第4界層 〜進退両難なる黒雨の湿原〜
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___第4界層〜進退両難なる黒雨の湿原〜入り口付近
〈
そこは激しい雨に降られており、雲もどす黒い色をしていて辺りはとても暗い。
しかしメルクが持っているランプが思いの外明るく辺りを照らしていた。
その火の暖かさに仲間達がほうと息をついた。
カロル「メルク。その灯りどうしたやつ?」
『案内所の人に頂いたの。第4界層について聞いていたら餞別だって言って渡されたからそのまま持ってきたのだけど…、持ってきて良かったわね?』
手に持っていたランプを持ち上げると、仲間達の顔を照らし出す。
レインコートを着た仲間達はランプが照らす先を見つめた。
そこは湿地地帯で、下手をすれば沼に嵌ってしまいそうだ。
上からはスコールが降り、下は何もかもを呑み込みそうな沼地。
進退両難とはよく言ったもので、にっちもさっちもいかなさそうだ。
エステル「メルク、気を付けてくださいね?メルクは高いヒールを履いてますから余計に。」
リタ「沈んだら誰も助けられないわよ。ほんと、気をつけなさいよ?」
カロル「もし…沈んだら…?」
『私の魔術で助けられるから安心して大丈夫よ?カロル。』
カロル「ほっ…。じゃあ安心して行けるね!」
カロルが意気揚々と行こうとすれば早速ぬかるみに嵌ってしまい、悲鳴を上げる。
カロル「うわぁぁぁああ?!!メルクー!!」
『•*¨*•.¸¸♬•*¨*•.¸¸♪』
地面から蔓が伸びてカロルを捉えると、沼地から引っこ抜き安全な場所へと下ろした。
それにカロルがとてもお礼を言ってくれたのでメルクも笑顔で返しておいた。
カロル「怖いよ!ここ!」
ユーリ「下手なところ歩けないな。」
フレン「せめて歩ける場所が分かれば良いんだが…。」
それを聞き、ランプを持っていたメルクが恐れる様子もなく歩き出す。
しかし彼女が沼に嵌ることはなく、どんどんと進んでいけるメルクにユーリ達が目を丸くし、彼女を見た。
しばらく歩いたメルクだったが、振り返るといつもの笑顔で頷いた。
『私の後に付いてきて下さい。これくらいの湿地なら見分けがつきますから。』
ユーリ「じゃあ、お言葉に甘えるとするか。」
メルクの後にユーリが続き、その後にフレンやパティが…と、列をなして歩き出す。
何を基準にして歩いているのかは分からないが、未だメルクは沼に嵌る様子を見せない。
しっかりと地面を踏みしめ、少しずつ歩いていく。
パティ「雨が厄介なのじゃ〜…」
エステル「慣れない地面に、更に雨も降っていては体力がかなり削られますね。」
パティ「それに見てて飽きるのじゃ。見渡す限り沼、沼、沼〜っ!」
ジュディス「仕方ないわよ。湿原なんだもの。」
レイヴン「逆に……なんで皆そんな元気なの…?おっさんもう疲れたんだけど…」
ユーリ「おっさんはここで休んでて良いんだぞ?」
レイヴン「それ、置いてく気満々じゃない!!冗談じゃないわよ!?こんな所に1人なんて!」
冗談を言い合いながらも少しずつ順調に進んでいく仲間達。
しかしその順調そうな進行も早くに幕を閉じそうであった。
急に歩みが止まったメルクにユーリが気付いて、慌てて立ち止まった。
その後ろの方の仲間達も立ち止まり、前の方を見遣る。
ユーリ「メルク?大丈夫か?」
『…うーん、ここからはかなり複雑そうなの…。』
メルクの前の方を見遣れば、何が違うのか分からない沼地が続いているだけで、何処が複雑かはユーリには分からなかった。
元々ちんぷんかんぷんなのだから、見てもしょうがなかったのだが…。
ユーリ「引き返すか?」
『…ううん?ユーリ達は少し待ってて欲しいの。先まで下見してくるから。ここからは後戻り出来そうにないから少し先を見て覚えておきたい。…ダメ、かしら?』
ユーリ「いや、メルクに任せるぜ?俺達はここで待ってればいいんだろ?」
『うん。確認が終わったら戻ってくるから、それまで、ね?』
ユーリ「気を付けて行ってこいよ。」
『うん。』
軽やかに飛ぶと離れた地面へと降り立つメルクを見つつ、ユーリはそれをじっと見ていた。
