第4界層 〜進退両難なる黒雨の湿原〜
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___第4界層、休憩所
第4界層の中間地点にある休憩所で、身体を休ませた一行。
そんな時に少しでも情報共有をしておこうと、休憩所内で会議が行われていた。
リタ「んで?ここのボスはどんな敵な訳?」
カロル「確か、ここのヌシは2体居るんだよね?」
『うん、そうね?ここの主は2体居るのだけれど…それだけじゃなくて、かなり難易度も高いとされているの。』
ユーリ「まぁ、2体いりゃ難易度は跳ね上がるよなぁ?」
『倒すことに関しては問題ないと思うの。ただ……倒すことに条件があるの。』
カロル「あ、それボク知らないや。」
『案内所の人が言うには、同時に2体倒さないといけないらしくて…それがかなり難しいみたいね?』
確かに2体同時に撃破は難しいだろう。
相手の様子を見なくてはならないし、この足場の悪い沼地にも気を揉まなくてはならないのだから。
リタ「そんなのあたしとあんたの魔術で同時に倒せばいいじゃない。簡単な話よ。」
ユーリ「ははっ!頼もしいな?うちの後衛組は。」
フレン「ちなみに敵はどんなのかな?」
『大きなカエルの魔物が一体と、沼地から生える大きな手が一体……と聞いていますね?』
フレン「沼地から生える……」
カロル「大きな手……?」
全員が頭をフル回転させるが、大きな手というのが全く想像つかない。
レイヴン「おっさん、ぜんっぜん想像つかないんだけど…」
ジュディス「もっと想像力を働かせなくちゃいけないわね。」
ユーリ「大きなカエルっていうのもあれだが…大きな手って言うのもまたやりづらそうな敵だな。」
パティ「ともかく、泥に足を取られたら一巻の終わりなのじゃ…。」
カロル「メルクは地面を見て歩ける場所を見分けてたよね?どうやって見分けてたの?」
『地面の色が少しだけ違っていて、歩ける場所は沼地より色が明るめなの。』
ユーリ「全然分からなかったぞ…」
フレン「同じくだ。前衛でこれだと、後衛組に期待するしかないようだね。」
レイヴン「任せなさいよ!今回はおっさん頑張っちゃうから!」
リタ「あんた、さっきバテてたじゃないのよ…」
ジト目でリタがおっさんを射抜けば、おっさんは口笛を吹いて視線を逸らせた。
そこに一つ妙案だと、ジュディスが声を上げる。
ジュディス「さっき、メルクの岩の上を歩いたじゃない?あれを戦闘で出来るようにしたらどうかしら?」
カロル「えぇ…?部分的にしか出てこないのに、そこに乗れる?」
ジュディス「簡単じゃないかしら?」
カロル「ジュディスはね!?ボクは無理だよ!」
ユーリ「他に方法がないならそれにするしかないな。」
フレン「敵も見て、足場も確保して……。いつもと違う戦闘でそれはそれは鍛えられそうだな。」
ユーリ「なんだろうが、やってやるさ。メルク、頼めるか?」
『うん。それについては任せて?』
リタ「後はあたしとあんたの息が合わないとダメよね。なんか合図とかいる?」
『何かあれば楽だと思うの。でも、…そうね?私がリタに合わせるわよ?』
リタ「それの方が楽かもね。そうしましょ。」
ヌシへの戦い方も大分会議出来たが、パティが疑問を口にした。
パティ「でも、リタ姐とメルク姐が倒れるか沼にハマってしまったら作戦が一気にダメになるのじゃ。他の方法も考えといた方がいいと思うぞい?」
ユーリ「確かにな。同時に倒す、か…」
フレン「足場が確保出来てるなら僕とユーリで行けるかもしれないね。」
ユーリ「それしかねえな。」
レイヴン「おっさん達が支援してるから青年達で倒せるならそれはそれでOKじゃない?」
パティ「ちゃんと息を合わせるのじゃ!」
ユーリ「ま、こいつとは長い付き合いだからな。いけるだろ。」
フレン「ふっ。奇想天外な行動はナシにしてくれよ?」
ユーリ「お前こそな。」
拳を合わせる2人に、これでもう大丈夫だろうと会議が終わろうとすると、今度はカロルが疑問を口にする。
カロル「え、4人ともダメだったら…?」
リタ「疑り深いわねー」
カロル「もしもだよ。一応決めとかない?」
レイヴン「そんときゃあ、俺様とジュディスちゃんで…」
ジュディス「あら、貴方合わせられるの?」
レイヴン「ジュディスちゃん…、今……グサッときた……。」
エステル「あと残ってるのは……」
パティ「じゃあじゃあ!ウチとジュディ姐で行くのじゃ!どっちも前衛だから可能なのじゃ!」
ジュディス「そうね。そっちにしましょう。」
レイヴン「グサッ…!」
カロル「レイヴン…、信用ないね……」
憐れみの目でレイヴンを見たカロル。
レイヴンもジュディスの攻撃にしばらく動かなくなってしまったので、今日はここで泊まることを決めたユーリ達。
