第4界層 〜進退両難なる黒雨の湿原〜
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
___第4界層、休憩所
第4界層の中間地点にある休憩所で一日、身体を休ませた一行はメルクを先頭にまた黒雨の中歩き出していた。
レイヴン「せめてこの雨どうにかなんないかねー?」
リタ「文句を言う暇があるなら足を動かしなさいよ。」
レイヴン「少女達には分かんないわよ、おっさんの苦悩は。」
フレン「確かに…ただでさえ足場が悪いのに雨のせいで体温も低くなって、更に体力を奪われますからね。」
レイヴン「そうでしょー?ほら、青年は分かってくれてるじゃない。」
リタ「何かあんたに言われると腹が立つのよね…!」
拳を構えるリタを避けるように軽々と次の歩ける場所へと歩を進めるレイヴン。
リタ「やれば出来るじゃないのよ!そうやってずっと歩いてなさい!」
レイヴン「えー?」
リタの言葉に何とも言えない顔をしたレイヴン。
一方ではパティとジュディスがヌシへの討伐に向けての作戦会議を行っており、そのまた一方ではメルクの体調を心配する声をあげている面々がいた。
最初よりは快調な進み具合。
しかしそれも長くは続かなかった。
先頭を歩くメルクの前に、泥から姿を現した人の何倍もある大きなカエルの魔物が飛び出したからだった。
『っ!?』
カロル「え?!これって、ヌシ?!!」
ユーリ「メルク!下がれっ!」
メルクの前へ庇うように立ったユーリが武器を手にする。
しかしこの場所の位置的にも、まだ主が出るような場所では無いのは誰もが心の中で思っていることだった。
だったら何故?
《…………》
主はじっとユーリ達の前に立ち塞がるだけで何もしようとはしない。
しかしその視線は先頭に立つユーリにずっと注がれていた。
カロル「も、もしかして……お腹がすいて場所を離れてエサを探しに来た、とか…?」
ユーリ「有り得そうだな。昨日カロルは気付いて無かっただろうが、3人で休憩所へ戻る時、ずっとこいつに後をつけられていたんだぜ?」
カロル「え?!嘘でしょ?!なんで言わなかったの?!」
『一生懸命なカロルの邪魔をしては……と思って…』
誰もが息を飲み状況を伺う中、リタがメルクへと声を掛ける。
リタ「メルク!やるなら足場を作ってちょうだい!」
『……何もしてこなさそうだけど…このままでは立ち往生ですものね…。分かりました。』
リタの言葉を受け、例の作戦を行おうとメルクが歌い出す。
そして地面から岩が顔を出し安全な場所の所へと岩が現れていく。
しかしその歌が聞こえた瞬間、カエルの魔物は一瞬だけ目を見開きその後目を細めるとウットリとした顔つきへと変貌した。
その視線はやはりユーリへと注がれている。
ユーリ「(こいつ…まさか、メルクが目当てか…?いや、そもそも魔物にそんな知能があるのか?)」
そう、ユーリの後ろにはメルクが居て、その本人はユーリの後ろで実質魔物から隠れている状態で歌を歌っている。
注がれている視線はユーリではなく、その後ろのメルクだったのだ。
その証拠に先程この魔物はメルクの歌に反応していたし、昨日ユーリが何かの気配を感じたのもメルクが歌い、カロルを助け出す時だった。
《げこげこ♪♪》
「「「「「?!!」」」」」
メルクの歌に合わせてカエルの魔物が気持ちの悪い声で歌い出した。
カエル特有の声を出し、歌にノッているカエルにメルク以外の面々が引くように見ていた。
折角のメルクの歌が台無しではないか、と非難の視線も忘れず向けた。
そのカエルの魔物は徐々にその体を保護色である泥色から、可愛らしい桃色へと染めていき、余計にその不気味さを醸し出していた。
リタ「きも…」
レイヴン「あの歌とこの体の色は無いわー…」
ジュディス「そういえば一部のカエルって、求愛行動で体を染めるって聞いたことがあるわ。」