後ろにいるフレンが途端に心配そうな声を上げ、ユーリに非難の言葉を被せる。
フレン「大丈夫なのか?彼女1人にして。」
ユーリ「本人が大丈夫って言ってるんだ。やらせてみようぜ?」
フレン「だが…、もし沼に嵌ってしまえば誰も助けられないぞ。」
ユーリ「そんときゃそん時だ。……今は見守ってやろう。」
しばらく立ち止まっていた彼女がまた動き出し、また止まるを繰り返しているのを見ている。
それが30分近くかかったかと思えば、彼女は大分向こう側にいた。
一度こちらを見た彼女は、先を見てから一人で頷き、短杖を手に構えた。
『•*¨*•.¸¸♬•*¨*•.¸¸♪』
メルクが歌い出すと、先程彼女が降り立っていた地面の箇所に平らな岩が突出する。
ボコボコと暫く岩が道を作っていくように出て来たと思ったら彼女までの道標を作ってくれた。
『岩の上を歩いてこちらまで来てくださーい!』
遠くにいる彼女が大きな声で言うのを雨が遮ってはいたが辛うじて聞こえたユーリは頷き、岩を渡り歩く。
寧ろこの方が分かりやすくて歩きやすいとさえ感じる。
後方にいた仲間達も前の人を見習って、岩の上を歩いていく。
決して消える事がない岩の上を全員が歩き終わると、メルクが先の方を指さし、ユーリ達を見た。
『この先に休憩所があるみたいなの。そこで少し、休んでもいいかしら?』
ユーリ「そうしよう。俺たちは付いてきてるだけで、一番メルクが疲れてるだろうしな。」
ユーリのその気遣いのお陰で休める事になったメルクはホッと息を吐いた。
正直ぬかるみに嵌らないようにと気を張りすぎてかなり疲労が溜まっていたのは言うまでもなく、また雨で中で視界も悪かったので体力も限界に近かった。
遠慮なく甘えさせてもらうこととして、メルク達はその休憩所とやらに足を進めるのだった。
こんな悪天候の中でも、建てられた休憩所。
中に入れば雨風が凌げ、ゆっくりと出来そうだった。
中に入るや否やカロルやパティなどが喜びを表し休憩所内の探索に行く人もいて、メルクは遠くにあった椅子にそっと座り、少し体を休めることに専念した。
目を閉じれば少しだけ頭が冴え渡るような感覚に陥る。
それほど疲れていたのかもしれない。
フレンとユーリがそれを見て肩を竦め、心配そうに見遣る。
フレン「……そろそろ食事も取っておきたいところだな。あの雨の中ではろくに食事も出来なさそうだから。」
ユーリ「賛成だな。」
それを聞いたメルクが目を開け立ち上がろうとしたが、ユーリが椅子に座った状態のメルクの肩を上から押さえつけ、それをさせない。
ユーリがジュディスに目配せをしたので、それを察知したジュディスが笑顔で去っていった。
『ユーリ?食事なら今から作ろうと思うけど…?』
ユーリ「いや、今回はジュディが作ってくれるみたいだからメルクは休んでろ。」
フレン「そうだね、ユーリの言う通りだ。君は少し休んだ方がいい。慣れない環境で一人先陣切って進んでいたんだから、疲れただろうし。それにまだこの湿地を抜けられそうにないし、今後も君の力が必要になってくるだろう。その為にも今は休んでおいてくれ。」
椅子に座るメルクに目線を合わせ、フレンがそう話すのでメルクは二人の言葉に甘える事にした。
こくりと頷き、ゆっくりと目を閉じたメルクはそのまま背もたれにもたれ掛かり、少しだけ仮眠をとることにした。
そんな少女の微かな寝息を直ぐに聞き取った2人は静かにお互いの顔を合わせ頷く。
少しでも休んで貰えるならそれに越したことはない。
今後も厳しい探索になるだろうから。
ユーリ「…取り敢えず、横にならせてくるわ」
フレン「あぁ。それがいいだろうな。」
寝息を立てた少女を起こさないようにそっと抱き抱え、割と大きめのソファへと横たわらせた。
ユーリ「(……? ちと、軽すぎやしねえか…?)」
ユーリの疑念に誰も答えなど持っているはずもなく、何処から持ってきたのか、エステルが布団のような掛ける物を持ってきたので、少女へとそれを掛けそっと離れた。
その後ご飯が出来ても起きてこなかった少女を気遣い、少しでも休ませる方向で仲間達はそっとしておくことにした。