんですが、何度か失敗するんです。」
カロル「ダメダメじゃん……」
ユーリ「使えねえ王子様だな。」
エステル「とある日、モグラの花嫁にされそうになった親指姫ですが、そこへツバメが来るんです。しかしモグラのいる地はとても険しい場所にあり、ツバメは親指姫を助ける時に怪我をしてしまったんです。モグラに追い詰められた親指姫とツバメですが、そこへ妖精族の王子様が登場して今度こそ親指姫を助けたんです。」
カロル「おお…!」
ユーリ「モグラと結婚なんて、陰鬱だな。」
ジュディス「そうよね。地の底に住むってことでしょ?私なら絶対逃げ出すわね。」
カロル「ジュディスは戦えるじゃん。親指姫はか弱いお姫様なんだよ?戦える訳ないじゃん!」
フレン「実際か弱かったかどうかは聞いてないんだけどね…」
エステル「えっと、それで王子様とツバメに助けられた親指姫ですが、その背中には綺麗な羽が生えたんです。妖精族の姫として迎えられた親指姫…。助けてくれた王子様と結婚して最後は幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたしです。」
カロル「おお!やっぱり物語はこうでなくっちゃ!」(パチパチパチ)
ユーリ「へぇ、そんな話だったのか。」
エステル「でも急に何で親指姫の話を?」
ジュディス「今の状況が親指姫と似通ってるって話だったのよ。」
エステル「あぁ!本当です!メルクが親指姫ですね!……という事は、メルクは今度…コガネムシとかモグラとか…次々に花嫁候補にされて…!!」
ジュディス「コガネムシなんて居たかしら?」
エステル「はい。私が読んだ物語ではコガネムシとカエルとモグラでした。ネズミとかも出てくるんですよね。最後の親指姫が歌って冬が春に変わるシーンなんて…!」
カロル「え?待ってよ、そんな話どこにも無かったじゃん。」
エステル「あ、あれ?本当ですね…。この話、何で読んだんでしょう?」
ジュディス「他の話と被ってるのもしれないわね。」
ユーリ「どっちにせよ、そのお姫様は可哀想なこって。」
フレン「だけど、今メルクさんの状況と全く一緒だから否定は出来ないな…。今後はモグラとコガネムシにも気をつけておこう。」
ユーリ「信じるのかよ…」
カロル「でも歌が上手くて美しい女の子だったら、メルクだって思っても仕方ないよね!……あの時の歌、すっごい好きなんだ…ボク。」
エステル「あの音楽室のやつですよね?私もなんです…!あの歌声とピアノの伴奏が混じって本当に綺麗で…!!」
ジュディス「私もあれは好きね。聞いてて本当に心地よかったわ。」
ユーリ「攫われる原因がそれもあるから、何ともいえねえが……確かにあの歌は良かったな。」
カロル「こうしちゃいられないよ!早くメルクを助けなきゃ!泣いてるかもしれないもんね!」
ユーリ「メルクがそんな、か弱い姫か?」
ジュディス「あら、女の子は誰だってか弱いものよ?王子様の助けがないと幸せになれないんだもの。」
ユーリ「へいへい。じゃあそのか弱いお姫様を助けに行くとしますかね。」
ジュディス「一番乗り気な癖に、よく言うわ。」
フレン「全くだな。」
ユーリ「お前ら…この間といい…何か俺に恨みでもあるのか?」
「「全然?」」
ユーリ「……。」
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スキット③ 【妖精の羽】
フレン「妖精の羽…か……」
ユーリ「どうした、急に。」
フレン「先程エステリーゼ様から親指姫の話を聞いた時、思い出していたんだ。もし、メルクさんに妖精の羽が生えれば…」
ユーリ「〝神子〟ってことか。…っていうか、あの話信じてるのかよ…。」
フレン「おとぎ話だと分かってはいても、もしかしたら、と思えてしまってね。」
ユーリ「もしメルクが〝神子〟だったとして、騎士団はどうする気なんだ?」
フレン「それは保護するよ。彼女はそれでなくとも保護対象だ。…後はギルドの方が上手くいってくれると彼女も心休まるんだが…」
ユーリ「……そうだな。」
フレン「妖精の羽に、ギルド……そう都合のいい話なんて無いよな…」
ユーリ「……まぁ、湿っぽいのは今の湿原だけで十分だな。」
フレン「ふっ、そうだね。」