各自、広い休憩所で過ごす事になったのだが、ただ一人メルクだけはレインコートを羽織り、ランプを持って出ようとしていたので何人かがそれを見て目を丸くした。
そして扉を開けようとしたメルクをユーリが慌てて止める。
ユーリ「おいおい、どこに行くんだよ」
『先に下見に行こうかと思って?』
ユーリ「一人で行こうとするなよ。何かあっても助けを呼べないだろーが。」
『少し先を見に行くだけなんだけれど…』
ユーリ「それでもだろ。……そうだな…(もしメルクに何かあった時助ける要員1人と、もう1人呼びに行く要員が必要か。なら……)カロル!行くぞ!」
カロル「え、ボク?!」
ユーリ「何かあったとき用だ。それにカロル先生なら体力有り余ってるだろ?」
カロル「ははは……、ユーリそれ本気?」
ユーリ「俺はいつだって本気だぜ?」
それを聞いて諦めたカロルは準備を始め、ユーリも準備しようとすると、その服を少しだけ掴むメルク。
それに気づいたユーリが振り返れば、申し訳なさそうにするメルクの顔がレインコートの合間から見え、「気にするな」と優しく頭を撫でた。
『ありがとう。』
ユーリ「例を言われるほどじゃねえよ。よし、行くか。」
カロルを連れて外に出た3人は来た時と同じく列を成して歩いていた。
少し先まで下見とは言ったものの、思ったよりも広大な湿地に3人は困惑していた。
ここまで広大だと迷いそうだ。
カロル「方角を見失ったらヤバそうだね…」
『辺りには目印になる様な物がないわね?』
ユーリ「こりゃ、思ったよりもこの界層の踏破は難航しそうだな。次の休憩所まで辿り着けるのやら。」
カロル「怖いこと言わないでよ…ユーリ。」
ユーリ「ん?なんだ、カロル先生ともあろう方がビビってんのか?」
カロル「そ、そそそういう訳じゃないけどぉ?でも、迷って永遠にここを抜けられなかったら…」
ユーリ「飢え死にだな。」
カロル「うわぁああ!ユーリってばそういう事平気で言うんだから!!」
『ユーリはカロルを揶揄うのが好きね?』
ユーリ「はっはっは…!面白いだろ?」
カロル「ちょ、やめてよ…」
『そろそろ戻りましょうか。カロル、帰り道覚えてるかしら?』
カロル「うん。足場は不安だけど…あれならメルクが引き上げてくれるもんね!」
『ふふ、任せて?』
カロルがそれを聞いて意気込んで帰ろうとする。
それに倣ってユーリ達も動き出したのだが、メルクが何かに気づいたように踏み留まった。
『(何かの気配を感じます……)』
ユーリ「メルク?」
立ち止まったメルクに気付き、ユーリが振り返ると首を横に振りユーリの元へと駆け寄る。
「なんでもない」と2人でカロルの後を追うことにした。
『(気の所為かもしれませんね…)』
カロル「うわぁあああ!!メルク!!」
『! •*¨*•.¸¸♬•*¨*•.¸¸♪』
泥沼にハマり悲鳴をあげ、メルクを呼ぶカロルを助ける為にメルクが歌い出す。
それと同時に地面から蔓が伸びてカロルを引き上げると、沼でない場所へと下ろした。
安堵の息を吐くカロルとは反対にユーリは辺りを見渡していた。
何かの気配を探る様に。
ユーリ「(……何か感じるな。早いとこ、ずらかるか。)カロル先生、もう大丈夫か?敢えて沼に突っ込むとは恐れ入るぜ」
カロル「はは…。ちょっと間違えることもあるよね…はは……」
そしてカロルが慎重にまた歩き出す。
今度はさっきよりも真剣な顔で地面を見つめ、歩いていた。
放ってはおけない優しいメルクが、自分が先行しようか、と言おうとしたが先にユーリに止められてしまった。
ユーリ「このままカロルにやらせてみようぜ?これで地面の見分けがつけられるんなら、メルクと交代後退で出来るだろ?少しはお前の負担を軽くしてやりてぇしな。…行き、大変だったんだろ?」
『!!』
ユーリの優しさに気付き、いつもの笑顔から更に笑みを深くするとメルクはユーリへお礼を言った。
『いつもありがとう、ユーリ。今回の事も、休憩所を出る時も貴方の優しさに救われてる…。本当にありがとう?』
ユーリ「ん。」
照れ隠しなのか、頬をかく彼に笑いを零す。
カロルは必死に地面を見ているのでこちらに気付いていないのが救いか。
ユーリ「……さっき、立ち止まってただろ?もしかして何か感じたか?」
『……という事は、ユーリも?』
ユーリ「やっぱりそうか…。早いとこ、休憩所に戻りてえが、向こうさんからは何の音沙汰も無いからな。暫くはこうしていてもいいと思いたいね、俺は。」
何処かを見つめるユーリ。
しかしメルクが見る限りは何も見えないので首を傾げた。
そんな中、カロルの健闘もあり少しずつだが休憩所への道へと進んで行った。
《…………》
ユーリやメルクが感じていた物がそれをずっと静かに見ていた。