カロル「え、じゃあ今ピンク色になったのって……、ユーリにアピールしてるってこと…?」
ユーリ「カロルー、気持ち悪いこと言うなー?」
フレン「ふっ、ふふ…!」
ユーリ「おい、そこ笑うな!」
メルクの歌が終わると同時に桃色カエルの魔物が動き出す。
黒雨の天へと顔を向けて大きな声で鳴き出し、この激しい雨の中でもその声は辺りによく通っていた。
《ゲロロォォォォォ!!!》
その瞬間、メルクの後ろの泥からまた別のカエルの魔物が姿を現す。
そして、メルクを視認するとその大きな体躯を震わせ、口を大きく開けた瞬間、長い長い舌がメルクを捕えた。
驚きと体を魔物の長い舌で絡め取られた事で、メルクの手からは持っていたランプが落ちる。
『っ!』
ユーリ「っ、メルク!!」
ユーリが助ける前に、体重の軽いメルクはあっという間に長い舌に持ち上げられるとバクンと食べられてしまう。
人の倍以上ある魔物なのだ。
人を口の中に入れることなど造作もない事だった。
「「「「「!!!」」」」」
それには誰もが目を疑い、顔を真っ青にした。
桃色カエルの魔物が嬉しそうな声を出した後、メルクを食べてしまったカエルは泥の中へと身を潜めてしまい、助ける事が出来なくなってしまった。
桃色カエルも何処かへと飛び跳ねて行くのを仲間達が追いかけようとしたが、その瞬間皆が思いだす。
泥にハマったら終わりだ、と。
今まではメルクが居たので魔術で助けてもらえるとすっかり安心していたが、今は食べられてしまい、更に連れ攫われてしまったのだ。
そんな中で泥沼にハマってしまえば、近くに居る者でしか助ける事は出来ない。
ジュディス「あの魔物の目的は彼じゃなくてメルクだったって事ね。」
レイヴン「冷静に状況分析してる場合じゃないわよ?!」
カロル「ど、どうしよう…?!あのまま胃液で溶かされるのかな…?!」
リタ「ちょっと…!がきんちょ、変な想像しないでよね?!」
ユーリ「とにかく追うぞ!カロル、行けるか?!」
カロル「う、うん!やってみるよ!」
メルクが落としてしまったランプを持ち上げ、先頭を歩き出すカロル。
焦りからか、その速度は昨日よりも段違いだ。
桃色カエルの魔物はもう見えなくなってしまったが、それでも仲間たちは諦めなかった。
。+゚☆゚+。♪。+゚☆゚+。♪。+゚☆゚+。♪。+゚☆゚+。♪。+゚☆゚+。♪。+゚☆゚+。
___一方、食べられたメルク
『(どうにか、しないと…!)』
メルクは、未だにカエルの魔物の舌に雁字搦めにされていた。
ヌルヌルとする筈なのにその舌はいやに筋肉質で、身体を雁字搦めにされている為、暴れれば暴れる程強く拘束されていく。
その為段々と呼吸も辛くなってきて、暴れるのをやめた。
『はぁ、はぁ……息、が……』
キツい。
身体を拘束するこの舌が。
普通なら食べられたらそのまま胃液の方で消化されるはずなのに、一向にその様子がなく、むしろ奥へと行くのを防いでいるみたいに舌が口の中で固定されている。
その上、メルクが口の中で拘束されて居ても、この魔物が現在激しく動いているのが分かる。
どこに連れていかれるのか、しかし息がしづらいメルクはそんな考えを打ち出す前にどんどんと意識が薄れていっていた。
『だ、れか……助けて…。』
もう自分ではどうにも出来ない。
メルクはそのまま意識を手放した。
メルクを食べたカエルの魔物は、目的の場所へと着くと口を大きく開け、ゆっくりとメルクを取り出す。
そのままその場に用意された、草で器用に編まれた寝床へと気絶したメルクを優しく置くと、これまた大きな葉っぱを傘代わりに差して雨を凌げるようにしてあげる。
そこへ桃色カエルの魔物が帰還し、メルクの近くへと寄ると嬉しそうに飛び跳ねる。
そのままメルクが目を覚ますのを桃色カエルの魔物はじっと待っていたのだった。